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1.もうウンザリだ!

これは異世界モノ好きの人への挑戦状だ!

とかではありません、僕も異世界好きです。

楽しく読んでくれたらな、と思います。

俺は山崎正彦、27歳。


5年前に日本でも有数の出版社に就職、現在はライトノベル作家の担当編集をしている。


俺はもともと漫画やライトノベルが大好きだった。


社会人になってもずっとそれらに触れていたい。


そんな思いで必死に勉強して有名大学を卒業し、超難関とされている入社試験も突破。

さらに入社して2年目にして希望部署の一つであったライトノベル作家の担当編集になったのだ。


正に順風満帆、楽しい人生。そうなるはずだった。


異世界タイトルが流行る前までは……。




「すべての異世界滅びろォォォォ!!」


俺は会社の屋上で昼飯を食べながら不満を垂れ流す。


「先輩、気持ちはわかりますけどしょうがないですよ。今異世界には物凄い需要があるんですから。」


そう言って俺をなだめるのは一緒にご飯を食べてる後輩の松田太郎。今年入社した期待の新人だ。


「そうは言ってもさぁ、松田、今日の持ち込み5つのうち4つが異世界ものだぞ⁈残りもゲームの中に入るやつ。実質異世界とおんなじだよ。もう、ウンザリなんだよ!なんなら俺が転生して異世界概念のない世界に行きたいわ‼︎」


「僕も似たようなもんです。来る人来る人みんな異世界、お前らはソーダ・アンド・オンラインとかr e、0から始まる異世界スライム飯の劣化版コピー機か‼︎ って言いたくなりますよ。」


「今なら俺、転生特典でどんな能力が欲しいか聞かれたら迷わずすべての異世界を滅ぼす力って答る自信がある。あーもう、まだ今日新人の持ち込みの予約残ってんだよなぁ。どうせ異世界に転生してハーレム作って乳繰りあってんだろ⁈もう飽き飽きなんだよそういう展開は!」


いつのまにか俺をなだめていた松田も異世界に不満を漏らす。


ここまではもやは日課となってしまった光景だった。


しかし今日は違った。



「そんなに異世界チートが不満かね?」




背後から俺たちに話しかけるものがいた。

そこには白い髪に白い髭、全身を白い着物で身を包んだおじいちゃんがいた。


おじいちゃんは再度問いかける。



「そんなに異世界チートは不満かね?」


「……」

「……」


「すいません。ここ部外者の立ち入り禁止なんで。松田警備員呼んできて。」


「ちょっと待て、わしの話を…」


「わかりました。まったく少ない昼食時間に……。勘弁して貰いたいものですね。」


「ちょっと待てって、わしの話を……」


「おじいちゃんどうやってここに入ったの。もしかしてその歳で泥棒?元気なのはいいけどさぁ、もっと別の、こうゲートボールとか盆栽とかそう言うことに時間使わないとさぁ、残りの人生刑務所とかいやでしょう?」


俺と松田は迷わず警備員を呼ぼうとする。


こんなジーさん見たことな……


「お前らもっとわしの話を聞かんかぁぁぁぁぉぁぁ、わしは神様じゃぞ!今異世界が大変なことになってるんでお前らに助けてもらうためここにきたのじゃ!」


俺と松田はそのセリフを聞いて固まる。


いや、驚いたとかそんなんではない。

むしろ逆だ。


異世界だと?


「おい、ジーさん。今言ってはならないことを言ってしまったな。俺は異世界転生チートハーレムが大っ嫌いなんだ。」


「もし僕と先輩を異世界に転生させるとか言ったら……あとはわかりますね?」


「待て待て落ち着け!お前ら何でそんなに異世界転生が嫌いなんじゃ⁈」


「嫌いに決まってんだろ!朝から晩まで毎日毎日異世界異世界、ボツを出した転生モノがマイナーチェンジを繰り返しながらまた駄作に転生して迫ってくるのはもう嫌なんだ!ノイローゼになるわ!てかもうなってるわ!二十代にして円形脱毛症になった俺の気持ちがジーさんにわかるか⁈」


「先輩!わかりますその気持ち。僕もたまに、僕、いま実はタイムリープしてるんじゃね?て思う時あります。もうすべての異世界モノが同じに見えるんです!」


「わかった!お前達の気持ちはよーくわかった。しかし落ち着け、わしはお前達に異世界転生をさせたいわけではない!今の異世界チートの風潮にウンザリしてるのはわしも同じじゃ。わしはそんな風潮を撲滅するためにきたんじゃ!」


「どういうことだ?さっき異世界を救って欲しいって言ってたじゃねーかジーさん。」


「救って欲しいのは転生した勇者に頼りっきりになってる異世界だ。このままでは自力で物事を解決する力を失ってしまう。そんな他の世界に依存した世界を救って欲しいのだ。」


「つまり、僕と先輩がすでに異世界チート主人公のいる世界に行ってそこの世界の人が自力で頑張るようにする。そういうことですか?」


「おっ、お主察しがいいのう。そのとうりじゃ! すでにお主らの編集長には話をつけておる。編集長も異世界モノにはウンザリだったのだろうな、速攻で異世界出張の許可が出たぞ。」


「な!編集長の許可だと⁈ 会社公認でふざけた異世界をぶっ壊せるのか?松田、これは…‥」


「ええ、行くしかないですね!」


「「ジーさん(おじいさん)!俺(僕)たちを異世界に連れてってくれ!」」


「その言葉を待っておった!では早速行くぞ!この異世界間ゲートに入るが良い。」


俺と松田はすぐにゲートに入る。

夢にまで見た、もうほんと何度も何度も繰り返し見た、うざったい異世界をぶっ壊す異世界出張が始まった。


ゲートから出るまでの間、俺、松田、ジーさんはずっと異世界の愚痴で盛り上がってた。


「まったく最近の若い女神は、自分の世界がピンチになるとすぐ色目使って先輩の神様の世界から勇者を転生させおる。若いうちはもっと苦労しろってんだまったく。」


「転生する側もする側だよ、あっさり自分の世界の家族とか友達とか忘れちゃって。そのくせ愛だーとか友情だーとかどの口が言ってんだ!」


「書く側も書く側ですよ、なんなの?転生モノしか書けない呪いにでもかかってんの?転生モノ書かなきゃ死ぬの?ってくらい書いてきますから!」


三者三様に異世界転生の不満をぶちまけているとあっという間に別の世界のゲートの前に来ていた。


「それではな。天からお主らの活躍見守ってるぞ。お主らが世界を救ったらまた迎えにくる。それまで頑張るのじゃぞ。では、達者でな。また会お……


「ちょっと待てよジーさん、俺たちに何かチート能力くれないの?流石に初期装備がスーツだけじゃ心もとないんだけど。」


「何を言っておる。異世界チートをぶっ壊すためにチート能力を使っては本末転倒ではないか。いままでお主達が努力し、会得した力だけでなんとかせい、ではまたな。」


そう言っておじいちゃんはゲートを閉じゲートも消えてゆく。


「ちょっと?ちょっと待てよジジィィィィィィィイ!ただのサラリーマンがチート能力者に勝てるわけねーだろがぁぁぁぁぉぁぁぁ!

なんなら俺らデスクワークだからね。ここ数年走ったこともないからね⁈戻ってこぉぉぉぉぁぉい!」


いくら叫んでも反応はない、


「先輩、もう諦めましょう……無駄です。いくら叫んでももう聞こえてないですって。」


こうして俺と後輩松田の異世界出張は始まった。

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pay to win〜課金したら異世界で最強の冒険者になりました〜
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