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第33話 救出-5

 塔の中に入ると扉を閉めて、扉を開かない様にするための剣を創り出して扉と枠の双方に跨る様に通す。ゴーレムたちが全力で扉を開ければ簡単に突破できるだろうが、少しばかりの休憩する時間を稼ぐ事はできるだろう。

 

 周囲を見渡し自分以外の存在が無いことを確認するとその場に崩れるようにして腰を下ろし、息を吐く。


 無茶をしすぎたと思う。精神的にはすでに限界を迎えており、心は衰弱しきっていた。


 なんとか多数の敵を突破して、どうにかしてミストが捕らえられている塔の中に入り込むことが出来たが、これ以上の戦闘が続くのかと思うと何もかも投げ捨てて逃げ出したくもなる。


 「それを実行できるほど薄情な人間にはなりたくない」



 自分の心に浮かんだ弱音を口に出して否定する。この程度の苦難は乗り越えられなくてどうするというのだ。


 「それにしても死にすぎだよ。まったく」


 救出作戦を開始してここまの道中を思い出しながらため息交じりに呟いた。城内に転移してからすでに2時間程度の時間が経過している。


 地の利が無い俺に地の利などない。状況が分からないのに周囲が暗くなって視界が悪くなればさらに不利になる。そうなる前にはミストを救出してこの場所から逃げ出したい。日が沈むまでもう少し時間があるとはいえ、のんびりと休んでいる余裕はない。


 足腰に力を入れて立ち上がる。手足が鉛のように重く感じるが動けないわけではない。復活の副作用のおかげで肉体的な疲労はほとんどないと言ってもいい。


 疲労の原因は精神の損耗によるところが大きい。なにせ記憶にあるだけで20回以上は死んでしまっている。一日でこれだけ死ぬことは初めての経験である。


 「頭がおかしくなっても不思議じゃないよな」


 死んでしまった時の記憶がなくなって、死んだことを認識できなければこんな状態にはならないのではないか、そんな考えが一瞬だけ頭の中によぎった。


 あれこれと考えるが、結局どう考えても死んだ回数が変わらないし、これからやるべきことが無くなるわけでもないということに気付く。結局のところこの疲労感も未来のことを考えて現在のことから逃避したがっている心から来ているものなのだ。


 気合を入れ直すため、大きく深呼吸してから自分の頬を少し強めに叩いた。石造りの塔の中にいるため、乾いた音が室内で反響する。行くかと自分に言い聞かせるように呟いた。





 塔の中は自分が思っていた以上に複雑な造りであった。


 城外を監視するための塔という役割であるため、日本の城にある天守のような構造をしていると思っていた。いくつかの階層にわかれてそれぞれに大部屋があるぐらいのシンプルな造りだと思っていたが、廊下と小部屋で構成されているようで、階段すらどこにあるのかわからない。


 だからと言って立ち止まるわけにもいかない。手始めに一番近くに会った部屋の扉を開く。


 「この選択は当たりなのか?それとも外れか?」


 扉の先には上層へと登るための階段があった。探索を開始した瞬間に目的物を見つけることが出来るのは幸先が良いと言えるかもしれないが、それは階段だけが見つかった場合である。



 入室した部屋には階段を守るようにして一体ゴーレムが立っていた。庭園にいたものとは違い彫像を思い起こさせるような細部まで整った造りをしている。身に着けている装備も外のゴーレムとは違い、立派な装飾が施されている。


 おそらく魔法が掛けられている防具だろう。わずかに魔力を感じることが出来る。


 あれと戦うのかと思い身構えるが、ゴーレムの反応は俺が想定していたものとは全く違うものだった。


 ゴーレムは兜を脱ぎ、踵を合わせると腰を折り曲げてこちらに対して礼をおこなう。まるで来客者に対して行うような動きだった。


 予想外の行動につられてこちらも頭を下げて礼を行う。罠であれば頭を下げて視線を外した瞬間に攻撃されるのだろうが、そんな心配をすることすら忘れていた。


 ゴーレムは先ほどの丁寧な例と同じように丁寧な口調で質問を発した。


 「自分はこの塔の守護を命じられている者であります。貴君はミスト様の奪還しにここまで来た侵入者でありましょうか?」


 「ミスト様?」


 目前のゴーレムがミストのことを敬称で呼ぶのか疑問に思う。丁寧な口調で話すゴーレムのため、まぁ、侵入者の俺に対しても貴君と呼ぶのだから、そう言う正確に設定されているだけなのかもしれない。


 疑問を自己解決し質問に返事をしようと思ったが、侵入者と言われてそうですと回答するのはどうなのだろうと思い、一瞬だけ返事に躊躇う。少しの間悩んだ後、事実であるため頷いて肯定する。


 「そのとおりだ。しかし、この城にいるゴーレムは皆しゃべれないものだと思っていたが」


 「戦闘用のゴーレムは命令を実行できればよい存在なので、言葉を発する機能はありません。言葉をしゃべることが出来るのは、指揮官としての役割を与えられたゴーレムだけが持つ機能です」


 「そうなのか、指揮を行うゴーレムも居たのか」


 今まで倒してきたゴーレムを思い出す。どれもこれも同じ姿の量産型と呼べる外見をしているものばかりだった。俺の姿を見かけると突撃してくるような単調な動きを取るゴーレムばかりで指揮をしているような存在はいなかったと思う。


 兵隊と指揮官以外にもゴーレムの種類はあるのだろう。庭園管理用のゴーレムは居そうな気がする。聞いてみようかと思ったがそれよりも大事なことがある。この指揮官ゴーレムが唐突に出現した理由を聞かなければならない。


 「軍都督よりの言伝をお伝えにまいりました。」


 指揮官が自分の疑問に答えてくれた。


 「貴君がゴーレムの群れを突破できる実力を有している事は十分に把握した。後は自身で確認するので、階段を上がってこられよ、とのことです」

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