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淡い色の世界は消え去った。

満開の花を咲かせ、散った。

ーーーー希望の種を抱いて。

桜の花びらが風に吹かれてゆらり、ゆらりと宙を舞う。その様をぼんやり眺めていれば時間はゆったりと流れて、いつのまにか今日が終わればいいと思う。そんな俺の思いを打ち消すかのように、ガタッと音がした。視線を音の先へ移動させると、目の前の長い髪が揺れていた。


「長谷川 透子です」透き通る声でそう言い放った目の前の彼女は、とても綺麗な顔立ちでクラスの男子を魅了した。名前だけの短い自己紹介だったが、彼女の存在に俺は目が離せなかった。特に顔が好みという理由ではなく、彼女の纏う雰囲気や周りの空気がただただ儚げで、今にも彼女を消してしまいそうに思えたからだ。これが高2の春、最初の出来事である。


新しいクラスに皆が馴染みだした頃、未だにその輪に馴染めない者がいた。長谷川透子だ。馴染まないという方が正しい気もするが、とにかく彼女はずっと1人でいる。彼女の後ろの席である俺が、誰かと話すところを見た事がない程に。授業は真面目に受けているが体育だけは毎回見学。終業の音が鳴ると席を立ち何処かへ消え、また鳴れば席に着き授業を受ける。彼女の1日はこの繰り返しで、その1日を何度も繰り返した結果が今の状況を作り出した。が、彼女にとって1人でいることは苦ではないのだろう。かく言う俺も1人でいる事の方が多い。彼女のように誰とも話さないわけではないが、特別話そうともしない。向こうが会話を開始すれば応答する。その程度のコミュニケーションしかとらないが、これを苦言する者はおらず、ただ1人が好きなんだろうと周囲から認識されている。


「平山くん」


声のした方を振り向くとクラスメイトの坂下さんが立っていた。"坂下菜穂" このクラスの男子が考えた、彼女にしたいランキングの第1位だ。可愛らしい愛嬌のある顔立ちで、とにかく明るく良く笑う。そんな彼女は俺と同じ中学に通っていたらしく、取っ付きにくい俺相手によく話しかけてくる。周囲が俺の事を受け入れているのは、彼女の影響が強い。


「平山くん明日日直だよね。大丈夫?」


そう投げかける彼女の問いの意味を考えていると、坂下さんは笑いながらこう言った。

「口下手な2人が揃うとどんな会話が始まるんだろうね。見てみたいかも」そこで俺は気付いた。日直は2人ずつ、席の順番で回ってくる。



明日は俺と長谷川さんの番だった。



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