発売日
世間が賑わっている。
何しろ今日は誰もが期待していた漫画の発売日なのだ。
そんな日に私はこの漫画の中に生を受けた。
『FACE To face 〜世界の始まり〜』
吉田ナツ。17歳。
サンクチュアリー学院付属高校の3年。
美術部所属。
世界を『悪』に染めようとするFACEとという軍団を倒すため、巨大ロボのfaceに乗って倒すというよくあるパターンの漫画だ。
何故、人はこういった1パターンの漫画に期待を燃やすのだろう…
私は漫画の中に生まれてきたことをそんなに誇りに思っていなかった。
「はい、お客さん470円ね。」
「はい。」
「毎度〜。」
俺は少ないお小遣いの中、この漫画を買うが為にお金をはたいた。
本当に待ち遠しかった。
大澤要。17歳。
柏木高校の3年。
コンピュータ部。
言いたくないが、オタクでがり勉である。
俺は吉田ナツの絵を初めて雑誌で見た時から、この日が来るのが待ち遠しくて仕方がなかった。
そして、やっとこの日が来た。
「要、もう買ったんだって?」
「おう。」
俺は漫画を買ったあと、友達の家に行った。
「羨ましいです。」
「お前も買えば良いじゃんかよ。」
「金欠で…」
「自業自得だな。」
俺は漫画を鞄から出した。
「吉田ナツは私の嫁」
「嫁って、女がそんなこと…」
申し遅れたが、友達というのは部活が一緒の女友達・青山夏美のことである。
アニメ好きってことで意気投合し、仲良くなった。
女として意識することは…まぁ、ない。