第24話 黙さぬ弾丸
前回のお話……湖水チャージ(ある意味産地直送)
(真 ゜Д゜)ジャンジャン飲むぜ
(ニ ゜Д゜)飲み過ぎ注意
―――side:ユフィー―――
暗き空を切り裂くように飛んでくる鋼色の弾丸―――マスミ様の放った魔力弾が一体の悪魔に命中しました。
視界の外。無防備な背中に魔力弾を受けた悪魔は、苦しそうによろめきました。
すかさず距離を詰めたミシェル様が悪魔の両脚を斬り付けて膝を突かせ、エイル様が魔術で追い打ちを掛けます。
「風砲!」
風の砲弾の強烈な圧力に耐えることが出来ず、悪魔は錐揉みするように吹き飛ばされていきました。
「まるで風に舞う木の葉のようでございます」
などと言っている内に次なる魔力弾が別の悪魔を捉えました。
撃たれた右肩を押さえて呻く悪魔をローリエ様が殴り倒し、ヒトミ様が生み出した巨大な〈火球〉が、倒れた悪魔を押し潰すようにトドメを刺しました。
少し前まで抑え込むだけで精一杯だった筈の悪魔の群れを、今は逆に押し返しつつあります。
マスミ様からの援護を受け、皆様息を吹き返したかのようです。
「流石はわたくしが生涯お仕えすると心に決めた御方です」
ちなみにわたくしはヒトミ様の後ろに隠れながら、皆様を応援しております。
違います。サボっているのではございません。
戦う力を持たないわたくしが戦闘に参加しても皆様の邪魔になるだけです。
適材適所です。
時折、「邪魔なんだけど」という声が聞こえてくるようなこないような……気のせいでございますね。
「私じゃなくて王子様の方に行きなさいよ。あっちには兵士も居るんだし」
「行ったらロアナ様に凄い目で睨まれました」
「それでなんで私の方に来る訳?」
「他の皆様の動きにわたくしが付いて行けるとでも?」
おんぶでもしてくれるならともかくですけど、わたくし絶対に吐きますよ?
嫌そうに眉を顰めたヒトミ様は、それ以上何も言ってこなくなりました。
「ご理解いただけたようで何より……おや? レイヴンではございませんか」
わたくしの肩の上には、いつの間にかレイヴンが乗っておりました。
おそらくは避難して来たのでしょう。
戦闘に巻き込まれては堪りませんからね。
「マスミ様の元に戻らなくてもよろしいのですか?」
訊けば、レイヴンは一本角を小さく縦に振って答えてくれました。
それにしてもレイヴンは、わたくし達の言葉を驚く程正確に理解してくれますけど、これも従魔契約の影響なのでしょうか?
それとも単純に頭が良いだけでしょうか?
もう一度訊ねてみれば、今度はよく分からないと言うように首を捻ってみせました。
まあ、どちらでも別に構いませんね。
意思の疎通が出来るのなら別にいいじゃないかとマスミ様も仰ることでしょう。
「などと言っている内に悪魔の数も随分減ったようでございますね」
「……なんであんたはこの状況でも我関せずな訳?」
「出来ることがございませんから」
無の表情を浮かべたヒトミ様は、それ以上何も言ってこなくなりました。
今度もご理解いただけたようです。
さて肝心の悪魔でございますが、最初は十五体も居たのに今では半減して七体しか残っておりません。
皆様流石でございます。
この調子なら程なく全ての悪魔を打ち倒すことが叶うやも―――。
「あらあら、これは困ったことになりましたわね」
―――しれないと期待したのですが、どうやらそう簡単にはいかないかもしれません。
謎の術式によって大量の悪魔を実体化させて以降、目立った動きを見せずに静観していた筈のエルビラ=グシオム。
その声の調子も表情も全く困っているようには見えない所為か、少々不気味に感じます。
「まさかこれ程の戦力を以ってしても打ち倒すことが叶わないとは思いませんでした。皆様の実力を少々侮っていたようです」
お強いのですねと微笑みはそのままに、やはり彼女が驚いている様子はありません。
本当に感情があるのでしょうか?
なんだか人の真似事をしている人形のようでございます。
「エルビラ! これは……これはいったいなんなのだ!? 答えろ!」
わたくしがエルビラに関して考えを巡らせていると、複数の騎士に守られていた第二王子―――まだご無事だったのですね―――が声を上げられました。
強気な発言とは裏腹にその表情は青ざめ、エルビラに対する隠し様のない恐怖が見て取れました。
「説明と仰られましても、見ての通りでございますが?」
「分からないから聞いているのだ!」
「左様でございますか。貴方様の部下である騎士や兵士の皆様の命を贄とし、我らが神の尖兵をこの場に招きました」
「な、何故だ……何故そのような真似をする!?」
「何故も何も、元々わたくしの目的は現世に我らが神を降臨させることです。その前段階として神の眷属を召喚したのですが……やはり質の悪い魂では力有る眷属を喚び出すことは叶いませんね」
雑兵如きではいけませんとエルビラは朗らかに毒を吐きました。
部下をけちょんけちょんに貶された第二王子は、「そんな……我らは同志の筈なのに、こんな……!」と全身をワナワナと震わせております。
そんな第二王子のことを兄君であられるエリオルム王子は、沈痛な面持ちで見詰めていました。
誰もが口を開かず、一時の沈黙が流れた時―――。
―――ッシャアァァァァン!
―――鋼色の閃光が沈黙とエルビラを同時に撃ち抜きました。
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次回更新は9/12(月)頃を予定しております。




