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第11話 呑み過ぎてしまった、そんな朝に ~焦る乙女~

前回のお話……(ミ ゜Д゜)一言物申す

「ぅぅ……んっ、わぅぅぅ……ぅ?」


 なんだか眩しいです。

 あと顔の辺りだけ妙に暑いです。

 なんでしょうかこれ?


「むぅぅぅ、んぐっ」


 眩しさと暑さに耐えられず、薄目を開けてみると……。


 ―――ピカーッ。


「わあッ」


 あまりの光と熱に驚き、ベッドから跳ね起きてしまいました。

 ……ベッド?


「あ、あれ?」


 今の自分の状況がよく分からず、キョロキョロと周りを見てみると、此処がミシェルと一緒に寝泊まりしている水鳥亭の宿泊部屋であることに気付きました。

 一瞬、知らない場所で眠っていたのかと焦ってしまいました。

 見知った部屋に一安心です。

 窓から外を見れば、お日様が燦々と輝いています。快晴です。

 そしてその燦々と降り注ぐ陽光は、窓を通過してベッド上の枕―――ついさっきまでわたしの頭があった場所を照らしていました。直撃です。

 眩しくて暑い訳ですね。

 その明るさと太陽の高さから、今が朝というには大分遅い時間だということにも気付きました。

 もしかしたら既にお昼近くかもしれません。


「これはいけませんね」


 寝過ぎです。これ以上ない程に寝過ごしました。

 どうしましょう。

 そしてミシェルは何処に行ったのでしょう?

 隣のベッドを見ると誰かが使っていた形跡はあるので、ミシェルも部屋で眠っていたのは間違いないと思います。

 先に起きて下に降りちゃいましたかね?


「起こしてくれればよかったのに……」


 いえ、きっとミシェルのことですから起こそうとしてくれた筈です。

 単にわたしが起きなかったから諦めたのでしょうね。反省です。

 取り敢えず身支度を済ませて、わたしも早く一階に降りましょう。

 洗面台の前に立ち、ミシェルとお揃いの手鏡で自分の髪や顔色を確認すると……。


「見事なまでにボサボサですね」


 まるで髪だけ別の生き物のようにアチコチに跳ねています。もう跳ねまくりです。

 普段はこんなに酷くならないのにどうしたんでしょう。

 わたしベッドで寝てたんじゃないんですか?

 顔色だけはすこぶるよろしいですね。

 たっぷり睡眠を取ったから当たり前ですけど。

 あれ、そういえば……。


「わたしどうやって部屋に戻ってきたんでしょう?」


 櫛を入れながら髪を整えている途中、部屋に戻って来た記憶がないことに気付きました。

 えっと、確かミシェルとマスミさんとわたしの三人で乾杯して、マスミさんの試験合格と鉄級への昇格が嬉しくって、いつもよりお酒が美味しく感じられて、自分でもちょっと呑み過ぎかなぁってペースでお酒を呑んで、でも止まらなくて、とっても楽しくて、それから……。


「それから……あれ?」


 まるで本の頁を破いたかのように、そこから先の記憶がぷっつりと途切れています。

 んーっと、駄目ですね。全然思い出せません。


「むむむっ、これは困りました」


 そうこうしている内に髪を梳かし終えました。

 もう跳ねてる箇所はありませんね。

 わたしはミシェルほど長髪ではないので、整えるだけならそんなに時間は要しません。

 

「ミシェルはこういったことを面倒臭がるんですよねぇ」


 挙げ句、邪魔だから髪を短くするなんて言い出す始末です。

 あんなに綺麗な髪をバッサリ切るだなんて信じられません。

 あの時ばかりは、ミシェルに対して本気で怒鳴ってしまいました。

 自分はどうなのかって?

 勿論こんなわたしでも淑女の端くれ。

 少しは身嗜みに気を遣っていますとも。

 あとは軽く化粧をして、着替えを済ませれば終わり……って今更になって気付きました。

 わたしが今着ている服が昨日と同じであることに。

 これはおかしいですね。

 わたしもミシェルも宿の部屋で就寝する際には―――まともな宿屋限定―――必ず寝間着(ネグリジェ)に着替えるのですが……。

 着替えることも出来ないような状態だった?

 普通に考えればお酒を呑み過ぎて酔い潰れてしまったのだと思いますけど、ではどうやって部屋に戻ったのでしょう。

 とても自力で部屋まで戻れたとは思えません。

 曖昧な記憶ではありますが、ミシェルも結構酔っ払っていた気がします。

 ということは……。


「マスミさんが部屋まで運んでくれた?」


 そうとしか考えられませんよね。

 だとすれば申し訳ないことをしてしまいました。

 ごめんなさい、マスミさん。ご迷惑をお掛けしました。


「他には何も……」


 何も……してませんよね。やらかしてませんよね、わたし。

 マスミさんや女将さん達の前で何かとんでもない粗相をしちゃったなんてことはありませんよね?

 記憶がないので自信がありません。

 嫌な予感しかしません。


「あははー、なんだかマスミさん達に会いたくなくなってきましたよー」


 どうしようどうしようと頭では悩みつつも、手は勝手に動きます。

 化粧など慣れた作業。

 どのようにすればいいかは身体に染み付いているので、頭を使うまでもありません。

 なので存分に悩むことが出来ます。

 悩んだところで何も解決しないのですが……。

 そしてあっという間に化粧も終わりました。

 そもそも薄化粧なので然して時間が掛かることもありませんけど。

 悩む時間も無くなってしまいました。

 皆さん、とっくに起きられてますよね。

 昨夜の自分がどんな醜態を晒したのかは全く覚えていません。

 勿論何もやらかしていない可能性だってあります。

 あるんですけど……。


「取り敢えず謝っておきましょう」


 そんな後ろ向きな決意を固めると共にわたしは部屋を後にしたのです。

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