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第3話 先輩からの頼み

前回のお話……ローグ必殺剣?

(ロ ゜Д゜)そりゃー

(真 ゜Д゜)きゃー

「ローグさんも魔力操作使えるなんて聞いてないんですけど。詐欺だ」


「詐欺ってお前……俺がやったのは魔力操作なんて呼べる程立派なもんじゃねぇぞ?」


 模擬戦の最後。

 ローグさんの放った閃光―――おそらくは魔力を何らかの手段で放出したもの―――の直撃を喰らった俺は、そのまま意識を失ってしまった。

 気絶していたのはほんの十分足らずだったそうだが、目を覚ました時には既に訓練場から酒場へと移動させられていた。


「ちなみに運んだのは私だ」


 えっへんと俺の隣で胸を張っているミシェル。

 その後ろではローリエとエイルが悔しげな顔でミシェルの背中を睨んでいる。


「あの時チョキさえ出さなければ……ッ」


「ぐぬぬぬ~」


 どうやら俺の運搬役は公正な勝負の結果(ジャンケン)によって決められたようだ。

 ちなみにユフィーは運搬役に立候補すらしていないらしい。

 理由は単純。あいつにそんな腕力はない。


「寝室限定であれば、わたくしにも運べそうな気がします。如何でしょう?」


「如何じゃねぇよ」


 完全にあわよくばを狙ってるじゃねぇか。

 この変態はブレんなぁ。


「およ? マスミくん起きたの?」


「お先に、始めてる」


「んっ」


 俺が目を覚ます前から先輩パーティは酒盛りを開始しており、トルムやヴィオネに至っては既に顔が若干赤らんでいた。

 気絶してる奴のすぐ傍で酒盛りって……もっと心配しろ。

 そして我が従魔たるレイヴンくんは、つまみの炒り豆を黙々と貪っていた。

 カブトムシやクワガタって豆食うんだっけ?

 まだ悔しそうにぐぬぬぬ~とやっているローリエとエイルを椅子に座らせ、改めてローグさんに向き合う。

 まるでそのタイミングを待っていたかのように目の前にエール―――運んできたのは妙に目付きの悪い女給さんだった―――が置かれた。

 頼んでないんですけど……。


「どうせローグにツケとくから」


「ツケとくと言われても……」


 謎の捨て台詞を残して颯爽と去っていく女給さん。

 そんな彼女に向かってローグさんがテメェこの野郎と怒鳴っている。

 知り合いなんかね?

 まあ、呑んで良いというのであれば遠慮なくいただくとしよう。

 起き抜けに酒を呑むのも如何なものかと思うが、今更気にしたところで仕方ないし、気にするような奴も居ない。

 早速グイッと一口いただく。

 エール特有の苦味と香りを楽しみつつ、渇き気味だった喉を潤わせる。


「ふぅ。それでローグさんの使ったあの技はいったいなんなんですか? 一瞬の出来事だった所為で、もう何が何やら」


「あー、確か〈魔力放出(エミッション)〉なんて言われてた気がするな」


 〈魔力放出(エミッション)〉ってなに?


「魔力操作の、応用」


「説明タ~イム」


 魔力・魔術関係に詳しいエイルとヴィオネの説明によると〈魔力放出(エミッション)〉とは〈魔力付与(エンチャント)〉と同じ、魔力操作の応用技術の一つらしい。

 魔力を流すことで武器自体の強度や攻撃力を上げる〈魔力付与(エンチャント)〉に対し、〈魔力放出(エミッション)〉は武器に溜めた魔力を物理的な破壊力に変換して外部に放つ技術とのこと。

 ローグさんの場合は、斬撃に魔力を乗せて放ったという訳だ。

 ディーンさんも同じ技が使えるらしい。


「つっても俺らのは全然大したことねぇんだけどな」


 曰く、ローグさん達が放つ〈魔力放出(エミッション)〉は魔力の集束が不充分なため、見た目程威力はないそうだ。

 如何に身体強化を施していたとはいえ、直撃を喰らった俺が大きな怪我も負わずに済んだ理由がそれらしい。


「達人が放てば、もっと強力で、凶悪」


「文字通りぃ、光の刃を飛ばしたりぃ、なんか凄い極太の奴をビ~って」


「ビーって……それもうガチの光線(ビーム)じゃん」


 そんなの喰らったら絶対死ぬわ。消滅するわ。

 なんか胸元から『昔は城とか吹き飛ばす奴もおったのう』なんて聞こえたけど、多分空耳だろう。

 それとエイルが凄い極太って口にした時、股間がムズムズしたのは何故だ?

 トルムも若干座り心地悪そうにしてる。


「どうにも細かい制御が苦手でよ。身体強化なんざ一度も成功したことねぇ。持ってる魔力が少ねぇから仮に使えたとしてもすぐ燃料切れになるだろうがな」


「誰に教わったんですか? 俺も使えるようになりたいです」


「うむ、私にも紹介してほしい」


「紹介してやりてぇのは山々なんだがよ。もう死んじまってるんだわ」


 ローグさんとディーンさんに〈魔力放出(エミッション)〉を伝授した人物とは、彼らが鉄級時代に何かと世話になった先輩冒険者らしいのだが、三年以上も前に亡くなってしまったのだそうだ。

 存命であれば是非とも教えを乞いたかった。残念。


「俺もディーンも人に教えられる程じゃねぇからなぁ」


「……教えられるくらい強烈なの撃たれてた場合、今頃俺は真っ二つですけどね」


 そしてディーンさんは別の理由で人に教えることが出来ないと思う。


「ん?」


「大丈夫です。ディーンさんは何も悪くありません」


 たとえ言葉が通じずともコミュニケーションは取れる。

 不思議そうに首を傾げているディーンさんのコップに、取り敢えず酒のお代わりを注いでおいた。


「そういえばお二人の昇格試験が決まったと仰ってましたよね」


 おめでとうございますと告げるローリエに対して、ローグさんは困ったような笑みを浮かべながら「まだ始まってすらいねぇけどな」と返し、コップの酒をグイッと呷った。


「そのことについてお前らに話が……頼みがあるんだ」


「頼みって、試験に関することでですか?」


 はて、俺達が試験を受ける訳でもないのに頼みとは何ぞや?

 ローグさんはああと頷いた後、テーブルの上の酒瓶を手に取り、手酌で自らのコップに注ぎ始めた。


「まだ日取りは決まっちゃいねぇが、近い内に試験は実施される。内容は南の森で起きた異常事態の原因排除ってか、討伐だけどな」


「南の森? もしかしてそれってセント達がミランダと一緒に調査したとか言ってたやつですか?」


「おう、それだそれ」


 遠征から帰還した日の夜。

 水鳥亭で一緒に食事をしていたらしいセント達からも、その話は既に聞き及んでいる。

 俺が牛角猪の幼体(ブリぼう)と出会った森の中で、全身穴だらけにされた魔物の死骸が幾つも発見されたと。


「犯人は蜘蛛だとか」


「ああ、ミランダが上げた報告とギルドにある情報を照合した結果、おそらく黒鉻蜘蛛(クロムスパイダー)だろうって話だ」


「この辺りには、出没してなかった、のに」


「速い・硬い・しぶといの三拍子揃った厄介な魔物なんだよねぇ」


 トルムが心底から嫌そうに舌を出している。

 黒鉻蜘蛛(クロムスパイダー)は人間大サイズの蜘蛛の魔物で、非常に戦闘能力が高いらしい。

 実物を見たことはないものの、ニナの攻撃をあっさり回避したり、セントの振るう長柄鎚矛(ロングポールメイス)の直撃にも耐えたという話だから、トルムが言う通り相当厄介な魔物なのだろう。


「だが既にミランダ殿が討伐したのではないのか?」


「一匹だけな。幾らなんでもそれで終わりってことはねぇだろ。ただでさえ虫型の魔物は繁殖力が高ぇからな」


「では今回の試験で、残る黒鉻蜘蛛(クロムスパイダー)を一掃してしまうということですか?」


「そういうこった。それでよぉ、ここからが本題なんだが……」


 一拍置くように手元の酒を呑んだローグさんは本題―――試験に関する頼みとやらを教えてくれた。

 それは……。


「今回の試験、お前達の力を貸してほしい。頼む」

お読みいただきありがとうございます。


年内最後の更新になります。

皆さん良いお年を( ´∀`)/~~

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