第2話 若手パーティの奮闘劇 ~相談しよう~
前回のお話……お金がない
(セ ゜Д゜)わびしい…
(ニ ゜Д゜)肉食べたい…
(イ ゜Д゜)ソーセージ美味ぇ
―――side:セント―――
「えっ、マスミさん達帰って来てないんすか?」
「うん、もう一月以上帰って来てない。お願いされたから部屋はそのままにしてあるけど」
翌日、俺達はある人を訪ねて水鳥亭という宿屋までやって来たんだけど、肝心のその人はどうやら不在らしい。
「一月も帰ってないって、どっか遠征にでも行ったんすか?」
「そこまでは分からない。ミシェルさんとローリエさんに何かあったみたいなんだけど詳しいことは」
そう教えてくれたのは俺達と同じ冒険者にして、この水鳥亭の給仕としても働いているコレットさん。
彼女は小人族と呼ばれる種族で、俺達の中で最も小柄なニナよりも更に一回り以上身体が小さい。
見た目は小さな子供にしか見えないけど、小人族は成人しても外見は幼いままだって、前に聞いたことがある。
給仕服に身を包み、宿の前で箒片手に掃き掃除をしていた彼女に声を掛けたのだ。
「フカミさんに用事?」
「用事っていうか、相談事っすかねぇ」
俺達が会いたかった相手というのはマスミ=フカミさんという、いつも変わった服装をしている男の冒険者だ。
俺なんかと違って頭が回り、色々なことを知っている。
普段から何かと世話になっていて、俺がこうして冒険者を続けていられるのも、あの人のおかげなんだ。
聞けばコレットさんはマスミさんと同じ日に冒険者になったらしい。同期ってやつだな。
「マスミとローリエ、居ないの?」
「みたいだな。んー、参ったなぁ」
マスミさんとローリエさんが居ないと分かった途端、その場にしゃがみ込んで膝を抱えるニナ。
ニナは特にあの二人に懐いているから、会えなくてショックを受けているのかもしれない。
気持ちは分かるけど、露骨にがっかりし過ぎだろ。
「相談事って何かあったの?」
「あー、はい。実は―――」
俺はここ最近依頼の失敗続きで収入がなく、財布の中身が心許なくなってきていることをコレットさんに話した。
話を聞いた彼女は不快そうに眉を寄せて……。
「もしかしてフカミさんにお金を借りるつもり? だとしたら感心しないけど」
「いやいや、流石にそんなつもりありませんって」
俺がマスミさんに金の無心なんてする筈がない。
幾ら困ってるからって、恩人に対してそんな恥知らずな真似なんか出来ない。
そうではなく、どうしたら今の俺達がパーティとして正しく機能出来るのかを相談したかったのだ。
「パーティ……機能してないの?」
「そっすね。主にこいつの所為で」
と言って後ろにいるイルナを指差す。
自分のことだと気付いているのかいないのか、指差された本人は興味なさそうに前髪を弄りながら「ねぇ、まだ終わらないのー?」なんて言ってやがる。
この女、マジでいっぺん引っ叩いてやろうかな。
「えっと……新しい人?」
「あ、そっか。コレットさんがイルナを見るのって今日が初めてでしたっけ」
俺はコレットさんにイルナのことを簡単に紹介した。
以前まで組んでいたパーティメンバーが全員引退というか逃げてしまったので、俺達のパーティに―――勝手に―――入ったこと。
一応、弓を主装備にしているものの、碌に扱えない上にビビりで戦力にならないこと。
ついでにどんな依頼を請けても必ず何かやらかしていることも話した。
「そ、それは冒険者として大丈夫なの?」
「駄目っすね。むしろなんでお前が冒険者やってんのってレベルです」
ちょっと引き気味のコレットさん。
うん、俺が彼女の立場でもきっと引いてるわ。
我が身に降り掛かってるから引くことも笑うことも出来ないだけで……。
「俺らまだ銅級ですし、このまま失敗続きだと最悪ギルドから除名されちゃうかもしれないんすよ。流石にそれだけは勘弁なんですよね」
「そっか、銅級じゃ降格のしようがないもんね」
「一番下っすからねぇ」
よくないと分かってはいるのだが、話してる内についつい愚痴っぽくなってしまった。
こんなこといきなり言われたって困るよなぁと思っていると、コレットさんは「んー」と何かを考えるように首を傾げていた。
気になることでもあったのかな?
十秒程そうした後、彼女は俺の目を見ながら―――。
「あたし、手伝おうか?」
―――と予想もしていなかったことを申し出てきた。
お読みいただきありがとうございます。
 




