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精霊と歩む者

作者: サチ

初めて書いた小説です。

最後まで読んでいただければ嬉しいです。

お願いします。


改行が変だったので直しました。(2017/2/13)

森の中に一つの屋敷があった。 

昔は森の中でも目立っていたはずの屋敷。

今は壁に蔓が絡み、木々の手入れはされておらず屋敷を覆っていた。

 

屋敷の中は柱が倒れ、天井には穴が開いている。

ここで何かが起こったのではないかと考えてしまうがそれも昔の事なのだろう。

今は壁に架かっている絵や床に埃が被っている。

 

そんな静寂が包む、誰も寄り付かないだろう屋敷に一人の少年の姿があった。

髪と瞳は黒く、優しい顔立ちをしているそんな少年の姿が。



「屋敷の中はひんやりしてて涼しいな」


屋敷に入りそんな声が漏れても仕方ないと思う。

雪が融け春が来たと思ったら、春なんかなかったんじゃないかと思うほど

直ぐに夏が来た。

外はすごく暑いくて屋敷に来るだけでたくさん汗をかく。

でも、屋敷の中はいつも快適だ。


「まあ、あいつがいるからだよな…」


なんて考えていたらいつの間にかいつもの場所に着いていた。


「こんにちは、今日も来たのね」


声の聞こえた方を向くといつもと変わらず椅子に座り

小精霊と話しているシアの姿があった。


俺と同じ黒い髪は腰に届きそうなほど長く、黒い瞳は少し冷たさを感じるが

小精霊を見つめる瞳は優しさが感じられる。

街に行けば、ほとんどの人が綺麗だというだろう容姿は

何度見ても見惚れてしまう。


「ああ、ここは涼しいし、落ち着くからな」


まぁ、理由はそれだけじゃないけどな。

ここに来ればシアに会えるからって理由もあるけど恥ずかしいから言えない。

言ってないはずなんだけど、顔にでも出ているのか

俺の心を見透かしたようにシアは俺を見て微笑んでくる。

俺は照れた顔を見られないように顔をそらす。


「今日も小精霊と話してたの」


恥ずかしくてこんなそっけない言葉しか出てこない。


「ええ、私のする事なんて小精霊かシオンと話すことしかないから」


シアは少し寂しそうに微笑む。


シアがこんな所にいるのは彼女が闇精霊だからだ。

闇は人々に嫌われてる。そして、闇を連想させる黒も嫌われてる。

だから、俺は街で忌み子として有名だ。


黒髪や黒い瞳で生まれ来た子供は捨てられる事があるらしい。

このことを知った俺は両親になんで俺のことを捨てないのか聞いたことがある。

その時はすごい怒られたけど、愛されてると知って大泣きしてしまった。

まあ、俺の恥ずかしい話は置いといて。


閑話休題


今日の俺は少し頑張ってみる。

シアに寂しそうな顔をしてほしくない。いつも笑顔でいてほしいから。

俺は一歩踏み出してみる。


「そんな寂しそうな顔するなよ。俺が毎日必ず来るから」


シアが少し驚いた顔をする。そんなのお構いなしに俺は言葉を続ける。


「雨が降ってても、雪が降ってても、それが嵐や吹雪でも必ず来るから」


顔が熱い。赤くなっているんだろう。けどこの勢いのまま言ってしまおう。


「それと、もう少し俺が大人になったら…」


言ってしまえ頑張れ俺!


「一緒に旅をしよう。この屋敷から外に出てさ、世界を見て回ろう!」


すごい恥ずかしい。一歩以上踏み出してる。絶対百歩くらい踏み出したはずだ。


「ありがとう、とても嬉しいわ」


俺は嬉しくて顔を上げようとしたけど、シアは「でも…」と続けた。


「ごめんなさい、一緒に行くことはできないわ。

 私は闇精霊だから、あなたに迷惑をかけてしまう、

 あなたの運命を歪めてしまう。だから、」


「ごめんなさい」と、シアが言う。

何となくだけど分かってたそう言われる事は。

シアは精霊で俺は人間だ、住む世界が生きる時が違う。

けどそれが何だ。そんなこと俺には関係ない。

だから俺は。


「迷惑かけてくれていいよ。シアは完璧に見えるから

 たくさん迷惑かけてくれ、俺を頼ってくれ。

 それに、たとえどんなことが起きようと後悔しないよ。

 俺が決めて進む未来だからな。だから、

 シアの本心を聞かせてくれ、種族とか運命とか関係ないシアの言葉を」



シアは直ぐには言ってこなかった。

けど、何を言おうか迷って言葉が出てこないように見える。

だからシアが整理できるまで、何か言うまで待った。

そして。


「い、行きたい。一緒に行きたい。もうここに一人でいるのは嫌なの。

 だから私をあなたの旅に連れていって」


嬉しくてシアに抱きついてしまった。


「うん、一緒に行こう!楽しいことをいっぱいしよう。

 辛いことがあっても一緒に乗り越えよう」


シアが驚いてる、何に?

それで気付いた。シアに抱きついてることに。


「ご、ごめん。嬉しくてつい」


そう言って離れた。

嬉しいから抱きつくってなんだよ。

やばい今のでやっぱり行かないとか言われたらどうしよう。

なんて思いながらシアを見ると笑っていた。


「ふふ、嬉しくて抱きつくなんてあなたもまだ子供ね」


その笑顔が綺麗で、見惚れてしまう。


「どうしたの、そんなにこっちを見て」


俺は慌てて顔をそらす。

あんなこと言ったばかりだけど、見惚れてたなんて恥ずかしく言えない。


「何でもないよ」


ちょっとそっけなくなってしまった。

けどシアは、


「そう」


と、俺を見て微笑んだ。

この笑顔が好きだから、ずっと笑っていてほしいから、

この笑顔を絶対に守ろうと改めて思った。


そして、ここから始まったんだ俺とシアの物語が。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 シオンとシアの関係が微笑ましくて良かったです。 良い話でした。
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