第六話 〜赤き執念、白き◼️◼️〜
トライトが発する殺気に後ずさりそうになる
だがココで逃げては背中を斬られ死ぬだけだろう
死なずに生きる為には、立ち向かわなきゃらない
「トライト.....1つだけ質問が有るんだ.....」
『フン........』
攻撃を仕掛けて来ない、何故かは分からないが今のうちに疑問を解消しよう
「何で、お前はオレを狙う」
『貴様が我等仲間を裏切ったから、それ以外に理由などない......」
「そうか.....」
コレで1つわかった事がある
少なくとも、トライトが黒幕じゃあないって事だ
『もう良いな......行くぞ!』
「ああ.....来い!」
ギィンッ!
「くっ!」
『まだまだぁ!』
「おっとォ!やらせはしねーぜェ!」
『ぬぅ!』
「今です!一旦回復を!」【複数回復】
「ありがとよ!」
「助かる!」
一瞬でも気を抜けない
そんな攻防がもう十分は続いただろうか
ドヴァーズも、リリィも、オレも、神経をフルに使い戦闘し続けるのはまだキツい
『.....やはり.....!』
「ッチ!来るぞ!」
「ああ!分かってるぜ!」
『弱いッ!』
風を斬る音と共にトライトの大剣が中へ浮かぶ
構えていたオレとドヴァーズが一瞬の気の緩みを見せた瞬間ーーー
『見せてやろう!コレが絶望だ!』
『【《燃えよ》ボヴェール!】』
「なにッ!」
赤黒い炎がオレ達を囲む
『【《そしてその身体》ゾージディン!』
「キャァッ!」
炎がオレ達の身体を縛りつける
鎧ごと焼き殺そうとでも言うのか
「あ、ありゃあ、ご先祖様.....古代龍族の言語だぜ!」
「何!?」
『【《我が剣の錆と成れ》アーレブリード!】』
そして、赤々と燃える剣が、オレ達の眼前にーーーーー
走馬灯、だろうか
最初に思い出すのは、家族とピクニックに行った思い出
楽しかった思い出、悲しかった思い出、そのどれもが一瞬にして過ぎ去って行った
「オレは......死ぬのか......」
「嗚呼......分かりきってた事とは言え.....やっぱ、悔しいなぁ......」
ボロボロと、身体が崩れて行く
「ああ......くそ.......くそったれ.........」
「あれ.....ああ、やっぱオレは死んだのか.....」
「......強者と戦い、そして死ぬ、それが我等龍族の望み......なんてな......まだまだ、やりてえ事あったのにな......」
「父さん.......アルドとだって、戦ってねえ.....」
「王にだってなっちゃいねえ......」
「オレが龍族の王の子供だって、あの2人にも教えちゃ居ねえのに......」
「くそ...........まだ......まだ戦えるのによ.......!!!」
《ならばその力、勇き者の剣と為す事を誓うか》
「な......」
白い、綺麗な、龍.....いや.....龍神様かな.....
《答えよ......勇者も、それを慕う子も、どちらも剣には成れぬ.......》
「......ああ、そうだな、オレが居なくちゃ、あいつらのボディーガードが居なくなっちまうしな!」
「なってやるさ!剣にだって!盾にだって!」
《良い、実に良い答えだ》
「あれ......私.....死ん......じゃったのかな......」
「......やっぱり、付いていくんじゃ、なかったかな」
「私があんな過去言わなきゃ、勇者様もこんなことに巻き込まれなかったのかな......」
《イゥーユァ、ソンニーァ、コツィーナェイ》
「え......もしかして......神様......?」
《コターゥイエ、ユーシャルニォ、ソヴァノィ、ウルトチカィ?》
「......」
言葉じゃ、分からないけど、意味はなんとなくだけど、分かったような気がした
「......はいっ!ずっと....ずっと勇者様のそばに居ます!勇者様の支えになります!」
《ウェアーロ......ユケゥガ.......》
最後に見たモノは、白く輝く剣と、その傍に立つ、美しい白龍で
《マディ、タツィーカォ、ユシャル》
その言葉の意味は分からなかった
だけれど、身体が、脳が、オレが、その言葉を、諦めきれない意地の悪さを、出していた
「まだ、まだまだ、まだまだまだまだまだ!」
「オレは死ねない!」「オレは戦う!」
「戦って!戦って!その先にある物を見る!それまでは!絶対に!」
「死ねない!」【◼️◼️覚醒】
ニィと、その白龍が微笑んだ気がした
そしてーーー白い鎧とーーー白い剣ーーー
それを身に纏いーーーーーー
『やはり........弱き者か、貴様は』
燃え行く真っ黒な人の形をした物を見ながら呟く
自分と渡り合える人間、それと出会えた筈だったが
......感傷に浸っている暇はない、この剣を回収し、撤退する、それが任務だ
『........!』
剣がーーーー無くなっている?
『嫌......まさかッ!』
後ろを振り返ると、そこにはーーーーー
ーーー白く輝く剣とーーー
ーーーそれを手に取る人間が居た
「ああ、そのまさかだ」
「トライト、嫌、死せる騎士よ」【龍神覚醒】
『フフ.....フハハハハハハ.....!!!』
『何処までも貴様は........楽しませてくれる!』
「.......」
『最早言葉は要らぬな.......』
「ああ」
『この勝負、どちらかが死ぬまで......』
「戦うのみ」
その一言と共に、2人の剣がぶつかり合う
『ぐ......!流石は龍神の加護を受けた剣よ.....!』
「.......!」
「貰った!」
『何ィ!?』
我が黒き剣が弾かれる
そしてそれを、敵は手に取りーーー
「貴様の魂、今こそ神に還す時!」
《ズィン!》【神】
《ルウド!》【龍】
『ぐっ!がぁっ!』
二刀の剣が我が身体に突き刺さる
「コレで最後だ......邪神の騎士よ!」
《ゲレィ!》【撃】
そして、龍撃の呪文が我を消滅させようと襲いかかる
『ぐ......!』
『ま....だ......まだ.....まだだ.....!』
それでも、それでも、こいつと.....ユウト、嫌
『勇者、いいや.......レンと、戦いたい!!」
その欲求だけが僕、トライトを動かしていた
二本の剣を僕の身体から引き抜き、白い剣をレンへ投げ、黒い剣を構える
「そうか........ならば!オレ達の全力!受け取れ!トライトォォォォォォ!!!!」
走り来る彼
向かい合う僕
「コレで最後だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
縦に振りかぶる彼
横になぎ切ろうとする僕
「行くぞぉぉぉぉぉおおお!!レェェェェェェン!!!」
瞬間、彼の剣を受け止めた僕の剣は崩れ
そしてーーー
「......ありがとう.....、レン、嫌ユウトかな......?」
オレ達は3人でトライトの看護をしていた
トライトの鎧を斬った瞬間、オレ達も元に戻ったんだ
「.....ありがとうなんて言うなよ......トライト......」
「...........僕は.....生き返らされて....奴らに洗脳された.....」
「奴等.....エディルズの目的は......邪神の降臨だ.......」
「何ィ.....!?」
「.........こんな無様な姿を晒した僕が言えたことじゃないけどさ.......エディルズを止めてくれ.......頼む.....他のみんなも奴等に.......」
「ああ......分かった.....!」
「あ.....そうだ.......ユウト.......」
「何だ.....?」
「僕は......君の為に城に入ろうとする魔物と戦った事.......後悔なんてしてないんだ.....君が魔王との決着を付けきれなかったのも.....裏切りだと思っちゃいない........」
「トライト......トライトォ!」
「はは..........泣いていいさ........君は勇者だけど...........1人の『冒険者』なんだから.................」
トライトから生気が薄れ、崩れて行く
この世界で生き返った者が死んだ時、そのどれもに平等に訪れる判決
その者はどんな復活の仕方をしようと、例外なく灰となるのだ....白く、輝き続ける聖灰に.......