第四話 〜ひと時の平和、真実の一欠片〜
「ふぅ.......」
あのクエストから1週間、報酬金でしばらくは住む場所が出来たのがありがたい
だが.....1番気になる謎は、未だに分かってはいない
何故高レベルの魔法でしか開けられない扉があったのか?
何故トライトがあそこに?
そして何故トライトがスケルトンとして?
そもそもこのクエストを依頼した者は一体誰なのか?
そのどれもが謎に包まれている
「.......あー.....考えても分からんな......」
「おーい!」
「ん、ドヴァーズか」
「で、依頼板はどうだった?」
「んー、お使いとかそんなもんだったな......つーか結局何がしてえんだアンタは?」
「え、あ、んー..........」
正直、トライトをああした奴を知りたいという気持ちもある
トライトを止めなきゃならないとも思う
だが.........
『我ら1つの剣に印刻んだ仲間を裏切った者よ......!!!』
まだ、アレに届きそうには無い
その事実が身体を動かさない様に絡めて行くのだ
「ま、少なくとも1ヶ月は暮らせるだけの金はあるしな、ゆっくり考えりゃいいさ、ユウト」
「ああ......」
カランカラーン
「呼び鈴か?」
「そうっぽいな、ああ、ユウトは寝てな、まだ力が戻っちゃいねえんだろ?」
「あ、ああ」
これじゃ..............森から出た意味がねえな......
「はいはーいっと」
ガチャリと扉を開ける
そこには見慣れないフードを被った人が居た
「ん.....勧誘とかは乗らねえぜ?」
「いいや....ただここに強い奴が居るって聞いてさ」
「おう、確かに強い奴は居るぜ?だけど決闘とかはよしてくれよ?今は怪我人なんだよ」
「ふぅん、そうなんだ、中入れてくれる?話聞きたいんだ」
怪しいなコイツ
「おっと、何やりてえのか知らんが中は入れねえぜ?」
「なんか秘密でも?」
「いいや?でも変な病気でも移されちゃ堪んねえからな」
「......成る程、じゃキミから話を聞かせてくれよ」
「あ?ああ、それなら良いぜ?」
何がしてえのか分からんが....ま、いざとなったらぶん殴りゃいいだろ
「さてっと、その強い奴の名前は何なんだい?」
「ああ?ユウトって名前だよ」
「ユウトねぇ..........ま、いいや」
「取り敢えずこっちの用事はこれで最後だ」
何?
「ああ?それなら玄関で話せたろ?」
「まぁそれは置いといて、この手紙、ユウトくんに渡しといてよ」
「お、おう」
「じゃっあね〜」
「ステップ決めながら帰りやがった......何なんだよったく.........手紙、ねえ」
「ユウトー?」
あっれ、ベットに居ねえ
「ユウトさーん?」
「お、あ、じょ、嬢ちゃん」
「あ、ドヴァーズさん、ドヴァーズさんもユウトさんを?」
「あ、ああ」
「宿屋から遠くに行けるまで回復しちゃいないはずなんですけど......」
「うーむ............」
ワァァァァー......
「歓声?」
「この近くは公園ぐらいしか無いんですけどね.....」
「.........嬢ちゃん!行ってみようぜ!」
「え?え、ええ!」
剣で空を斬るイメージ.....!
「ふっ!」
小気味良い音を立てて砂と缶が斬れる
「すっげー!」
「にいちゃんどうやったらそんな事出来るんだよー!」
ふぅ........空覇斬の練習してたらこんなに子供が集まるとは.......
まぁいい、集中する事が大事だ
「スゥゥゥゥゥ..........」
空を斬り
「ふっ!」
敵に近づき
スパンッ!
その勢いで斬る!
「すげー!!」
「にいちゃん教えてくれよー!」
「おーい!ユウトー!」
「あ.....」
「ったく、まだ完治しちゃいねえのに.....」
「すまん......」
「ま、強くなろうとする事はいい事だけどよ」
「で、だ」
「うん?」
「さっきの技どうやるんだ!!」
恐ろしい勢いで肩を掴まれる
龍族は上昇思考が強いらしいがこんなもんなのだろうか
「あ、ああ、さっきのは空覇斬って言ってな.......あー......でもドヴァーズには合わないかもな」
「マジかー.........」
「でもドヴァーズに合った技はあるぜ」
「マジか!教えてくれ!」
「っし.....近くの山に行こう、リリィも来るか?」
「はい!」
「見てろよ......」
地さえも切り裂く剛力の斬撃.......
「ぜぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
雄叫びを上げ
大剣を構え
走り
飛び
敵の線を見据えーーー
「きィィィィィィィィィるッッ!!」
ズッ...........ゴォォォン..........
「っふう......これが地剛斬だ」
「すげえ......岩の断面が綺麗だぜ.......」
「この技は単純に走って飛び上がって斬るってだけじゃないぞ」
「え.....マジかよ.......」
「飛び上がった瞬間に敵の線を見据えるんだ」
「線?」
「斬りやすい部分だな、そこに正確に斬撃を叩き込む、って感じだ」
「おお......」
そういや.......この技もトライトから教わったモノだったな......
「いよォーし!」
「頑張れよー......」
ドヴァーズが山奥へ走り去って行く
「はえー...........ん?手紙.......?」
ユウトへ
そう書かれた手紙の中身は......
オレが抱える謎を解消するには充分なモノだった
そこに書かれているのは1つの紋章
ドクン
赤黒い血色で書かれた目
そして下に書かれる《パレード》の文字
それは
ドクン
それは
オレの村を焼いた.......邪教団ーーー
「母さん!父さん!!」
「おい!おおい!リーン!」
「嘘だろ......嘘だ.....嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
《エディルズ》の紋様とパレードと呼称する狂気の始まりを意味していた
だが
ありえなかった
エディルズは壊滅したはずだった
魔物からも人間からも反感を買い
戦争が始まった瞬間すぐに
だがエディルズが黒幕なのだとしたら
それは余りにも残酷な運命だとしか言いようが無かった
「エディルズ..........エディルズ...........!!!」
気がつけば手紙はくしゃくしゃに握りしめられ
オレの左手からは血が流れていた
奇しくも、エディルズの目と同じ色の血が......
「♪〜赤〜いパレードが地を這いずり、まーわーるー♪」
「黒〜いパレードっは空を舞い、血ーを垂れ流し、す、す、む♪」
『.....相変わらず気味の悪い歌だ.......』
「ヤダなぁ、動く骸骨の方が気味悪いよ〜♪」
『そうしたのはお前達だろうに.......』
「ふふーん♪、僕たちは楽しめれば良いのさ」
「快楽のために這いずり回って、空を舞って、そしてピエロの様に死んでいく」
「それが堪らなく楽しくて、悔しいから」
「僕たちは今日も【ココ】に居る」
「あはは、あはははははははははははははははははは」
「さぁて.....どうやって死のうね......?」
それは、余りにも酷い真実の一欠片だった
だが、その一欠片はオレを突き動かすのに充分だった
この話で第1章は完となります
これから先も書いていくつもりですので
読んで頂ければ嬉しいです