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揚げの甘煮

まずは九尾のターンです。


妖怪の中で九尾が一番好きなんです、はい。

どこか好きかを語ると長くなるので止めておきます。



 (おっ今宵は月が出とる。開店するんやのう)


わしは読んでいた書籍を閉じ、外出の準備をする。

今日は肌寒いから羽織を羽織っていくことにした。淡い青色をしたシンプルな羽織だ。

どこで買ったのか、もう何百年も前のことだから憶えていない。


下駄をはき外に出ると、しんしん、雪が降っていた。

はぁ、と息を吐けば白く儚い息がでる。


「はっくしゅん」

あぁ、寒い。凍え死にそうだ。まぁ、妖怪が死ぬことは滅多にないのだが。

兎に角暖まりたいため、足を急いだ。

(寒いから取り敢えず熱燗やな。後は煮物でもつつこうか)

今から考えると、妙にワクワクしてきた。



 店内には明かりが灯っていた。ということは開いている。

「邪魔するでぇ」

「あら、九尾じゃない!久しぶりね」

そうやってにこり、笑う女。

ここの店主の妻、桜橋花憑さくらばしかづきだ。

明るい茶髪は肩につくぐらいと少し短い、わしの好みには程遠い。

だが明るい性格に、健気な姿がお気に入りだった。

「しかし、寒いのう。凍え死にそうや」

特等席もとい、カウンター席に座り取りあえず熱燗を頼む。ちなみに、持参した日本酒公乃涙きみのなみだだ。

料理を眺めると矢張り、暖かいものばかりだった。

(おっこりゃあ)


「はい!熱燗と揚げの甘煮ね!」

礼を言い、おちょこに注ぐ。口をつければ、芯から暖まってくる。

さて、と期待を込めて箸を持つ。

目の前には、好物の揚げの甘煮だ。

味醂や砂糖、醤油などの味付けされた甘めの出汁に揚げを煮込んだ絶品の一品。

揚げを口に含むと、揚げに染み込む出汁が一気にじゅわり、口の中に広がる。

わしはこれが大好物。揚げ料理の中で一番好きだ。

箸で揚げを持ち上げ、口へと運ぶ。

じゅわり、口の中に広がった。

あぁ、矢張り美味しい。


 既に十二枚目の揚げに到達するころ、店先の暖簾から男が潜ってきた。

「あーやっぱ、店はあったけぇ…。おう、九尾じゃねぇか!」

「翔琉!」

黒髪を揺らし赤い瞳を瞬きさせて入ってきたのはこの店の店主、桜橋翔琉さくらばしかけるだ。

それなりの美形で、ここに通う女妖怪(特に猫又や妖花)に気に入られている。

気さくでフレンドリーさを兼ね備えているが、デリカシーが無いのが玉に瑕だ。

「ごめんな花憑。遅くなった」

「いいわ。気にしないで」

今までどこに行っていたのだろう、尋ねてみた。

なんでも醤油が切れたらしい、それで隣の通りまで行ってきたそうだ。

「寒い中…よう頑張ったのう」

「そうでもねぇよ。お客の為だ」

ゆっくりしてくれ、と台所の奥へと消えていく。

新たなる料理に取り掛かるのだろう。


「それで?」

花憑が食器を整えながら聴いてきた。

「なんや?」

「なんや?じゃないわよ。貴方がここに来るときは大抵…、恋でしょ?」

九尾、恋をしている!?だとう!?


自分で考えたくせに驚かされてます。それほど愛情深いのでしょうか…。


今回は(というか今回も)、品物の説明に凝ってみました。

読者様がつい、お腹をすいてしまうようにしてみました!

空いた方は是非ご報告を…。


…書いた本人がお腹減ってきました。

カップめん食べてきます。


次は九尾のコイバナです!

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