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終焉

えーと、いつも通りの雪月華です。もうね、無駄に考えすぎて書けないから時間かけて書きたいのだけ書くことにした。そんな訳で超不定期ナウな新連載ですけど宜しくお願いいたします。

その日世界は終わりを向かえた。


何処までも続くような分厚く黒い雲により太陽光は遮られ、世界を包み込み、空には陣が描かれている。


その陣からは無数の...それこそ数えるのも馬鹿らしくなる程の化け物が地上目掛け降って来ている。


そんな光景を俺『竜谷(りゅうたに) 啓吾(けいご)』は学園の屋上から見ている事しか出来ずにいた。


「啓ちゃん、ここに居たんだね。」


「さとり...それに修。」


今はもうない、屋上の扉から二人組が入ってくる。一人は『宮里(みやざと) さとり』。俺の幼馴染み。黒い長髪を腰まで伸ばした美少女で、その整った顔立ちもあり同級生だけに留まらず上級生や下級生からも人気が高く、俺が知るだけでも十数人が告白しては振られていたはずである。


「外は危険だ。校舎内に戻ろう。生き残った皆が今もバリケードを造ってくれている。」


「そんな事したって無駄だよ。そんな事したってどうせみんな...」


「啓吾、行くぞ。」


俺の手を引いて行くのがもう一人の幼馴染み。名前は『中村(なかむら) 修二(しゅうじ)』。成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、それに加えて学園生徒会の副会長まで務めている、非の打ち所がない正にスーパーマンみたいな奴。それが『中村 修二』と言う男なのだ。


この時俺は酷く気分が沈んでいた。この事態が始まってから数時間足らずで街の方から聞こえていた人の声が聞こえなく為っていたのだから。悲鳴すら聞こえないと言う事は街にいた人達は化け物達に喰われてしまったのだろう。避難したとも考えられるがこの事態にどれ程の人達が助かったかも定かではない。それに加えて、校内に侵入した化け物に仲間が喰われていく様を見てしまったのも大きい。


ある者は自身の腕に自信を持つが故に、化け物と戦い、数多くの化け物達に生きたまま貪られ、またある者は不定形の化け物...スライムのような物に捕まり、手足の先からじわじわと溶かされていた。


俺も腕に自信がある方であったから、化け物に戦いを挑んだ。実家は剣術道場を営んでいたし、学園でも剣道部に所属しており、この前の大会では全国ベスト8だった。


だからか、化け物達を甘く見ていたのかも知れない。俺だったら楽勝だとか思っていたし、実家で習った剣術を実戦で使えるチャンスだとか思っていた。


それがどうだ。

仲間が喰われていく姿にビビり、助けを求める仲間を見棄てて我先に逃げ帰って来てしまった。


「どんなに足掻いたって、あの化け物達にみんな喰われてお仕舞いなんだ。」


「そんな事言うなよ。皆で助けて合って生きて居れば助けは必ずや来る。」


さとりもその言葉に頷いている。


「二人はあの惨状を見てないから、そんな事言えるんだ。」


あの惨状を見れば二人だって、俺と同じ気持ちになる。恐怖、無力感にさいなまれ、自ら命を足った方がいいのでは?ともう一人の自分が囁き掛けて来るのだ。


そんな俺の心情を察してか、修二はチラリと俺を振り返り腕を掴む手に力を入れ、さとりも心配そうに反対側の握って来た。


無言のまま俺達三人は生き残った皆がいる三階へと降りて行った。



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唐突だが俺達の通う学園について説明しよう。


学園の名前は私立『夢ヶ丘学園』。


広大な敷地面積を持ち、数多くの施設が建ち並び、毎年多くの学業特待生、スポーツ特待生を取ることで有名な学園でもある。更にその特待生達が毎年のように結果を出しているので、学園の知名度は全国でも上位と言うか、知らない人はいないレベルである。


かく言う俺達も特待生なのである。

俺は剣道で、修二は空手、さとりも弓道で特待生の資格を取っている。まぁ、二人は学業特待生でもいけたんじゃないかってぐらい頭も良い。勉強が苦手な俺とは大違いである。


さて、話を戻そう。

謎の化け物達に学園を襲撃され、失意にくれる俺達生き残った者達は幾つかのグループに別れて行動している。


一つ目は防衛組。

現在立て込もっている学園本校舎三階にある資材を利用してバリケードの作成や周囲の警戒を担当するグループ。生き残ったスポーツ特待生、主に武道系の生徒が中心である。俺達三人もこのグループに所属している。


二つ目は探索組。

立て込もっている本校舎三階から出て、使えそうな資材や食料を回収し、化け物の動向を確認するグループ。こちらはスポーツ特待生の陸上競技を選考していた奴や自分の動きに自信がある奴が立候補して組まれたグループでもある。


三つ目が資材組。

探索組が回収して来た資材食料情報を纏めるグループ。学業系特待生達が中心に活動している。ただ、この事態にまともに活動出来るのとは残念ながら思えないのが現状でもある。


そんな三つのグループに別れているが、全校生徒1000人を越えるこの学園で現在本校舎三階にいるのはざっと100名。実に十分の一以下しか生き残っていないのだ。その殆どが特待生と言うのは皮肉以外の何物でもない。


「おや?中村に宮里。竜谷を探して来てくれたのか。」


階段を降りて来た俺達に声をかけて来たのは、女子剣道部の主将にして学園生徒会会長、『雪凪(せつなぎ) 菖蒲(あやめ)』先輩である。


真っ黒な長い黒髪を纏めてポニーテールにしており、その長身で切れ長な瞳、均整の取れた身体付きもあり全校生徒憧れのお姉さんのような扱いであった。自分に厳しく他人にも厳しくある人ではあるが、悩み事等には親身に為って相談に乗ってくれる事も人気の理由だったのだろう。


「雪凪先輩、ご迷惑をおかけしました。」


「竜谷、仲間の死を間近で見たお前が塞ぎ込むのも解る。だが、あまり友に心配をかけさせるなよ。お前の心配をする者もいるという事を忘れないでくれ。」


どうやら雪凪先輩も、姿を見かけない俺の心配をしてくれていたようで、その言葉は何処か安心したようである。先輩の言葉に修二とさとりも頷いている。どうやら三人にとても心配をかけてしまったようだ。


三人はもう一度謝りましたとも。特に修二とさとりには頭が上がらない思いだ。こんな俺を心配してくれる良い幼馴染み達だ。


その日はバリケード作りにせいを出して終わりを向かえた。


夜の帷が下がり校舎内が薄暗くなってくる。非常電源すらいかれているのか、灯りを点ける事すら出来ない。それ以前に殆どの蛍光灯が割れてしまっているのだけどな。


「よし、取り決めた通りに見張り番は二人一組だ。階段の数は三ヶ所、六名が八時から十一時まで。時間がきたら次の者達と交代だ。」


そんな薄暗い教室の中で雪凪先輩が夜の見張り番の説明を再度行っている。防衛組が人数が他のグループよりも多く配置されているのは、少しでも一人一人の負担を減らそうと雪凪先輩が他のグループリーダーと交渉した結果らしい。さすがは生徒会長である。


俺は雪凪先輩とペアになった。後は修二とさとりもペアになった。他は中の良い者同士でペアを組んだようだ。


「それでは各自、時間まで身体を休めるように、解散。」


俺は深夜帯の見張りなので早めに横になることにした。

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