1.ケテル
「……あの……アスモさん……」
一糸纏わぬ姿で背後にいるアスモさんに、振り返ることなく声をかける。振り返ってはいけない。それに、今のアスモさんの姿を想像してはいけない。
ボクもアスモさんも裸なのだ。布1枚すらつけていない……アスモさんの責任ではなくルシフェルさんとレヴィさんの責任なのだが……この状況で、振り返るのは流石にアスモさんに悪いと思う。
「い、出雲さん……据え膳喰わぬは男の恥ですよぉ?」と言っている気がするのは気のせいだろうもしくはのぼせてきたボクが聞いた幻聴だろう。
「あの……出雲さん、私も予想外だったのですけどぉ……思わぬところから出てきた折角のチャンスなのでぇ……その、ですねぇ……子作り……しましょう?」
「こっくりさん? 10円玉もないのにどうやってこっくりさんをしようと」
「こっくりさんじゃなくて、子作りですよぉ! セッ」
「あぁぁぁぁ! それ以上はいけませんから!いろんな意味でアウトですから!」
広い湯船の中、アスモさんから逃げるように動いた。極力アスモさんを見ないようにしながら。
「出雲さん、それだと将来的に女の子と致す時に困ってしまいますよぉ? ……私は一向に構いませんけど。草食系男子の出雲さんも結構可愛いですから」
「それって誉めているんですか?それとも遠回しに貶しているんですか」
可愛いと言われ、怒るべきかお礼をいうべきか迷っていると、その隙をついて即座に背後に密着されてしまった
「でもまあ、それも個性ですよねぇ? 出雲さん、童顔で無欲で草食系まっしぐらな出雲さんですけど、私はそれでいいと思いますよ」
「……アスモさん、ちょっと密着し過ぎです……」
「だから、出雲さんは今のあなたにもっと自信を持ってもいいんですよぉ? 一人の女の子としての意見ですけど、はっきり言って今の出雲さんは謙虚過ぎです。もうちょっと欲を出してもいいんですよ? なんなら、私の胸なら……触っても……」
直後、限界だったボクは後ろのアスモさんへと倒れこんだ……
「いいい出雲さん!? 確かに欲を出していいとは言いましたけど流石にいきなりはちょっと……! ま、まだ心の準備が」
「すみません……ちょっとのぼせてしまいました……」
それだけ告げて、ボクは眠るように意識を失った……
「出雲、しっかりしなさい……出雲!」
「……ルシフェル……さん……?」
意識を取り戻すと、目の前にはルシフェルさんの顔があった……
「アスモがアンタを部屋まで連れてきたのよ、あとでちゃんとお礼をいっておきなさい」
「……アスモさんが…………ところで、ボクが裸なのはお風呂から直行してきたからですよね? ボク、変な事はされてませんよね?」
「ええ、精々アスモが顔を真っ赤にしてキスしようとしていたぐらいね」
「……ところでルシフェルさん、今回のアスモさんの行動はルシフェルさんの差し金ですか?」
「さて、どうかしら?」
飄々と告げている辺り、大体がルシフェルさんの計画通りだったのだろう。
「ところで出雲、どこまでシたの?」
「ご想像にお任せします」