4i.アディシェス
4iのクリフォト アディシェス
意味:
無感動 「良い台詞だ、感動的だな」ニーサンは関係ない
対応色及び悪魔及びクリフォート
青 アスタロッテ ディスク
約束の土曜日、ボクは遊園地の前で待ち合わせをしていた。勿論、撫子さんと一緒に遊園地に行く為だ。
デートかとレヴィさんやベルちゃんに茶化されたが、ボクとしてはデートではないと思う。
デートかデートでないかと聞かれればおそらくデートなのかもしれないが、これはあくまでデートに近いお出掛けだと思う。
撫子さんにデートだと言われてしまえばこれはデートなのだろうが、ボク個人としては恋人同士のデートではなく、親友とのお出掛けだった。
閑話休題、気付けば待ち合わせの9時を10分過ぎていたのだが、撫子さんはまだ来なかった。
「やあ、少し待たせてしまったかな……?」
大丈夫なのかと思いながら携帯をポケットから取り出した直後、後ろから当の本人の声が聞こえた。
「あ、いえ、ボクも今来た所です……よ……って、なんなんですかその格好? 一応似合ってますけど……」
撫子さんの格好はどこの名家のお嬢様かと思うような、名前とだけは本当にマッチしている……とはいえ、平成の世で更に遊園地には明らかに場違いな……着物を着ていた……
……彼女は目立っていた。男性が10人いればのべ25人くらい振り返るような美少女が、遊園地なのに着物を着ていれば、確実に目立つだろう……どこの名家のお嬢様かと、そして彼女の隣に居るのは妹だろうかという視線がボクたちに突き刺さっていた……
それはそれとして、背後から3人分くらいの刺すような視線を感じるのだが、おそらくルシフェルさん達の内誰かの強烈な視線だろう。おそらくルシフェルさんと他2人だろうが。
「…………ふむ、男の子として満点の返事だね、もし無意識ならば相当の切れ者だよ君は……」
「あ……ボクは本当に」
「別に良いんだよ出雲君。あくまでわたしの中では出雲君が無意識に女の子に優しい言動をする、ナチュラルボーン女誑しということは分かっているからね」
「うん……うん? 微妙にトゲがあるんだけど……もしかして、ボクが七罪の皆さんと平和的に同居してることに怒ってますか?」
予想外の毒の有る反応に慌てて反論するも、撫子さんは大きな溜め息をついた。
「半分自覚していながらも続けるとは……出雲君、私は君に失望しているよ」
「えぇ……あの、でも……ボク、堕落なんて」
「…………はぁ……駄目だこりゃ。君に期待した私がバカだったよ……まあ、とりあえず行こうか。君に遊園地の恐怖を味わわせてあげるよ」
「……お、お手柔らかにお願いします……」
……可愛いというより格好良いと思える少女こと撫子さんに連れ去られる女の子みたいで可愛い少年ことボクは、周りの人達から見ればどう思うのであろうか……
……ところで、まさかその格好のまま遊園地を回るなんて言いませんよね?
「遊園地といえば、遊園地といえば……遊園地といえば!」
「ちゃんと1回で分かりますよ! かん」
「ジェットコースターだよ!」
「観覧車ですよ!?」
遊園地に入って真っ先に向かったアトラクションは……ジェットコースターと言っておきながらその実観覧車だった。
ちなみに流石に着物は色々と辛かったのか、白いワンピースに着替えた。何故かボクを女子トイレに連れ込んで……まあ、必死に見ないようにはしましたヨ。腕に押し付けられる少し柔らかい感覚やどこかに連れ去られてしまいそうな香りは必死に感じないように耐えましたヨ……
……「プランAは失敗か……クク、流石悪魔に屈しない出雲君、」と呟いていましたけど、とりあえず聞かなかったことにしました。
「心配せずとも下調べは十分だよ出雲君……黒ずくめの2人組の男が横入りして乱入してこない限り、私達が乗るのはとあるジンクスのあるピンク色の……」
そこまで言って、撫子さんは硬直した……
「……次、ボク達の番ですよね? ピンク色のワゴン、次の次ですよ?」
「……まあ、こんな事もあるかな」
……見覚えのあるというか、同居している人達のうち4人が……変装しているとはいえ、ルシフェルとアスモさんのカップル擬きとレヴィさんとサタンさんのコンビだった……居た事にはボクにはすぐに気付いた。
ただし、撫子さんは……微妙に男装しているルシフェルさんや謎のコスプレをしているレヴィさん達はともかく……ただ私服なだけのアスモさんにさえ、気付いていなかった……
「フフフ、高いよ出雲君……手を伸ばせば天国に届いてしまいそうだ……」
「星に手を伸ばしてくださいよ」
グルグルと渦巻いた目ではないものの、撫子さんの言葉にはほんのわずかながら狂気が感じられた気がした……ただ、おそらくそれは気のせいだろう。
「しかし今日は遊園地日和だね出雲君……いい天気だよ、本当に……でもまあ私は曇りの方が好きだけどね」
「良い天気って言った直後に、そんな舌の根も乾かない内に言う必要ありましたかそれ!? どうして良い天気って言った後にそんな言葉付け足したんですか!?」
若干虚ろな目をしている気はするし、撫子さんの言葉には若干の狂気が感じられた……
「…………私は28歳くらいから堕絡したよ」
「撫子さぁぁぁん! あなたまだ17歳ですよねぇぇぇぇぇ!」
「……わ……たし……こそ……神だ」
「撫子さん! 撫子さん!?」
「ゴッド……イズ……デェッド……」
「撫子さぁぁぁぁぁぁん!」
大空にボクの慟哭の声が響き渡った……
「……作戦は問題ないみたいッスよ〜フッシッシ」
双眼鏡を覗き込みながらルシフェルに報告するレヴィの表情は、落とし穴が成功した子供のような、あるいは作戦が成功したトリックスターのような、もしくは標的を無事に破滅に導けたニャルラトホテプのような、無邪気かつ邪悪な笑みだった。
「……あなた、予想以上に楽しそうにしてるわね……イキイキし過ぎよ」
「あの……本当にこんな事、しても良かったんでしょうか……」
「……オレもアスモと一応同意見だが……まあ、必要悪だろ」
サタンは更に「悪魔が必要悪だとか不要悪だとか言うのも変な話だろうがな」と続けて、自嘲した。
「……フシシシ……次の予想ポイントに伏兵を今の内に配置しておくッス…………マンモン、こちらレヴィッス。応答しろッス」
『うぇ……ベルちゃん回しすぎちゃったよ……』
「誰が嘔吐しろって言ったッスかベル公! さっさとマンモンに代われッス!」
『あ、マッちゃんなら先にお化け屋敷に潜んだっぽい。……あ、ルシフェルに代わって』
「……要件は何ッスか? 代わりに伝えて」
『……うぇぇ……ちょっと待って……ベルちゃんトイレ行って吐いて……やっぱめんどいし……しんどいし……これであいつらに負けたら無駄骨どころかくたびれもうけだよもう……』
「…………あいつら? おーいベル公」
『うっ…………ふぅ……あ、ベルちゃんが『怠惰炉崇』使って少しの記憶と引き換えに体調を万全の状態に戻したのは内緒ね。それで、なんの話してたんだっけ? マッちゃん達が……どこ行ったんだっけ?』
「おいコラふざきんなッスよこんのチビ! 脱法ロリータ! ニート!」
『笑止だし有り得ないし。ベルちゃんに近付いたら地獄の業火に包まれちゃうんだから』
「ヒッキーこもりちゃん! 干物! コタツムリ! わたV!」
『え? 何? 聞こえない』
「こンの腐れニートがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「……さて出雲君……次はどこに行こうか……」
「手を握りますから元気出してくださいよ撫子さん。いつものアナタなら「まずは観覧車に行ってね出雲君、その次はジェットコースターお化け屋敷メリーゴーランドその他諸々めぐって最後にまた観覧車に行こうか」ぐらいは言えるでしょう!」
ボクの叫びに対して、大切な事を忘れていたと言わんばかりに撫子さんは空を仰いで笑い出した……そして、マインドリセットせんと言わんばかりに叫ぶように告げた。
「たかが一回の失敗がなんだ、まだまだ今日という日は始まったばっかりじゃないか! さて出雲君、次はジェットコースターに行こうか! 心配はいらないさ、身長制限はちゃんと調査済み。小さい出雲君でもバッチリ問題ないさ。さあ行こうか出雲君! 無限の彼方、虚無の向こう側へと……!」
「あっ、え……ちょ、急に引っ張らないでくださいよぉぉぉぉぉ!」
撫子さんはもう何も怖くないと言わんばかりに走り出した……ボクを引きずりながら……
「……呑気なものだな、神河出雲……」
ジェットコースターの支柱の骨組みから地上を……出雲を見下ろしながら、フードの少女が呟いた……
彼女の格好は宵闇のように黒いフードと大鎌という、死神の格好であった……
「……あの女、宮本撫子が邪魔だな……更にはレヴィ、いや……七罪の悪魔共…………まあよいか。我は我の目的を果たす……その為には如何なる手段を使っても良い……」
そう呟き、再び地上の出雲を一瞥した……
「……神河出雲……貴様は我が……この隠されし大罪の天使、マスティマが……貴様を憎悪の大罪に堕としてやる……」
そう誰に言うでもなく……むしろ自分自身に言い聞かせるように呟き……マスティマは姿をくらませた……
「い……出雲君、次はあっちの」
「だ、大丈夫ですか撫子さん? 今にも死んでしまいそうな顔ですよ?」
「…………うん、大丈夫……じゃない、ね……」
今にも倒れてしまいそうな撫子さんを背負って、近くのベンチに歩いていき、そっと下ろした……
……何故膝を折って倒れ込んでいた撫子さんとボクの身長が大して変わらなかったのだろう。ボクはそれ程までに小さいのだろうか?
「……すまないね……私の為に小さな出雲君を酷使させてしまって」
「……一言余計です」
親しき仲にも礼儀有り。撫子さんの小さいという一言には流石にムッとなった。
「……まあ、背は小さいても下の方は」
「女の子がそんな事いっちゃいけませんでしょうが、撫子さん」
座りながらも横にフラフラと揺れている撫子さんをボクの膝に載せながらツッコんだ。
「そういえば、撫子さんとどこかに遊びに行くのって今回が初めてですよね」
「……悲しい事にね出雲君、私が君を誘うつもりで予定を設定すると必ずと言って良いほどに実家の方から連絡が来て、予定の2、3日前にポシャってしまっていたからね……曰わく、ランク的には上から数えた方が早い魔人級の悪魔が現れただの、サバトによってどこそこで悪魔が大量発生して人手が足りないから急いで来て欲しいだの、私が行かなければならない事件が狙い澄ましたかのように起こってしまっていたんだよ……まあ、幸か不幸か今までドタキャンしたことは流石に無かったんだけどね……確か3回だけ君を誘った時があったよね? その時は誘っている最中にタイミングを見計らったかのように電話がかかってきた時と、帰り道に電話がかかってきた時……そして」
『撫子さん、電話ですよ~撫子さ~ん』
撫子さんの言葉を遮るように、着信音が鳴った……
ちなみにボクの声の録音はちゃんと了承してある。土下座で依頼されたら、流石に断るのも辛かった。
「……はいもしもし」
撫子さんは不機嫌さを隠そうとしない、あからさまに不機嫌な声で電話に出た……
そして電話先の相手の言葉に対して何度か相槌を打ち……そして相槌を打つ度に段々と驚愕しているような声をあげ……電話を切り、叫ぶように言った
「出雲君、この周囲に……遊園地及び付近1キロの範囲に悪魔警報が出されたようだ」
「……悪魔? それって……ルシフェルさん達とは別に……ですか?」
「ルシフェル達が居たのかはさておき、七罪クラスの新手の悪魔が来たみたいだ……その新手の名前は…………マスティマ」
新キャラのマスティマに関してですが、彼女は悪魔というよりは堕天使に近い存在です
死神のようなデスサイスを持っていますが、むしろ堕天使に近い存在です。
実はロリっ娘だった設定ですがこちらはシークレットフード(身長が実際より高くなれる)を被った脱法ロリです。