3.iシェリダー
対応色:黒
悪徳:拒絶
悪魔:ルキフグス
ルシフェル以下5人の転校からおよそ一週間経ったある日の昼下がり……ベルフェゴールとベエルゼブルはリビングにてくつろいでいた……
ベエルゼブルは仕舞ってあった煎餅を食べ尽くさんと言わんばかりの勢いでかじり、ベルフェゴールは出雲のパソコンで狩猟ゲームをやっていた……
「あ……チッ、ヘボ芋野郎め、そこからなら前動作見てからでもギリギリ切り抜けられたでしょうが……って勝手に逆ギレ? ふんたー乙、こんな場所にいられるか、俺は他の部屋に行くし」
「……ベル……少し相談したいけどいい?」
「ん? なに? 今ベルちゃんはハンティングモンスターやってるんだけど……やりながらでもいい?」
「一応大丈夫……」
そう言って、ベエルゼブルはゲームに夢中になっているベルフェゴールに対して一つの疑問を投げかけた。
「……わたし達、微妙に要らない子と化してる?」
「…………」
核心を付いたベエルゼブルの一言を聞いたベルフェゴールは一瞬硬直し……その一瞬のせいで、ゲームの方は大惨事になったが……ベエルゼブルに八つ当たりするように叫んだ。
「こここ、こんなに非労働非貢献でニート可愛いベルちゃんが要らない子なんて、そそそそんな事有り得ないよね!? まさか、そんな、七罪ロリ仲間のベエルがなんて言おうともベルちゃんは要る子でしょ! 働かないけど絶対出雲にとってベルちゃん達は要る子だから(震え声)」
ゲームで弐乙目(ライフが二度0になるの意)をしながら、ベルフェゴールが面倒くさがらずに全力でツッコんだ。
「でも実際……アスモとルシフェル、サタンやマンモンにレヴィはわずかながら結果を残せているけど、わたし達はなんの結果も残せてない……現にベルが寝ている時にやった昨日の会議の時にレヴィに突っ込まれた。仕返しにレロレロキャンディの棒を吹き矢の要領でレヴィに向かって突っ込ませたけど」
「そしたら色々あってレヴィが聖帝みたいなことになって、みんなで大爆笑して会議にならなくなったけど」そう続けるも、報告するベエルゼブルは終始若干の悔しさを滲み出していたが。
「…………ねえベエルゼブル、作戦を1つ託す代わりにベルちゃん働かなくていい? ベルちゃんネトゲで忙しいんだけど」
「……それは忙しいの?」
「…………、……ベルちゃん的には忙しいの!」
そう叫ぶようにツッコみ、ベルフェゴールはベエルゼブルにある作戦を託した……
「……ほとんど寝てるだけでもいいからベルフェゴールも参加して。そうしないと出雲に許可してもらえない」
「……ゑ?」
思わね伏兵に、ベルフェゴールは目を丸くした。
「いやいやいや、流石にベルちゃんは天才だし高校になんか行く必要ないくらい」
「……そういう問題じゃない。ベルフェゴールを1人で放っておいたら、連帯責任でわたしもルシフェルと出雲に叱られる」
「ウグッ…………まあ、叱られたくないし、凄く、スゴく、すごく、すっごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉくっ! 面倒くさいんだけど! ベエルゼブルがそこまでいうなら、ベルちゃんも協力……してあげなくもないかな〜?」
「…………まあ、そういうことにしておく」
そしてベエルゼブルは煎餅を一旦テーブルに置き、ベルフェゴールはコントローラーを一旦膝に置き、互いに向かい合った……
「…………とりあえずわたしが出雲とルシフェルに報告するから、明日からは早起きするように」
「……明日が金曜日で良かった〜。ゆとり教育バンザーイ」
あからさまにやる気の無いベルフェゴールに対して、ベエルゼブルは嘆息した。
「……出雲、話がある」
帰ってきた直後、ボクの部屋に入ってきたベエルちゃんが開口一番に言った。
「…………うん、なんとなく予想出来ちゃったけど……何かな?」
……十中八九あの件だろうなと思いながら聞いてみると、案の定であった。
「わたし達も出雲達と同じ学校に通いたい。同じクラスに通いたい」
「……うん、やっぱりそうだよね……どうやってベルちゃんを説得したのかが気になるけど、やっぱりそうだよね……いつかベエルちゃんも来るんじゃないかって予想はしてたけどさあ……」
「…………駄目なの?」
「いや、駄目なんて言わないし、そもそもボクがどうこう言える立場じゃないし、やる気があるのは良いことなんだろうけど……なんだろうね、この段々と日常が浸食されているような感じは……ボクはどうすれば良いんだろうね」
「…………分かった。とりあえずわたしは極力出雲に迷惑をかけないように努力する」
「…………うん、ありがと……その気持ちだけでも十分だよ……」
ベエルちゃんの心掛けの1割でも彼女達……主にレヴィさんに……期待するのは間違いなのだろうが、期待せずにはいられなかった。
「それで……その結果が今日のアレだったと……」
放課後、撫子さんに拉致されたボクはとある空き教室にて椅子に縛られていた……
「……うん、まあ…………七罪全員集合しちゃったね……」
「……出雲君、聞けば君は七罪に堕とされてはいないが、多少情に絆されてきているのではないかい? …………へただなぁ出雲君は……悪魔への対処方法が、本当に……へたっぴだ……君がやるべきだったのは、まず最初の同居の申し出に全力でNOと答えて、すがりつく悪魔共を全力で蹴り出すべきだったんだよ……でも、君はあまつさえ七罪全員を自分の住む屋敷に住まわせ、そして対等に扱ってしまっている……出雲君は優しすぎるからそんな事をしてしまったんだろうけど、この失策はあまりにも痛ましすぎる……」
「…………なんとなく答えが分かった上で聞きますけど……もし」
「即座に追い出して、振り向いたところに目に向かって塩をまくよ。鬼は外、福は内、悪魔死すべし慈悲はないってね」
どうやら撫子さんの中のヒエラルギーでは、悪魔は鬼以下のようだった。
大分前に聞いた話によれば撫子さんはとある有名なキリシタンの子孫らしいのだが……もしそうなら、どうして悪を嫌う部分だけが色濃く受け継がれ、他の部分はまるで駄目な事になってしまったのだろうか……
「さて、本題に戻るのだけど……出雲君、これをあくまでも君の問題と見て、君のお願いを聞いていたんだけれど……そろそろ悪魔アレルギーの私は我慢の限界なのだよ。だから……少し暴れても良いかな?」
「駄目です」
「心配しなくとも君に危害は」
「駄目です」
「……どうしても駄目かい?」
「駄目です。もし撫子さんが暴れたら、いつもの暴れ様からして絶対校舎半壊レベルはいきますよね」
「……まあ、そうなるかな」
「だから絶対に駄目です。そんなの、飢えた狼をウサギと鶏の居る小屋に放り込むようなものじゃないですか!」
ちなみにベルちゃんとベエルちゃんの2人が居ない頃の時点で既に放課後はボクを拉致して割り箸を折り、カードをカードの効果で破り、読み終わった雑誌を破り、捕縛したボクに対して愚痴ったりと全力でストレス解消をしていた……
それが更に酷くなり、かつそれを本人達にぶつけるのだから、大惨事になるのは日を見るよりも明らかだった。
「……飢えた狼、ね……ふむ、良いセンスだね。嫌いじゃないよ」
「……さいですか」
「ちなみに私は10歳の頃に両親から「あなたの悪魔を狩ろうとする気迫はまるで飢えた狼のそれだ」と評されたよ」
とてもボクには関係ない……というより、むしろ聞きたくなかった情報だった。
……まさか10歳の頃から問題児だったとは……その頃のボクは何をやっていただろうか。
……まだ普通の子供だったハズだ。普通の子供と同じように良く笑い、よく遊び、良く寝て、よくカードゲームする、客観的にみれば健全そのものな子供だったハズだ。
「ああ、そういえば……明日は土曜日だったかな?」
「……そうですね……ついさっき、授業終わりのチャイムと同時にベルちゃんがやっと休めると言わんばかりにだらけていましたし……」
「……ベルフェゴール、ね……あいつだけは絶対滅ぼさなきゃ…………ああ、ところで出雲君、明日は空いているかな? ……ちょっと君に頼みたいというか、君と一緒に行きたい場所があるんだよ」
そう言って撫子さんはポケットから2枚のチケットを……どうやら遊園地のチケットのようだ……取り出した。
「私と一緒に遊園地に来てくれないかい?」
「……遠慮しておきます」
「遊園地に行かないかい?」
「……ノー」
「遊園地に行こうよ」
「……いいえ」
「遊園地に行くよ」
「……嫌です」
「私と一緒に行きなさい」
「…………はい」
先に折れたのはボクの方だった。
「フッフッフッ……これで私の作戦通り、悪魔共より一歩リードして、2歩リードして、そして紆余曲折の末にゴールイン! 勝った! 第2部ッ! 完!」
「…………悪い事をするという自覚はあるんですけど、約束をすっぽかしてしまってもいいですよね」
およそ1年半前の撫子さんは男のボクが憧れる格好良さを持っていたんですけど、どうしてこうなってしまったんでしょうね……
これが大人になるということなんですね。とあるゲームのヒロインが言っていたように、大人になるということは悲しいことなんですね……
ちなみに撫子さんの悪魔アレルギーは生まれつきに近いものです。
ちなみに胃炎は七罪に出雲を取られそうだという焦りから来るストレスによるものです。
さて、七罪全員が転校してきた……のはさておき、タイトルに反して撫子さんがリードしています。デートの約束()をとりつけたので、次回は学園要素があまりない(今までもない?知ら管)デート回です。ただし、なにやら悪魔達の影があるっぽい?
撫子さんの胃が痛くなるな……(ストレス性胃炎的な意味で)
その数、悪魔1つと堕天使7つ! ……計8? ……あれっ?