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 ボクは……神河出雲は絶望という闇の中に埋もれていた……

 虚しい程に広い洋館の中で1人、泣きたくて叫びたくて嘆きたく……しかしそれさえもする気になれずに、何をするでもなく安楽椅子に座り、うつむいていた……

 このまま消えてしまいたい。

 そう願う気持ちこそあれど、失踪したあの人が……大叔母さんであるヨミさんが、それを望むはずがないからという中途半端な理由で、自殺すらせずに、ただただ何もせずに3日間を過ごしていた……

 このまま孤独死してしまうのも悪くないかな……

 心のどこかでそんな事を願った直後、ガシャーンというガラスの割れる音が無音だった屋敷に響いた……

 まるでそれは新たな出会いを告げる福音のようであり、悪魔の来訪を告げる不協和音でもあった……

 流石に泥棒が入ってきたら無視は出来ないなと思い、気怠げな体を動かして音のした方へと、そして複数の少女達の声が聞こえる場所へと向かった。

 相手が複数だから、多勢に無勢、大人しくお金を渡して退散してもらうのが一番だろうと、分厚くなっている財布を持ってその場所へと……書斎へと向かった……


「……から、この作戦は……」

「んな……っこし…………!」

「……ッスねルシ…………」

「いや、でも………………」

「……ちゃ…………」

「……に、窓を破って……」

 ……相手は少なくとも6人いるようだ……

 しかし、書斎に閉じこもって雑談している意図が正直分からない。

 極力家主に見つかりたくない泥棒に似つかわしくないその行動は、まるでボクに見つけてほしいという意図があるようだった……

 まあ、どっちでもいいか……もし強盗だったとしても、別にボクは……

 心の中で呟き、書斎の扉を開けた。

 そこには7人の少女達が……美少女の中の美少女とでも形容すべき美少女達が居た……

 だがしかし……

「…………あなた達、何者なのですか? 人の家に、窓を破ってまで入り込んで……」

「ホラホラ、やっぱりツッコまれたッス。だからあっしは正攻法で玄関を蹴破って拉致するべきって言ったッスよ」

 碧い髪をショートカットにした少女が半目になりながらリーダー格らしき黒髪ロングの少女に対して呟いた。

「…………一瞬納得しかけたけどレヴィ、この作戦を進言したのはそもそもあなたよね?」

「……姑息な手」

「姑息っていうよりも、卑怯な一手の方が正しいんじゃないかな?」

 碧髪の少女……レヴィというらしい……に対してリーダーらしき少女と、ボクの髪とよく似た色の銀髪をボブカットにした少女、そしてその少女に背負われている黒髪おかっぱ幼女が連続してツッコんだ。

 ……まだ3人ほど面倒なのかツッコんでいなかったりおどおどしていたり、もしくはツッコみたそうに苛々していたりで喋っていないのだが、四人に負けず劣らず濃いキャラの気がした。

「チッ……うるせぇッスよアンタら! 百歩譲ってあっしの提案が欠陥だらけだったにしても、現に出雲が出てきたから」

「……あの〜、どうしてボクの名前を」

「テメェらいい加減にしろ! オレ達の目的を忘れんな!」

 赤い髪を後ろで一つに束ねた少女……ボクより少し年上に見える少女が、少し強引に仲間を束ねようとしていた。

 だがしかし、ボクには1つ彼女らに聞きたいことがあった。

「……あの、どうしてあなた達ボクの名前を知ってるんですか?」

「…………ルシフェル、別に言っちまっても構わねえよな? 1から10まで全部」

 赤髪の少女が黒髪の少女……ルシフェルというらしい……に聞いた。

 その質問を聞いたルシフェルさんは、少し考え込み口を開いた。

「…………そうね。アスモ、あなたが説明しなさい」

「……あ、え、わ、私ですかぁ?」

 ボクが書斎に入ってきてからずっとおどおどしていたピンク色の髪の少女……アスモというらしい……が、巨大な胸を覆うように両手を交わし、どこから説明すべきかと視線を巡らせていた。

「ええっとですねぇ、単刀直入に言いますけど……わたしたちは悪魔なのです」

「悪魔……あ、はい。道理で……」

「信じてもらえないかも知れな……あ、あっさりと信じてくれました! ルシフェルさん! わたしやりまし」

「分かったから、さっさと話を進めなさい!」

「ひゃぃっ!」

 怒らなくてもいいのにと思いながら、アスモさんに話の先を促した。

「……ええっとですねぇ……わたし達は七罪の悪魔なのですけど、色々あってですね、神河出雲さん、あなたを堕落させるために来ました」

「……堕落させるために? ボクを?」

 ボク1人の為に来たという7人に対して……


「……、……暇なのですか?」

「余計なお世話よ!」

 タバコの火を消すために消防車を呼ぶような、もしくは軍艦一隻に対して数十数百の兵器を用いるような、あまりにも無駄の大きい作戦故についついツッコんでしまった。

「そうだよね、ぶっちゃけ7人も動員しちゃうのは無駄だよね。出雲も絶対7人も使うのは無駄だって思うよね。だからベルちゃんは休んでいいよね」

「……まあ、そうなる……のかな?」

「ンなわけねぇだろうがコラァ! おいコラベル公何1人だけ休みたいからって説得しにいってやがる! んな説得してる暇があったら休むために出雲堕とす為に説得しろやオイコラ! スッゾオラァ!」

 ベルちゃんという金髪の幼女が怠ける為の提案をしようとして、赤髪の人に叱られた。

「話を戻すよ?」

「あ、はい」

「ぼく達がキミを堕落させようとしているのにはいくつかワケがあるんだ。まず第一に、キミは何でかは知らないけど神様に後継者として目を付けられているんだ。」

「えぇ……もしかして、それだけの理由で」

「更に2つ目、こっちの方がよっぽど酷いんだけどね」

 もったいぶる言い方をする彼女の言葉に耳を傾けながら、彼女の背後で乱闘を繰り広げるルシフェルさんと赤髪さんの方をチラリとみた。

「放しなさいサタン! マモンを殺して出雲を殺すわ……!」

「おいバカやめろ止まれルシフェル! アイツにバカにされたまんまでいいのかよ! アイツを見返してやりたくねぇのかよ!」

「放しなさいサタン! アンタの胸が当たってイラッとするのよ! でも私の方が大きいわよ、私の! 方が! 大きいわ! そしておっぱい魔神アスモは死になさい」

 色々と理不尽な怒り方だった。言われたくない秘密を漏らそうとした目の前の少女……マンモンさんはともかく、ボクや赤髪さんことサタンさん、そしてアスモさんは完全にとばっちりだろう。

 しかも、どう見てもなだらかな胸のルシフェルさんがかなり大きいサタンさんより胸が大きいというのはあからさまに嘘だろう。

「……コホン、話を戻すよ?」

「あ、はい」


「はーなーしーなーさーいー!」

「いい加減落ち着けよルシフェル!」


「ぼく達がキミを堕落させようとしている2つ目の理由、それはね……ルーシーちゃんが神様との喧嘩を買っちゃってね……キミを落とせるかどうかのバトルを繰り広げようとしているらしいんだ」

「…………ボク完全に被害者ですよね」

 少しだけではあるものの涙が出てきた。

「……あれ、ところで、ベルちゃん……はそこで眠ってますし、ルシフェルさんとサタンさんはアスモさんを巻き込んで喧嘩していまして、レヴィさんは」

「アンタの背後に居るッスよ! さっきから! ずっと! アンタの! 背後に! 居たッスよ!」

「……それで、あと1人……ええっと」

 さっきまでマンモンさんの背中に乗っていた黒髪の子、名前は……

「ベエルゼブルの奴ッスか? あいつなら」

「ねぇ出雲君……この家のキッチンってどこにあるの?」

「え、キッチン……ですか? それなら…………」

 嫌な予感を感じながら、マンモンさんにキッチンの場所……キッチンへの道を教えた。

「…………まあ、急げば間に合うかもね」

「急げば……?」

「そうッスよ、ベエルゼブルの奴、お腹がペコちゃんだったッスからね~もしかしな」

「とにかく説明は後だからね!」

「あ、はい」

「ってちょいちょいちょい! いい加減にあっしを無視するのをやめやがれッスよ!」

 レヴィさんに背後からツッコまれながら、マンモンさんに腕を引かれながら、3人でキッチンへと向かった……



「……けぷっ、どうしたの、マンモンと出雲? あとレヴィ」

「あとって何ッスか、あとって」

 キッチンに備蓄してあったお菓子を粗方食べ尽くしていたベエルゼブルちゃんが、「何か問題でもある?」と言わんばかりの目をボクに向けてきた。

「ベエルゼブルちゃん……ぼく、あれほど最初は自重しろっていったよねぇぇぇぇぇ……!」

「……ついかっとなって食った。今は少し反省している」

「…………少しの反省で済むと思うのかなぁぁぁぁぁ! うりうりうりうりうりうりうりうりうり!」

 マンモンさんがベエルゼブルちゃんを後ろから羽交い絞めし、ほっぺたを思いっきりつねって揉んでいじくったりしていた……

「あーあー、おバカなベエルゼブルが目先の欲に捕らわれたせいでイズモ堕落作戦は失敗、ベエルゼブルは七罪から追放、ルシフェルは激怒、七罪みんな地獄戻り~イズモの評価を稼いでいたあっしは無事ぃww」

「あ、それだけはないですよ」

「ハァ!? イズモの目は節穴ッスか!?」

「あ、レヴィさんの評価は少しだけ上がってましたけど今の発言で地に落ちましたけど、それはさておきまして」

「は!?」

「……つまり?」

「それって……もしかして」

「あなた達7人を居候させられるだけの部屋があるので、問題はありませんよ。というか、少し傲慢かもしれませんけど居候してください。お願いします。なんでも……」

「ん? 今なんでもするって」

「……は、しませんけど」

「チッ」

 意外……ではないけど、レヴィさん結構腹黒いですね……


「なあルシフェル……すげぇ不安なんだが? ベエルゼブルの作戦……」

「ええ……まあ、失敗したら私の責任なのはちゃんと分かっているわ。あの子に許可を出したのは私だから」

「でもぉ……出雲さんには悪いですけど、あの人ならどんな悪い事をやっていたとしても、私達を受け入れてくれそうですよ?」

「……あの、アスモさん? それってボクを遠回しにチョロいって言っていませんか?」

 一番優しいと思っていたアスモさんの……意識的じゃなさそうだとはいえ……あんまりな言い方に、少しだけ悲しくなった。

「あら出雲、ベエルゼブルに色々と食べ尽くされて腹立たしい所を悪いのだけど、この家に住まわせてくれないかしら?」

「自分が悪いと一欠片も思っていませんよね絶対」

 少し傲慢な一般人が200だとするとルシフェルさんは79200ぐらいの傲慢度合いだった。

「まあボクはどっちでも良いですけどね」

「へ~良いんだ……すやすや……」

 ベルちゃんが机に突伏して眠りながらツッコミをいれた。本当に眠っているのかは分からないが。

「んで出雲……お前が言いたいことはつまり……」

「マンモンさん達に聞いたのであなた達の事情は分かりました。目的も、最終目標も」

「ほぅ、ならつまりオレ達を追い出すのか? それとも……」

「ボクもあなた達との勝負に参加します。賭け金はボク自身と更に……ボクの持つ物であなた達が望むもの。これで良いですよね?」

 ボクの宣言をルシフェルさんは鼻で笑い、ボクと目を合わせて言った。

「悪魔に……しかも高位の堕天使にその身一つだけで挑むなんて……なんて身の程知らずなのかしらね? でもまあ……あなたがそれを発案するというのなら、乗らない手は無いわね!」

 ルシフェルさんは本棚から無造作に引き抜いた本を流し読みし……その一ページを開き呟いた。

「悪魔との契約をしましょう、イズモ」

 ルシフェルさんの開いたページには本来あるべきハズの文章は無く……その代わりに謎の言語が書かれていた。

「……これは何ですか? 契約書みたいな物ですか……?」

「悪魔は執念深く、同時に天邪鬼アマノジャクなの。最初に契約者との契約を適当な書物に記しておいて、万が一にも契約者または悪魔が契約を反故にした際……人間の側が反故にした場合は悪魔が魂を奪えるように、悪魔の側が反故にした場合は悪魔の真名を知り、その悪魔を無条件で一生縛れるようにする為の……お互いを魂から縛り付ける程度のただの契約書よ」

「……悪魔の契約書って意外としっかりしているんですね」

「すべこべ言わずサインしなさい」

 サインしなさい、と言われても……

「どこに書けば良いんですか?」

「ちゃんと文字を読んでから質問しなさい」

「だから、この契約書、日本語でも英語でもない、まったく知らない言語で書かれているんですけど」

 原型が英語なのか、英語の原型なのか、文字の形だけは英語に近いものがあった。

「アスモ、アンタが訳してあげなさい」

「あ、はい。ええっとですねぇ……これが英語のyouで、これが……」

 ……アスモさんでさえ一々英語に訳すほどに使い慣れていない言語のようだった。

「………………アスモ?」

「分かりました! 『汝、ルシフェルと結婚する者ならば下に名を記せ』」

 ある意味では契約書だったのだが、契約書にあるまじき結婚という単語に、一瞬耳を疑った

「……アスモ、あなた明らかに一単語間違っているでしょう?」

「え…………あっ! marriageじゃなくてcontractでした! つまり、『汝、ルシフェルと契約する者ならば下に名を記せ』でした!」

 解決出来たことが余程嬉しかったのか、太陽のような笑みを浮かべてアスモさんが喜んだ。

 ……逆に、ルシフェルさんはアスモさんをギロリと睨んでいたのだが。

「とにかく、そこの下のスペースに」

「書きました」

「早っ!」

 早いと言われましても……

 まあ、なにはともあれ、ボクとルシフェルさんの契約はこれで結ばれた……のだろう。


「ところで出雲」

「はいなんですか?」

「……どうなっているのかしら、この森の洋館は……どうしてこんなに広いのかしら?」

「ああ、大企業の社長だった祖母の遺産です。祖母は都会を嫌っていたらしくて、それならばめったに人が来ない森の中に住めば良いのではないかと、この屋敷を作ったようで……」

「……ところで、どうして私達が住める部屋が余っていながら更にいくつか部屋が余っているのかしら?」

「…………分かりません。聞いた話によれば、かなり破天荒な人だったらしいので……」

「……あなたとは何もかもが真逆のようね」

初めましての方は初めまして、こんなに長い本編を書いたのは初めてな和久名真王です。

プロローグだからといって書きたいことを書き連ねた結果がなんと……


5700字


まだ最初のプロローグなのに書きすぎです本当に……ありがとうございました。

この作品は和久名の『あくまでも悪魔なハーレムは結構です』のリメイク作品なのですが、設定からしていくつか変えました。結果的に余り必要なさそうだった設定はカットしました。その結果、イズモ君……もとい出雲君は祖母の残した遺産の量が多いだけの、人よりかなり優しい16歳の少年になりました。

マンモンさんとベエルゼブルちゃんは名前が少し変わりました。

それと七罪全員に言えることですが、はっきりとしていなかった髪型や髪の色を設定しました。

まあ、設定は現時点ではさほど大きな違いはありませんね。


・キャラに関する補足

出雲君の容姿を書けなかったので補足しますと

身長150と少し

おっとり系の文学少年(眼鏡無し)

銀髪

童顔


七罪の胸のおおまかな大きさは

巨大 アスモ

大 サタン

並 レヴィ≧マンモン

小 ルシフェル

ぺたん ベエルゼブル&ベルちゃん


七罪に対応する悪魔

・ルシフェル:傲慢

・サタン:憤怒

・レヴィ(レヴィアタン):嫉妬

・マンモン:強欲

・ベエルゼブル:暴食

・ベルちゃん(ベルフェゴール):怠惰

・アスモ(アスモデウス):色欲


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