キリギリス
雪によって閉ざされた道
止まない吹雪
私の街も重たくなって
動きが鈍くなった
腹が減ってはいくさはできぬ
食糧備蓄怠ったキリギリス
吹雪にまみれてやっと着いた
ファストフードの店
店員さんがメニューを持って
並んでいるお客さんに声をかけていた
笑顔だから読めない
笑顔だから嫌な予感がする
私の番
「今、お出しできる商品はこちらのみなのですが」
笑顔の声は商品より先に困惑をこちらに運んできた
パンが届いていない
物流が止まっている
コンビニもすっからかん
たかが雪と侮った罰か
されど雪と思い知った瞬間
流れが止まる
止まれば滞る
滞れば孤立する
雪国となった集落を
思い出した
どれほど心細いか
雪かきでおいつく規模じゃない
シャベルひとつ持たない私が
何をいうか
どなたかが懸命に作ってくれた
細い道を歩く
黒く濡れた地面がありがたい
ちいさなカマクラ、ゆきだるま
こどもらの笑顔はわるくない
チェーンを履いた車が
こわごわ通りすぎてゆく
雪のかきの音が四方から
聞こえてくる
ばつの悪さに歩みが
早くなる
ゆきまみれのキリギリス
そそくさと家路についた