3. 恥ずかしい、でも、好き
階段の踊り場で天満の腕を掴んだ。
振り向くと同時に振り払われたが、壁に押しつけ動けないようにした。
それでもまだ逃げようとする天満に何も言わずキスをした。もちろん綺麗なキスなんてできるはずがなく強引に唇をこじ開け舌を挿し入れた。
天満は驚いたのか暫くはじっとしていたが、次第に抵抗を始めた。
頭の中で誰がくるかも分からないこんな場所で状況を弁えろと翳めたが翳めただけだった。
「んんッ……」と天満から漏れるくぐもった甘い声を聞いて、そんなものどこかへ吹き飛んでしまった。
どれくらいそうしていたのか分からない。
昼休みの時間だったからか幸いにも誰も通らず、こうして天満を堪能できた。
天満もしばらくすると抵抗を止め、やっと舌を絡めてきた。
唇をそっと離し、指で天満の濡れた唇を拭いもう一度軽いキスをしてから彼を抱きすくめた。
すると天満は「中井、中井」と縋りつくように胸に顔を埋め抱きついた。背中に周る腕に力が籠る。
あの日、どうして想いを伝えなかったのだろうと激しく後悔した。
今もこんなにも天満が俺を想ってくれている。こんなにもどうしようもない想いを天満にさせていたなんて。
「……ごめん……」
「……え?」
好きとか、そんな簡単な言葉じゃ片づかない。
だけどこれ以上の言葉を俺は知らない。
「好きや……」
天満は俺の言葉を聞いてピクリと体が震えた。そして体温が上昇していくのが分かるくらい、天満の体は熱くなった。
「……うん……オレも……好き……」
天満は小さな声で俺の想いに答えた。
顔を埋めたままだったので表情は分からない。
けれど、あの日と同じように耳を真っ赤に染めていた。
完結です。
ここまでお読み下さりありがとうございました。