第13話 美咲。
その晩、美咲と会うことになった。美咲は電話で「やっと報告出来る。いい報告だから安心してね」と言っていた。サイゼリヤに来た美咲は、私と目が合うなり満面の笑みを浮かべた。
「美咲、それ何入れてきたのさ」
泥水のようなドリンクを指して私が言うと、
「コーラとメロンソーダ混ぜてみた。高校生みたいでしょ?」
と随分ご機嫌な様子だ。
「希里も飲む?」
「いや、いいです」
私は美味しいメロンソーダをストローですする。美咲はコーラメロンソーダを一口飲み、「まっず!」と顔をしかめ、
「中崎先輩から聞いたと思うけど、中崎くんに挨拶したよ」
と切り出した。
「すっきりした?」
「うん。悲しい気持ちもすごく湧き上がってきたけど、あたし、ずっと目を逸らして生きてきてたから、もやもやはなくなった。あたしも中崎くんをいじめてたし、罪悪感は消えないけど、それでも、ちゃんと謝ることが出来て良かったなって思ってる。中崎先輩に告白出来たのも、これで吹っ切ることが出来るって思った」
美咲の声は明るかった。
「あとね、仕事ちゃんと辞めれたよ。全然大したことなかった。引き止められることすらなかった。あっけないね。私は無職になっちゃったけど、全然後悔とかない。むしろすっきり。これからは、派遣のバイト少しずつ頑張りながら、新しいバイト探す。今度は、胸を張って出来るバイトをね」
だから美咲はこんなにすっきりした顔をしているのか。合点がいった。彼女は、重い十字架からやっと逃れることが出来たのだ。私は嬉しくなって、美咲の手を両手で包み、
「良かったね。本当に良かった。でも、無理はしないでね。健康第一だから」
と言った。
「分かってる。大丈夫だよ。少しずつ、頑張る」
美咲は白い歯を見せた。
「でも、時々は落ち込んだり、不安定になることもあると思う。……それでも、側にいてくれる?」
彼女は少し不安そうな表情を浮かべて言うので、私は手を強く握り、
「当たり前じゃん。喧嘩して美咲が絶交する!って言っても私は側にいるよ。執念深い女だって分かったでしょ?」
と言った。美咲はくすっと笑って、
「うん。希里の執念は凄いよ。負けちゃった。ずっと親友ね」
と言い、小指を絡めてきた。
絶望に打ちひしがれていた過去は終わりを告げた。今、私たちが向かおうとしているのは、溢れんばかりの希望が咲く未来だ。過去があるから今がある。生きている限り、未来だって、絶対に、あるーー。
(了)
絶望の昨日、失う明日。はこれで完結です。書くのが遅くて本当に申し訳ありませんでした。希里も美咲も中崎先輩も、未来に向かって歩み始めましたね。長い間お付き合いして頂き、ありがとうございました。




