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第三幕 人心掌握の天才、猿

 前回の答え


 ①中国探題(大内氏)山陰山陽地方…鎌倉時代に存在


 ②九州探題(今川氏)九州地方…○


 ③羽州探題(最上家)出羽国…○


 ④奥州探題(伊達家)陸奥国…○


 ⑤越州探題(朝倉家)北陸地方…実在する記録はない。


 ⑥六波羅探題(足利家)畿内…鎌倉時代に存在


 ⑦四国探題(細川家)四国地方&淡路国…土佐国一部を除く地域は管領領


 ⑧東海探題(土岐家)東海地方…実在の記録はない


 ⑨関東探題(足利家)関東地方…鎌倉公方、鎌倉府があった。


 ⑩南都探題(足利家)大和国…実在の記録なし



 正解は②、③、④


 東北や九州と言った、幕府の支配圏域より遠国にある場所には大体おかれている。


 しかし、15世紀初め辺りより、東国では幕府の圏域から外れ、幕府を揺らがす騒動がたびたび起きていた。

 尾三国境付近(尾張国、三河国国境付近)


 ゲームが始まってからというべきか、俺が目覚めてから約1週間ほど経過した。

 ナビゲーター兼俺の家来となった蓮が現在の情勢、活躍が目立つプレイヤー、歴史的事件における史実改変等の情報を話してきた。どうやら基本は定期的に

彼らナビゲーターは担当プレイヤーに報告するらしい。


 話を要約すると、



 ・現状、75%以上のプレイヤーが尾張 織田弾正忠家(織田信長)、もしくは駿河今川治部大輔家(今川義元)のどちらかに仕えている。やはり織田家側に味方するプレイヤーが多いらしい。


 ・また、それ以外のプレイヤーの20%弱は翌年の第四次川中島合戦に備え、甲信越のどこかにいる模様、残りは商人になったり職人になったりしているようだ。しかし、やはりほとんどが武士になってるようだ。


 ・現在、最も活躍しており大会優勝候補筆頭になってるのは、織田家に仕え、すでに長柄槍足軽大将(百人程度の部隊長)になったユーザー名『藤平ふじだいら ばくりゅうさい』という名前の奴らしい。


 

 「…今のところ、ほかにはこれと言って目立つ内容はありません。殿、では本日も一緒に鍛錬しましょう。」


 蓮は、見かけによらず結構スパルタだ。


 おかげでわずか7日で、体のつくりがだいぶ変わった。

 以前は、身体こそ大きかったものの筋力がなく見たまんまの肥満、だったが今は腹の肉をつかもうとしてもかたくてなかなかつかめず、特に足回りは馬に乗るたびに負荷がかかるので、3倍近く太くなっているように見えた。

 おかげで割れてこそいないものの、胸筋は盛り上がり、腹筋もカチカチ、下半身も着物じゃなければパツンパツンではないかと思う。


 また、周りの環境も変わり始めた。


 時々、鍛錬していると、早馬で飛ばして西へ東へ行く人々や、桶狭間合戦間近なだけあり、織田軍の砦などに幟が立っている。


 何より…


 「山口殿ぉ~!!」


 ほら来た…


 「いつも言ってますでしょう、大声出さないで下さいよ!」


 蓮、お前も相当大声だが…


 「殿…また来ました。」


 蓮は、やれやれと言った表情でおれに行ってきた。


 「仕方ない、通してやれ。」


 蓮もほんとにしぶしぶといった感じに納屋の戸を開けた。


 すると、開き切るのを待たずに一人の男が転がり込んできた。


 「山口殿!今日こそ拙者と共に清洲きよす城の信長様に会っていただくぞ!!」


 顔を向けるや否やいきなりこんなことを言う男。こうやって俺に会いに来て織田家に仕官するよう勧める男は、『中村なかむら藤吉郎とうきちろう』という。


 勘のいい人ならわかるだろう。彼は後に木下と姓を変え、さらに羽柴と呼ばれた男『秀吉』だ。


 彼はゲーム開始時より、主君『織田信長』の命により隠れた名士や豪傑を探すために諸国を回っていたらしく、彼によって織田家に仕官したプレイヤーも多いようだ。


 あの『爆龍斎』もその一人らしい。


 俺との初対面は、ちょうど二日目の夜、俺が体力強化のために水練をした帰りに道端で行き倒れていたのを蓮と一緒に納屋で面倒見てやった時だ。

 あのあと、藤吉郎は一度、仕官を促してきたが俺は時期尚早と判断して、断った。だが、何をトチ狂ったのか、


 「山口殿に受けた御恩、この藤吉郎決して忘れませぬ!必ずやともに織田家で立身出世しましょうぞ!」


 と言ってきたのだ。その日はまっすぐ帰路に着いたみたいだが、早馬を使ってるらしく二日おきにこうして勧誘してくるのだ。


 「中村殿、申し出はありがたいが、俺は見かけこそお主が言ったように『槍の又左』どのよりも大きいかもしれんが、実際は織田家の一兵卒にすら劣る力しかない、ましてや槍をふるって戦で功名を立てるなど…それに前も言ったでしょう。まだ早いと。」


 藤吉郎は、此の間にも俺以外のプレイヤーたちの勧誘を行ってるらしく、また勧誘率がほぼ百発百中らしく、前回会った時よりもさらに弁舌になっていた。


 「山口殿、そうは言いますが近頃今川領内では多くの軍勢が集結しつつあるとのうわさもあり、いつここに来るかわかりませんぞ。」


 流石、この時期の織田家中髄一の情報通というべきか。


 「その数は、おおよそ15000!!まだまだ集まるのを見ると、いよいよ本格的に上洛をする腹積もりなのです!」


 桶狭間では今川軍は25000ほどの軍勢を引き連れていたらしい。駿遠三の三ヵ国で大体、当時65万石程度、大体間違ってないだろう。


 「その上、我が主である信長様はようやく尾張を統一したばかり。故に国内もようやく安定し始めたばかりです。国を守るためにも一人でも多くの兵が必要なのです。特に山口殿のようにいかにも武辺者に見える方は張ったりでも役立つはず。使えるものならば信長様は山口殿を重宝します!!」


 藤吉郎は、そこまで言って床に額を擦り合わせて平伏してきた。


 「山口殿!!御頼み申す!拙者と、清洲に来て下され!!」


 なるほどな…天下一の人たらし。人心掌握術のスペシャリストだな。


 「蓮。」


 俺は、土間で竈に火をくべて食事の用意をしていた蓮を呼ぶ。


 「はっ。」


 蓮は、火起こしを止め、こっちにくる。


 「藤吉郎殿の御見送りを…」


 「山口殿!!」


 藤吉郎は悲痛な叫びで俺を見る。その顔は、まさに藁にもすがるような…そんな顔だった。


 「なぜです!?あなたは自分を過小評価しすぎております!!拙者は人を見る目だけは確かと自負しております!!あなたは決して織田の一兵卒以下などではない!少なくとも拙者よりかは強い方です。何故ですか!?何故、山口殿は織田にも、今川にもつかず、傍観するだけなのです!!」


 藤吉郎は、もはや話のつじつますら合わなくなり始めた。


 「蓮!早く外へ放り出せ!」


 俺は藤吉郎の喚き声で耳が痛くなったので、外に出すように蓮に言い、放り出してもらう。

 俺も外に出て、藤吉郎に向かい合う。


 「うぅ…うううううううぅううぅぅうぅぅぅぅぅぅぅうう!!!!!!」


 藤吉郎は、俺にまさしくサル顔で怒り悲しみ、悔しい思いでにらんでいた。


 「うぅぅ…、失礼いたした。山口殿。」


 藤吉郎は、しばらくするとようやく泣き止み、俺に謝罪してきた。


 「拙者はあきらめませぬ。また後日、来ますぞ。」


 藤吉郎はそう言って俺に一礼した。


 「中村殿。」


 俺は藤吉郎が頭を挙げてきたのを見計らい、彼の胸ぐらをつかんだ。


 「山口殿!?何を…」


 「……」


 俺は藤吉郎に耳元であることを告げた。


 「二度と来るな!!迷惑だ、次来たらおれの試し斬りに付き合ってもらうぞ!!」


 そう言い、彼を俵投げの如く叩き落として、納屋に戻った。


       

 ことの顛末をたまたま見てしまった、男がいた。


 彼はその光景を見て、にやけながら東へと去っていくのだった。


 


 納屋


 藁を敷いて暖をとりながら、信濃守は蓮に一部始終を話した。


 「なるほど、では…」


 蓮は頷き、続けて言う。


 「拙者もそれに賛成します。今プレイヤー達でごった返す両家、いずれかに向かってもどのみち戦術将校、部隊長が限界でしょう。ですが、拙者にもわかりかねることがあります。」


 蓮はそういって、


 「殿の言う時期とはいつでしょうか?」


 「…それは、時期にわかるだろう。」


 適当にはぐらかした。


 「なるほど、では後は…」


 「……。」


 「…いえ、かしこまりました。では、桶狭間まであとひと月ほど、また鍛練ですね。」


 「…まぁ、そうだな。」


 そう言って夜が更けていった。



 桶狭間の合戦 今川軍尾張侵攻まで残り1ヶ月半


 いまのところ山口信濃守動く気配なし…


 だが、そういった時期というのは、期もせずやって来る事が殆どであるというのを、この時信濃守は失念していたのであった。

 本作に登場してくる人物等の名前などは、主に歴史系ゲーム、あるいは漫画、雑誌などを総合的に判断し、実在してたか否か、名乗っていたか否かに関わらず、表記しています。


 ちょっとしたクイズ


 今回は5択です。あてはまる数字を二つ考えてください。

 わかった方は、感想やコメント等に答えていただけたら嬉しいです。


 織田家の城に関するクイズです。


 難易度 ★☆☆☆☆☆


 次の五つの内、織田信長の父、織田信秀が奪取できなかった城を選んでください。


 尾張勝幡城


 尾張清洲城


 尾張那古野城


 三河安祥城


 尾張犬山城


 答は次回!!



 

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