第二幕 目覚めればそこは…
前幕の答え
エスピンガルダ
これはポルトガル語での言葉
スペイン語では『アルケブス銃』ともいう。
火器と呼ばれる武器の初期のものと言われる。
頬につけて照準を固定させることなどから、耳に負担が大きく、また銃口から出る火花が視覚を奪うなどの理由から、肩に固定させ、射撃を行う『マスケット銃』が次第位に主役となっていく。
今作では前書きに、前幕に出した問題の答えとちょっとした補足を書き、あとがきに豆知識と、ちょっとしたクイズを載せていく手法をとらせていただきます。
どこかの小屋
「…、……!、………。」
こごえるように冷たい風が意識を覚まさせてくれる。…誰かが何かを言うような気配がする。だがいったい何を言っているのかは全く分からない。
ようやく周りの光景が見えてきた。ここはどっかの小屋みたいなところのようだ。
先ほどから何か聞こえるのだが、…と周りを見渡すと一人の少年が座っている。何かを言っているのだが一切聞こえない。俺が聞こえていない的なジェスチャーをすると、少年がしまった、みたいな顔をしてなにかを口に入れていた。
「これで聞こえますか?」
少年の声なのだろう。変声期前の幼い声だ。
一応、頷く。少年はホッとしたような表情をし、改めて会話を始めた。
「今回、あなた様の補佐役としてともに行動します、『育成型人工知能搭載ナビ』です。貴方様の名づけた名が、私の名前となります。それと、これも一応決まりですので…貴方様の御名前を確認してもよろしゅう御座いますか?」
そう言って、少年は頭を下げた。よく見ると少年に見えるようで少女にも見える。ちょうど童子から大人へと成長していく過程の年齢の姿だ。身体の起伏がほぼないゆえに少年と勝手に判断したのだろう。
「俺は…そうだな、信濃守。山口信濃守。そう名乗らせてもらおう。お前の名は…蓮。そう名乗れ。」
俺はそう言って、『蓮』と名乗らせたそいつを見た。
「分かりました。拙者の名は蓮。貴方様は山口信濃守様…諱はなんでしょうか?」
「……。」
俺は信濃守と名乗ることとし、諱を蓮に小声で伝えた。
「かしこまりました。では、これからは殿と呼ばせていただきます。」
蓮はそう言って、目を瞑る。
その間、俺は今居るこの場所をキョロキョロと、見回す。
「お待たせしました。ただいまの交信で殿の情報が、GSWのメインコンピュータへ登録されました。」
…一応戦国時代のゲームなのに、こんなにカタカナ文字が出てきていいのかと思う。
「なお、現在の時代は、永禄3年4月12日、かの有名な『桶狭間の合戦』の約二月ほど前です。」
「また現在地は全プレイヤー無作為に開始地点を割り振った結果、殿は三河国と尾張国の国境付近の廃村の納屋です。また、他プレイヤーの動向ですが、やはり遠近問わず尾張国から駿河国、特に田楽狭間周辺を目的地に動いている模様です。」
「中にはすでに織田家もしくは今川家の家臣たちの陪臣として仕えている者もいるみたいです。殿はゲームが始まってから目覚めるまでに少々時間をつぶしてしまったのでほかの多くのプレイヤーたちに一歩出遅れてしまった状況です。」
そこまで規律よく話して、蓮は一息ついた。
「そうか。やっぱり戦国時代と言えば、戦っていうイメージはあるからな~。俺もほかのプレイヤーが如く、どっかに仕えて立身出世、一国一城の主にでもなるかな…。蓮、仮に俺が武士になるとしたらお前はどういった立場になるんだ?やっぱり俺の部下になるのか?」
俺は今のところ一番疑問に思っていることを聞いた。いくら、人工のナビとはいえ人型である以上、プレイをするにあたり何かの役割があると考えたからだ。
ほかのプレイヤーのナビたちはどうだか知らんが、少なくとも話し相手にはなってくれるだろう蓮は少し考え、一つの結論が出たのか、応えてくれるみたいだ。
「…私はあくまで殿とメインコンピュータを繋げておく端末扱いです。そのため、殿が部下になれというのなら兵卒にもなりますし、雑用を命ずるならば雑用係にもなります。…それともし殿が…衆道の気があるなら、そのお相手も致します。」
…最後の一言は聞き流させてもらおう。
確かに戦国時代、というよりも近代になるまで日本も性に関しては奔放だったからそういう人も多かったみたいだが、俺は違う!…と思いたい。
「まあ、いいか。とりあえず一ヶ月は情勢を見よう、ひと月もすれば、ほかのプレイヤーたちによる史実改変が起こるとも限らないしな。幸い、嵐の前の静けさというのか、この周辺が戦場になるのはまだまだ先のはずだ。それに今の身体能力、その他諸々を見ても間違いなくNPC武将たちより低いだろうからな。まずは体を鍛えて、仮に武士になれなくとも生きていけるようにしよう。」
俺はそう言って壁が崩れている一部から差し込む陽光を見つめる。
「解りました。では一応、戦国時代での生活を円滑に営めるようにとマニュアル的なものはありますので、しばらくはこの周辺で戦国人らしい体に鍛えて行き、備えていきましょう。拙者も協力します。」
蓮は、そういって、俺を見てきた。
「あぁ。蓮、一緒にこの乱世生き残っていこう。」
…ちなみに俺、山口信濃守の当初のステータスを紹介しよう。
あくまでも蓮が何とかっていう分析をした結果のステータスだが…
現実の身体能力などを結構反映しているらしい。
身長:約183㎝
体重:約140㎏
胸囲:約132㎝
腹囲:約140㎝
尻囲:約136㎝
なぜ、いまさら身体測定をしたのか聞いたら、今後、装束や甲冑などを付けていく際の参考だそうだ。
以下、さまざまなスポーツをやらされて、いろいろなペーパー問題をやらされた挙句算出した結果を
Z,X,J,SSS,SS,S,A,AB,B,BC,C,CD,D,DE,E
と言ったアルファベットでいわれた。
軍事面
相撲:X
総合格闘術:A
柔術:A
蹴術:AB
剣術:S
短刀術:A
棒術:SS
長弓術:DE
短弓術:S
銃術:AB
短筒術:S
砲術:C
銃剣術:B
騎乗術:A
弓馬術:E
銃馬術:S
軍事面における結果:
陣形による集団戦術や弓を使う戦法に関しては不得意である。
騎馬による突撃及び銃火器に関しては及第点。
武器が使用できない場合における徒手空拳術、また長柄、刀剣術の能力が高い。
よって、乱戦時には非常に高い能力を発揮できると思われる。
ただし、実戦経験が過剰に不足しているため、十分な能力を発揮できるかは不明。
内政面
礼儀作法:X
木造建築:A
城郭建築:C
普請技術:SSS
治水技術:SS
指導技術:Z
基本生活技術:DE
西洋医療技術:C
東洋医療技術:CD
諜報技術:E
観察力:X
人心掌握術:X
内政面における結果
全般的に高い能力を持つが、経験値が著しく不足している。
また、指導力、人心掌握、観察力の能力にたけているため、人材における金剛石の原石を見つけることができる。
学術面(一般知識)
言語把握力(読解):Z
言語把握力(発声):X
作文能力:SSS
習字能力:B
設計図作成力:C
計算能力(加):SSS
計算能力(減):SSS
計算能力(乗):SS
計算能力(除):S
四則演算:B
他計算能力:DE
他数学能力:E
日本史:Z
欧州史:X
大陸史:X
国内文化史:X
外国文化史:SSS
経済史:X
宗教史:X
国内地理:X
世界地理:SS
基本医療技術:B
生物学:A
地質学:D
基礎筋力鍛錬学:Z
筋力部位別鍛錬学:X
学術面(外国語)
言語解読術(葡萄牙):DE
言語解読術(西班牙):D
言語解読術(英吉利):BC
言語解読術(阿蘭陀):DE
言語解読術(仏蘭西):E
言語解読術(露西亜):E
言語解読術(中華大陸):CD
言語解読術(東南アジア):E
言語解読術(印度):E
他諸国言語解読術:E
学術面の結果
ほかのプレイヤー全般に言えることだが、やはり学術面の能力は平均的に高い。
ただ、ほかのプレイヤーに比べ、宗教学、地理学や生物学の能力が比較的高い。
また、本来得意不得意によりバラつきが出る歴史学が平均的に著しく高く、文化人たちに気に入られやすくなる。
以上による、『山口信濃守』の総合評価
軍事面:B (他プレイヤー平均:A)
内政面:A (他プレイヤー平均:SS)
学術面:X (他プレイヤー平均:SS)
学術面以外は平均以下、ただしいずれも経験不足による能力評価を考えると、ゲームの進行状況によって大幅に能力が変わる可能性がある。
また、参加者の平均年齢27,4歳に比べ、比較的若いほうに入るため、十分に伸び代はあると考えられる。
★製作者側からのアドバイス★
焦らず、自身を鍛錬していこう。
・・・・・・
蓮と一緒に、自身の分析結果を見た。
どうやら、参加者の中では若手らしい。思った以上に、若い人よりも往年の歴史好きの中堅世代が多いのだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「蓮、桶狭間の合戦が起きるまでわずか2ヶ月、いろいろ考えると自由に動けるのはわずか、1ヶ月弱だ。まずは戦場でそう簡単に死なないようにするべきだと思うが、どうだ?お前の意見を聞かせてくれ。」
俺は、まずは体を鍛えて来たるべき日に備えるようにしたいと考え、蓮に聞いた。
すると蓮も首肯し、同意した。
「はい。拙者も同じ考えです。確かに今後を鑑みますと文武両道の万能な将が重宝されるとは、何よりもまず武功が大事でしょう。この時代の鍛錬は主に狩猟、水泳、相撲などです。幸い、周辺には小川も流れておりますし、山野には野生の獣もいます。食糧を手に入れるついでに鍛錬していきましょう。」
蓮は、少年らしく微笑み、そう言ってきた。
狩猟、すなわちそれは動物を狩る。つまり生き物を殺すということだ。
「覚悟…か。生きるための。」
蓮にも聞こえないくらいの声量でおれはそうつぶやいた。
ちょっとした豆知識
1560年当時、三ヶ国以上を掌握していた大名は、関東の北条家、山陽の毛利家、東海の今川家ぐらいである。特に今川以外の両家はその地方の覇者を目指して勢力を拡大することに奔走しており、上洛にはほとんど興味さえなかったようだ。
今川家は、かつて数多くいた守護大名家の中で唯一、当初と変わらぬ実力があり、また足利将軍家の一門格でもあった。
今回もちょっとしたクイズです。
今回は10択問題 難易度は★★★☆☆
『室町幕府において、探題と呼ばれるものがいくつかあった。次の五つの内、実際には室町時代にはなかった探題を答えてください。()内は任官していた大名家です。』
※なお解答は一つとは限りません。
①中国探題(大内氏)山陰山陽地方
②九州探題(今川氏)九州地方
③羽州探題(最上家)出羽国
④奥州探題(伊達家)陸奥国
⑤越州探題(朝倉家)北陸地方
⑥六波羅探題(足利家)畿内
⑦四国探題(細川家)四国地方&淡路国
⑧東海探題(土岐家)東海地方
⑨関東探題(足利家)関東地方
⑩南都探題(足利家)大和国
答は次回!!