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第一幕 目標は天下人

 2012年 11月


 「これより記念すべき第一回『GAME OF SENGOKU』天下統一全国大会を開催します。」

 

 「それでは参加者の皆さん、これから皆さんの意識を世界に送りますが、」

 

 「その前にいくつか注意事項です。」

 

 「第一に…………」


 今、俺はあるゲームの全国大会に参加している。


 それは最近発売された『GAME OF SENGOKU』というオンラインゲームだ。


 これはかつて日本にとって黄金時代と言われた戦国時代の生活を疑似的ではあるが意識を通じて体感できるゲームだった。


 歴史好きにはたまらない作品だと思う。


 俺も含め、歴史好きな人間にとって疑似的体験とはいえ、実際に戦国の世で生きるというのはすごく興味がそそられるものである。


 それ故に是が非でも味わいたいものだと思う。


 事実、この内容がネットを通して全国に知れ渡ってから、戦国マニアと呼ばれる人たちが集まるサイトの登録者数や戦国シュミレーションゲームの売り上げが膨れ上がるほどに盛り上がっていた。


 また、この情報は地方経済にとっても効果があったらしい。


 多くの戦国時代の遺構、古戦場や城郭などが観光地の中心となっていった。


 特に長篠古戦場跡や小牧山城跡など、有名な史跡や戦国の三傑の故郷である尾張、三河のあった愛知県は過去最大の観光収益が出たそうだ。


 なぜ、ゲームひとつでここまで活性化したのか。


 それは発展し続ける技術のなかで、睡眠中の人間の意識をゲームの世界に飛ばすという技術が開発されたことに起因がある。


 所謂、疑似転生ができるからだと思う。


 だから昼間は仕事で忙しい人とかも夜寝ている間にゲームができる、など、一種の睡眠学習的なことになるからだろう。睡眠もでき、夢の中では戦国プレイ。なかなかいいアイデアだと思う。


 現状、特に健康的には何の支障も出ていないため、睡眠不足解消や早起早寝にもってこいとも言われている。



 「…以上で注意事項を終わりたいと思います。続いて本大会委員長にして本ゲームを作リあげた…」


 そんな説明をしてる間に今大会の司会がなんか言い終わったらしい。

 



 次に俺の紹介に移りたいと思う。 

 

 俺は『山口』、ゲームの世界での通称は『信濃守』もしくは『三郎丸』、この後とんでもない事態に巻き込まれる予定の歴史オタクである。


 言っとくが、今、ちまた跋扈ばっこしてる歴男、歴女なんかと一緒にするんじゃねぇ、あんなのは所詮学校で習った知識に+α《プラスアルファ》程度にしか追及してねえんだ。


 俺の周りの連中だって「最近歴史にはまってる。」、「お前みたいなオタクなんてもう古い」なんてことを最近言ってきたやつがいたが、遊び半分で比較的俺の中では簡単なクイズを出すと、「やばいってお前、そこまではキモい。」なんて言ってきやがった。

 

 俺が歴史というものに目覚めたとき、俺はまだ小学生に満たず、歴史が好きと公言している人はどちらかと言えば年上の人ばかりだった。


 実際、俺にとって当時の歴史の先生は祖父だった。


 正直、あの時が一番はまっていたと思う。

 

 しかし、数年後の中学の時、俗にいう歴史ブームが起きたときの流行に被れた同級生の連中を目の当たりにした時、今までの熱が一瞬で冷めてしまった。


 その後、流行が去ったのちにまた歴史にはまった。


 その頃に自分の中で決めた。


 自分は“歴男”なんてもんじゃない。


 “歴史オタクだ”と。

 

 オタクというとなんとなくマイナスなイメージが付いて回る印象がある。


 だけど俺は、素晴らしい人たちだと思う。


 オタクと呼ばれる人達はその分野において、はっきり言って大学の教授とかよりも詳しく各々、“独自に分析、研究しており、またそれに関連する幅広い情報を持っている人たちである”と思っている。


 だから俺が自称するのもおこがましいと思うこともある。


 そんなことを思いふけっているといつの間にかあいさつが終わったみたいだ。


 「…委員長ありがとうございました、では本大会における特別ルールを説明します。」


 お偉いさんの話が終わったらしく、司会の人が注意事項を説明しようとしていた。

 これは真面目に聞こうと思う。何分、本来のこのゲームの概念は『戦国時代を体験する』ということが根底にあり、多くのプレイヤーと競い合う、協力することが目的のオンラインゲームではないからだ。


 ほかの参加者と思しき人たちも、集中して聞いている。


 「今回、特別ルールとして、皆さまにはいくつかの制約があります。これは本来、競争ということを目的に開発されていないゲームです、そのためまず、皆さんは独自に成長させてきた自身のデータを機会にセットしてください。」


 そう言われると、プレイヤーたちの立つ場所の床から一人一つずつゲームデータをインプットしてあるメモリーカードを差し込むらしいプラグが出てきた。


 「そのプラグに皆さまのメモリーカードをセットしていただくと、皆さんが日頃使っているゲームでのデータが今大会のために新たに作られた、全国大会用の戦国時代の世界に読み込まれます。この全国大会用戦国世界、『NEWニュー SENGOKUセンゴク WORLDワールド』略して『NエヌSエスWorldワールド』ではこちらが大会開催の度に指定する時代からのスタートとなります。範囲はゲームとは違い、本来の『応仁の乱』が始まる室町後期の1467年から江戸前期に起こる日本近世最後の大乱、『島原の乱』が終結する1632年の内、大阪の陣が終結した1615年以降を除外した所謂、150年弱の時間の中で皆様には戦国時代を切り開き、織田、豊臣、徳川に勝る泰平の世を切り開いていただきます。」


 つまり、要は応仁おうにんから元和げんなまでの年号の間で主催者側が設定した西暦にプレイヤーを同時に送り込み、そのあとは向こうの世界で天下取りしあえということらしい。


 「今回は、戦国の風雲児と称される、『織田信長』が天下に名を挙げた『桶狭間の戦い』が始まる、1560年からのスタートとします。」


 1560年、年号でいえば『永禄三年』、鉄砲も既に伝来し、南蛮の宗教、キリスト教も布教され始めている時期。


 天下に急速に勢力を伸ばすことになる、“戦国の覇王”織田信長もまだ今川や斉藤に挟まれた状態。


 つまり天下はまだまだ先が見えない状況。


 個人が名を上げる絶好の機会というわけだ。


 「皆さんは大名家に仕えるもよし、勢力圏内に隣接する領主達を併呑して自ら大名となるもよし。また各プレイヤー同士で連合して天下取りするもよし。武士という身分こそ制約されますが、その他は皆様の自由な行動で、荒れ狂う乱世を鎮めてください。」


 そこで司会は、スタートの合図をかける。


 「それではプレイヤーの皆様方、ほかにも疑問等ございますでしょうが、あっちの世界にも一人一人に必ずナビゲーターを用意してますのでそちらにお聴きください。…それでは指定の席に座り、各自シートベルトをお付け下さい。」


 準備されたまるでロボットの操縦席みたいなシートが各々の後ろに出てくる。

 指示通りに、座り、腰と両肩からベルトを巻く。


 「頭上に装置を降ろします。あまり動かないようにしてください。」


 なんかのコクピットみたいなもので全身を包まれた。周りはもう何も見えない。


 「それでは、意識を戦国時代に飛ばします。目が覚めたら近くにナビを担当する者がいると思うので、最初はその者に従ってください。」


 そう言われて気づけば周りが暗くなっていく。

 そして安眠を貪りたくなる衝動に駆られ、意識を失っていった。


 司会者はそれぞれの席のプレイヤーたちが戦国時代にいくために、全員が意識を失ったのを確認すると、会場を出て別の部屋へと向かった。


 そこには無造作につながったケーブルと、たくさんのパソコン、そして大きなサーバーなどの精密機械がたくさんある場所だった。


 司会者は、その中にポツンといる男に声をかける。


 「どうだ、調子は?」


 男は振り返ってにこやかに笑う。


 「君の投機の手腕には驚かされるよ。意識を人工の世界に送り込むシステム。はじめはギャンブルとも思ったが、見事だ。しかもそれをゲームにするなんてね。しかも戦国時代を題材にした歴史ゲーム。驚くことに学術性が高いという多くの研究者たちの評価をいただいてね、彼らのスポンサーもシステムの技術を欲しいせいか今大会に多額の設備投資をしてきた、おかげで費用はだいぶまかなえるよ。研究者たちは今回の大会は儲けの三割を譲渡するだけで良いそうだ。今回の結果次第では、カジノよりも莫大な利益が出そうだよ。」


 その男はうれしそうに話す。


 「それはよかった。」


 そう言って司会者だった男はそこを後にする。


 「プレイヤーたちにはせいぜい頑張ってドル箱になってもらうとしよう。」


 そう言って微笑みながら、そこを後にした。


 ちなみに本文中における歴男・歴女に関する考え方は著者の意見です。また、+αの次の行の話は作者のガチエピソードです。


 ちなみに出したクイズは難易度★★☆☆☆


 『1543年種子島に渡来した火縄銃、ポルトガル語では何と呼ばれていた?』




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