過去拍手お礼話。
【右向け右で風呂上り。】
さて突然だが、この世界は意外と技術が進歩している。
わたしが現在借りている部屋は4階にあるんだけど、ちゃんと浴室はお湯も出るしシャワーもある。
聞いてみれば、一般家庭でもさして珍しいことではないそうだ。
「あっ。」
ガチャリと突然開いたドア。
ちょっ、ノックくらいしろよと思ったけど・・・まぁ、今更だよね。
「え?あっ・・・」
最初に入ってきた綾斗がわたしの姿を確認して冷や汗をかきだした。
おいどうした弟よ、別にわたしの裸なんぞ見飽きてるだろうに。
「うわっ、シアナ来んな今だけは!」
「え?なんでってきゃああああぁ!!お姉様お願いですからなにかお召しになられてください!じゃないと私が襲いますよ!!?」
「ちょ危険人物!ほら出ろよ早く!!」
いやまぁタオルまいてるし、恥じるには年はなれてるし・・・・というかもう恥じるような年齢でもないんだけど。
×××××
「いやそんなこともあったねぇ。」
「そんなほのぼの言うことじゃないよね?」
にっこりと笑った白髪蒼目にくどくど怒られた。
【姉の日記】
7月20日(火)
天気:晴
ノートとペンを貰ったので日記をつけることにした。
日付はわたしが呼び出された日を基準にしている。つまるところ今日は呼び出されてから三日目。
今日はなんだか静かな日だった。
最近は人質にされたり求婚されたりで大変だったのでゆっくり休めました。
7月21日(水)
天気:雨
今日は雨だった。憂鬱だった。
でも雨は好き。憂鬱な要因はあれ、あれです。
女装した恋する乙女が暴走して部屋に押し入ってきた。
若くてかっこいい執事さんにモテますねと言われた。地味にショック。
でもその人は声があのお方に似ていたのでこれからわたしのことはマイロードと呼ばせることにしました。
7月22日(木)
天気:曇
とりあえず疲れた。
7月23日(金)
天気:雪
とりあえず天気がころころ変わるらしいのでびっくりしました。
7月24日(土)
天気:晴
楽しかった。
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「ちょっ、姉貴!?三日坊主にも程があるでしょ!!」
「三日じゃないよ。ちゃんと5日間日記をつけてんじゃん。」
「五十歩百歩って言葉知ってる?!」
【回れ右したとある日。】
突然ですが、ホームシックです。
いい年にもなって何言ってんだととはわたしも思う。
けれど全く知らない土地で、知り合いもおらず、これまた異世界とくれば
帰りたいと思わざるを得ないだろうに。
「よくがんばったね、綾斗。」
「っ・・・!」
ごめんと消えそうな声で囁く綾斗の頭をふわりと撫でて、黙って傍にいてやった。
わたしの膝に顔を埋めて、泣き声を抑えて泣いている。
なんだか無性にわたしも泣きたくなってしまって、非常に困った。
弟がこれまで頑張ってきたのに、来て数日で頼られているわたしが泣いてどうする。
口元にかすかな笑みを乗せて、涙を零さないように、その夜はずっと綾斗を宥めていた。
泣き疲れて眠ってしまった弟を見て、消えてしまった頃と変わらない弟の存在を確かめるように抱きしめて、
悲しいのか安堵なのかわからないなにかが頬を濡らした。
綾斗と再会した次の日の夜だった。
とりあえず完結にはしますが、思いついたらまたなにか投稿するかもしれません。
ここまでありがといございました。