お説教してさようなら。
「なるほど、じゃぁお前は家族を捨てたわけだ。」
冷えた。萎えた。失望した。
おう、なんという三連打。お姉ちゃんの匠によって作られたガラス細工のような心は砕け散ってしまったよマイブラザー。
なんて、ふざけるのも大概にしないと。
あらあらまぁまぁ、わたしが起きていたのに気付いていなかった弟は目を見開いている。
後ろの方でもわずかに息を呑んだ気配がした。
「そんな、そんなわけないだろ!?」
驚きつつも言葉の意味を理解した弟が食らいつく。
わたしは顔を上げて弟を見据えた。
あれ、後ろの方にRPGのパーティにいそうな連中が・・・なるほど仲間か。
「えー?違わないよ。だってお前二年もこっち帰ってきてないし、魔王倒すってアレだぞ?殺すんだろ?じゃぁ命の保障も出来かねるってことだろ?
お前は向こうに残してきた家族も友達も生活もぜーんぶ捨ててこっちに身をおくことにしたってことだろ?」
苦虫を噛んでいるような表情の弟。
なに、その顔。実はどこかでわかってたんじゃないの?
「わたし達がさー、どれだけ心配して悲しんだと思ってんの?お前、目の前のことしか見えてないのは美徳にもなるけどさ、残してきたものの事 考えたことある?」
「アヤトは国のために必死だったの!仕方のないことじゃない!!」
そう庇うのはパーティの一人の女の子。
華奢な体つきで、白で統一された服を着ているかわいこちゃんだ。
「そうなの?」
「そうだ・・・」
「ふぅん?でもねー綾斗。わたしはさー、何かのためって言うのを言い訳にして、責任だの後ろめたさだのを綺麗に纏めちゃうのって、あんまり好きじゃないんだ。」
地雷踏んだね、残念。
弟が可哀そう。