回れ右して夢から覚めた。
「んー・・・?おはよう綾斗。」
本日5個目の目覚ましがなったところで目が覚めた。
なんだか長い夢を見ていた気がする・・・まぁいいか。思い出せないということはさほど大切なことでもなかったのだろうと無理やり結論付ける。
「おはよう姉貴。もう昼だけど。」
「いいじゃないか、今日は休日だし。朝ごはんちゃんと食べた?」
「うん。ついでに昼飯ももう済ましてる。あとオレ部活あるからもういくね。」
「おう、いってらっしゃい。」
元気よく爽やかにいってきますと言う綾斗を見送り、昼ごはんを一人で食べた。
なんだか久しぶりに静かに食べたななんて、頭をよぎったけれど・・・久しぶり?
久しぶりなわけがなかった。ここ最近は連休で弟と休みが被らず親もいないので一人で食べることが多かったはずなのに、どうして?
「・・・ん?」
なにか大切なことを忘れている気がする・・・いや気がするんじゃなくて、確かに何かを忘れてる。
なにを?わからない。じゃぁなぜ悲しい?悲しいの?可笑しい。何故かわからない。
頭の隅に残る記憶の断片・・・
蒼い優しい目が、見えた気がした。
「あれ?」
何故か、涙がこぼれた
大事なことなのに思い出せない。もやもやしたものを吐き出すように、わたしは意味も理解しないまま静かに泣き続けた。