回れ右して自己紹介でもしよう。
余談かもしれないが、この世界では自己紹介をしない不躾極まりない奴が多い。
シアナちゃんやロキ少年お名前はなりゆきで知った。白髪蒼目な王様とその他もろもろ合った人の名前は知らない。
・・・・・・・・いやぶっちゃけちゃうと名乗られても覚えてない場合が多いけどさ。
というわけで、せっかく自己紹介を親切にもしてくださった吸血鬼くんが目の前で号泣しているわけだけど・・・さてどうしよう?
「ということで親切なわたしは理由を聞いてあげようと思う。」
「なにそのナレーション。だいたい姉貴の開口一番『ゴメン誰だっけ?』が原因だからね!?」
「お兄さんせっかくの美貌が台無しですよ?」
「無視!?そしてそれはキレーな姉ちゃんあたりに言うべき台詞だと思うよ!」
地味に傷ついている弟は放置でいいとして、このキレーな兄ちゃんどうしよう。
暫く見ていたらなにやら呟きだしたので耳を傾けた。
「うぅっ・・・いいですどうせ某なんてっ、目立たないしいても空気だし・・・っ」
なにこのコ面倒くさい。
黄金の髪に紅玉の瞳は今濡れていてなんか色気あるうわ爆発しろ。
というか某って随分古風だなオイ・・・・あっ。
「・・・・そうだ、ユキちゃんだ。」
唐突になんの感動なく思い出した。
そうだよそうだよ愛しのユッキーと同じ一人称で名前もちょっと似ていたから思い出した。
「誰だよユッキーって。」
「まぁわかる人は仲間っつーことだよ。」
せっかく教えてやったのにその気のない返事は何だよ。まぁいいや。
とりあえずユキちゃんに向き直って話しでも聞こうじゃないか。
「某のご主人様になってください!」
「・・・・・・生憎そんな趣味はないんだ。」
爽やかな笑顔とともに断わってやった。
あとよくよく聞いてみればSM的なそれではないらしい・・・うん。よかった。
「姉貴って酷いよな。」
「まぁ過去の過ちはロストしてしまえばいいよ。」
「流せってかオイ。」
「うまいね!」
「いや全然!?」
本文に入れなかった会話。
テンションだけで突き進むとどうもグダる傾向にあるようです。