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大公立志伝  天狗の章  作者: みょ~じ★


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6/9

文士×学問×政所

「ほう、太田垣家の……」

「うむ、次郎というからには次男なのだろうが……」

(えらいこっちゃーーーっ!?)

 ……太田垣次郎は、確かに次男ではあった。あったのだが……。

(やっべぇ、絶対勘違いが猛ラッシュで襲い掛かってる……!!)

 ……次郎自身は、この当時の太田垣氏に、恐らくは縁も由来もない存在であり、仮に縁や由来があったとしても、それは()()()()()()()()であり、仮にそれが本当に子孫だとしても当然ながら、この世界に現存しているであろう太田垣氏とは何の関係も無かった。

 つまりは、伊勢の勘違いから京洛に連れ添われたわけで、とはいえそれを白状したら今度は伊勢の庇護を受けられず現地に投げ出されるわけで、それもまた次郎()|この先生きのこる可能性サバイバビリティを考えると非常にマズい事態となると言えた。

 どちらにせよ、次郎が取れる行動は限られてくる。その事実に脳内で右往左往していた次郎だが、当然現状は次郎を待って動いてくれているわけではない。彼が考え、もがいているうちにも淡々と時間は過ぎていく。

 そして、次郎が対処に苦慮している最中に交わされた会話の内容はさておいて、彼が次にはっとしたのは、例によって伊勢に呼び掛けられた時であった。

「次郎、おい、次郎!」

「はっ、はい!」

「全く、案の定昏迷しておったか……。これでは戦場は無理だな……。

 まあいい、割り振る仕事はおいおい考えておく。ついてこい」

「は、はい」


「さて、次郎。お主は何ができる」

「……何、とは……」

「質問に質問で返すな、莫迦(バカ)。……わかった、質問を変えよう。文字は読めるか」

「はい」

「では、算盤は」

「専門で習ったことはありませんが、授業の範囲くらいならどうにか」

「そうか。ならまあ、内政としての仕事の方がいいか。練習だ、間違えても構わん、ちょっとこの書類読んでみろ」

「あ、はい」

 次郎の目の前にどさっと置かれた書類は、一応は楷書で書かれており、古語ではあったものの学生である次郎にとっては却って楽な仕事であった。少なくとも、戦場で切った張ったをするよりははるかに現代人にとってストレスの薄い環境と言えた。

「……どうだ、何かわかるか」

「はい、どうやらこの西村という人物が酒井という人物を使って悪さをしているようですね。それで惣とかいう人物が反乱を起こしている、というのは理解できました」

「……惣は人名ではなく組織の名前なのだがな……。まあいい、初見でそこまで読めたのならば合格だ。一応それ、終わった案件だから練習用に、としておいたが、その分じゃ暗算くらいはできそうだな」

「一応、それなりには」

「よかろう、それならしばらく政所に就いてもらうとしよう。執事の伊勢様には良きように言っておくのでな、暫くは書類を読んでもらうぞ」

「は、はい」

 ……どうやら、伊勢新九郎にとっての太田垣次郎の価値が決まったらしい。現代人からすると四則演算《加減乗除》や漢字かな交じりの文章などは義務教育の、それも初歩の段階ではあるものの、室町時代であるならばそれでもそれなりの実務はできる、という、ある種の「()()()()()()()()()()()」ではあるが、そういった意味に於いては彼女の目には彼の姿は「頼りのないうら瓢箪ひょうたんではあるものの文士としてならば及第点きゅうだいてん」に映ったようだ。

 そして、次郎が伊勢新九郎の屋敷に寄宿して数日が過ぎた……。

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