まともな神はいない
初めまして、白熊サンタです。
初投稿させていただきました。
平凡な会社員の大向 千秋 26才、
今日もいつもと同じ日々を終えて「おやすみ」
とつぶやきながら、一人暮らしをしている自室のベッドに入り目を閉じた。
はずだった・・・
突然のまぶしさに目をあけると、白い空間のなかで立っていた。
「なに、ここ?」
すると考えている暇もなく、人物らしきものが近づいてきた。
「我は、地球の神である」
その人物はクセのついた髪を適当にまとめ、猫背気味のあまりきれいとは言えない姿で現れた。
神様らしさを探すならば、全身がぼんやり光に包まれているところが、ギリギリそう見えなくもない。
よくあるイメージ画像と違いどこにも神々しさはなく、目の前の神というものに対し、不快に感じたことは確かだった。
神様?ただのおじさんにしかみえないし、なんか嫌なかんじ
神様であろうと第一印象は大事である。
この時の私の直感は正しかったとすぐにわかることになる。
気持ちを隠さずに眉間にしわを寄せていたが、
その地球の神様は、こちらの反応はどうでもいいようで言葉をつづけた。
「我は、他世界の神々と賭けをしていてな」
えっ、賭け?
「こたびは悔しいが我の惨敗であった。それゆえ勝った神へ賭けたモノをやらねばならない、賭けの約束は守らねばならないのだ」
何のはなし?
意味が分からず、なんとなく聞いていると
「賭けたのは地球に住む人間、つまり其方である」
はあっ!? と口の形を作ったが声を出すことが出来なかった。
続けておかしな話ことを言い始めたからである。
其方には勝った神の世界で奉公してもうことになった。数年すれば帰す約束になっている。ちょいと辛抱すればすぐの事だろう。地上への干渉はあまり許されていないが、異世界とは心もとなかろう、一つ餞別として其方の暮らす日本で必要と言われる物を授けよう、ぜひとも役立ててくれ。」
神様の時間の感じ方はわからないけど、数年はすぐじゃないし、それよりも聞き捨てならない言葉がいっぱいあったんだけど!
「そろそろ時間のようだ、頑張って奉公するように」
こちらの話を聞く気は無いようで、言いたいことだけを言い、急いだように手を上げ消えていった。
「ちょっ、いい逃げ?」
どこからこんな夢を? さっさと起きよう。
自分の頭の中とは思えない内容に、早く終わらせるべくもう一度目をつむった。
目を開けたら、確かに景色は変わっていたが、今度は見知らぬ森の中にいた。
「ちょっと、どんだけ熟睡してんの! ここまでくると私の想像力すごいな。」
意識がはっきりしてきて、おもわず動こうと足を踏みしめた。
「いたっ」
突然の痛みに、目をかっぴらいた。
転がっていた石ころを素足で踏んだようだった。
普通に痛い!?
まさかと思い、今度は石ころを蹴ってみた。
「うそっ!夢じゃないの?」
足の爪にあたったあまりの痛さに、現実であることを突きつけられて、痛みを口に出す余裕もなかった。
それよりも真剣に聞いていなかった神様のとんでも話を、あわてて思い出していた。
賭けってことは私は別の神さまへの景品みたいなこと? ほうこう(奉公)ってどういう意味だっけ? それに異世界とか言ってたな。
「異世界に来たってことはもしかして!」
アニメやラノベなどをよく見ていた私は、異世界転生といえばスキルや魔法が使えるはずと、少しわくわくしながら思いつく呪文をつぶやいたり、手をグーパーしたり動かしてみたが、何度試しても出来そうもない事に心底落胆した。
「なんでぇ!?特別なこと一つくらいできるものじゃない? 身一つでどうしろと? それに部屋着に裸足のままじゃん! 何もかもありえない!」
さきほどの裏切られた気持ちと神様の自分勝手な行いのせいで起きたことに、だんだんと腹立たしさが沸き上がってきた。
「こんなところに突然ほっぽり出して、神様ならもっと自分の世界のものを大切にしてよ!
それに勝った神様はなんで何十億もいるのに一人だけなの? 地球規模の賭けなら私だけじゃなくて、もっと欲張って連れてこれたでしょ!」
同じ目に合う人はかわいそうだが、一人より仲間がいたほうがいいにきまっている。
なんか"神々”って言ってたし、ほかの神様も同じように賭けていたってことだよね? 賭けたものっていったい・・・怖っ!
「神様ってクズばっかじゃん!」
不敬かもしれないが、もともと信仰深いわけでもなく、自分の身に起こされた事を思えば口に出さずにはいられなかった。
神様たちへの文句はまだまだ溢れ出てくるが、ぶつける相手も方法もなく、モヤモヤした気持ちが募っていた。
「お願いですから、どこかにまともな神様存在して!」
存在していたとしても、現状はどうにもならない事は百も承知である。
地球の神は先ほどまで目の前にいた、アレなのだから。
お読みいただきありがとうございます。