第17話 町民総出の送別会
同日午後 中央広場
ユイが時空の扉を通って美久に会いに行くこと、そして三つの世界を繋ぐ使命を果たすことが、町中に伝わった。
住民たちは慌てて送別会の準備を始めた。
「ユイちゃんのために、特別な料理を作るわ」
シロコが張り切って台所に向かう。
「俺は守りのお守りを用意する」
ボスも珍しく優しい表情で、古い倉庫から何かを探している。
「僕たちも何かしたい!」
子猫たちが集まって、手作りのプレゼントを制作中。折り紙で作った花束、木の実で作ったネックレス、小さな絵。
夕方、中央広場に全住民が集まった。テーブルには豪華な料理が並び、提灯が優しい光を放っている。
「ユイちゃん、短い間だったけど、本当にありがとう」
シロコが涙を流しながら言った。
「あなたのおかげで、この町がもっと温かくなった」
「みんなの心の傷が、少しずつ癒えていった」
ボスも前に出た。
「俺たちのトラウマを聞いてくれて、ありがとう」
「君がいてくれたおかげで、心が軽くなった」
「そして、人間との共存も、不可能じゃないって思えるようになった」
「コレクターの脅威からも、きっと世界を守ってくれると信じてる」
ミケとトムも手を繋いで現れた。
「私たち、ユイちゃんのおかげで素直になれました」
「本当にありがとう」
チビタが小さなプレゼントを差し出した。
「これ、僕が作った翻訳機だよ」
「本物じゃないけど、気持ちだから」
手作りの木製の道具。もちろん実用性はないが、チビタの純粋な気持ちが込められていた。
タマジイも歩み寄った。
「ユイ嬢、君に託したいものがある」
差し出されたのは、もう一冊の古い本だった。
「これは、『三界概論』の続編だ」
「コレクターとの戦い方、そして真の平和への道が記されている」
「美久様にも、読んでいただきたい」
最後に、トラが前に出た。
「ユイちゃん、君と過ごした一週間は、僕の宝物だよ」
「美久さんに会えたら、僕たちのことも話してくれる?」
「そして、三つの世界が平和に繋がるように、頑張って」
「コレクターを倒して、みんなを守って」
「はい!絶対に!」
ユイも泣きながら答えた。
「みなさんのことは、一生忘れません」
「そして、必ずまた戻ってきます」
「今度は美久さんも一緒に」
「三つの世界を繋ぐ架け橋として」
「コレクターの脅威を終わらせて」
住民たちが大きな拍手を送る中、ユイは時空の扉に向かって歩いていった。
『三界概論』の二冊の本と、トラからもらった鈴、そしてみんなの想いを胸に。
振り返ると、みんなが手を振ってくれている。
「行ってらっしゃい!」
「気をつけて!」
「必ず帰ってきてね!」
ユイも大きく手を振り返した。小さな前足で、精一杯。
そして、決意を込めて扉をくぐった。
「美久さん、今度こそ本当のお話を聞かせてください」
「そして、一緒に世界を救いましょう」
金色の光に包まれて、ユイの姿が消えた。
ニャンコタウンでの一週間。
それは、ユイが本当の自分を見つけ、そして大きな使命を受け取った、大切な時間だった。
そして、美久との運命的な再会へと続く、重要な準備期間でもあった。