第15話 住民たちのトラウマと癒し
転生6日目 ニャンコタウン中央広場
「みんなに、お話があります」
ユイが住民たちを集めて言った。一週間近く過ごして、ユイは多くのことを学んだ。そして、住民たち一人一人が深い傷を抱えていることも知った。
「この数日間で、皆さんの心の声をたくさん聞かせていただきました」
「そして気づいたことがあります」
住民たちが静かに聞いている。夕陽が広場を金色に染め、長い影を作っている。
「皆さん、人間に対して複雑な感情を持っているということです」
ざわめきが起こった。
「でも、それは当然のことだと思います」
ユイが続ける。
「今日は、皆さんが本当に伝えたかった気持ちを、翻訳させてください」
最初に手を上げたのは、ボスだった。
「俺の心の声、聞いてくれ」
ユイがボスの心を深く読むと、意外な真実が見えた。
『俺は昔、人間の子供に可愛がられていた』
『その子は病気で、いつも一人ぼっちだった』
『俺がいることで、少しでも元気になってくれた』
『でも、その子が亡くなった時...』
『俺は何もしてやれなかった』
『それ以来、誰かを守れなかった自分が許せない』
『だから、この町の猫たちは、俺が必ず守る』
ユイが翻訳して伝えると、住民たちが静かに涙を流した。
次に、シロコが前に出た。
『私は、人間の家族に捨てられた』
『理由は、私が年を取って可愛くなくなったから』
『でも、恨んではいない』
『きっと、人間にも事情があったのでしょう』
『それでも...』
『信じていた家族に裏切られた痛みは、今でも忘れられない』
『だから、この町では絶対に誰も見捨てない』
トラも話した。
『僕は野良猫だった』
『人間に石を投げられ、追い回された』
『でも、時々優しくしてくれる人間もいた』
『人間は複雑な生き物だと思う』
『だから、一概に敵だとは言えない』
『でも、簡単に信用することもできない』
一人一人の心の声を聞いていると、ユイの涙が止まらなくなった。みんな、深い傷を抱えて生きている。でも、それでも前を向いて、優しさを失わずにいる。
最後に、小さな子猫のチビタが前に出た。
『お母さんは、人間の車に轢かれて死んじゃった』
『でも、お母さんは最後まで僕を守ろうとしてくれた』
『人間は怖いけど...』
『お母さんが守ろうとしてくれた僕を、みんなが愛してくれる』
『だから、僕も強くなって、みんなを守りたい』
全員の心の声を翻訳し終えた時、広場は静寂に包まれた。
そして、タマジイが前に出た。
「みんな、よく聞いてくれ」
「ユイ嬢が持つ能力は、まさに三つの世界を繋ぐ鍵となる」
「彼女なら、1000年前の悲劇を繰り返さずに済むかもしれない」
「そして、コレクターの脅威からも、世界を守れるかもしれない」