第14話 タマジイとの出会いと世界の真実
転生5日目 ニャンコタウン図書館
ユイはこの数日間で、町の人気者になっていた。住民たちの心の声を聞き、誤解を解き、喧嘩を仲裁し、恋愛相談まで受けるようになった。
そんな中、町で一番の知識人に会うことになった。
「ほう、転生者の子か」
タマジイは白い毛に黒い斑点がある老猫で、小さな眼鏡をかけている。図書館の奥の部屋で、古い本に囲まれて座っていた。
「心語翻訳ができるという話だが、本当かね?」
「はい。まだ完璧ではありませんが...」
「試してみてくれ」
タマジイの心の声を聞くと、複雑な感情が入り混じっていた。
『この子なら、もしかして...』
『人間との架け橋になれるかもしれない...』
『でも、また同じ悲劇が起きるのではないか...』
『そして、三つの世界の秘密を知る時が来たのかもしれない...』
『コレクターの影が、また動き始めている...』
「タマジイさん、人間との架け橋になることを期待してくれてるけど、同時に悲劇を心配してるんですね」
「そして...三つの世界?コレクター?」
タマジイが驚いて眼鏡を外した。
「すごい...本当に心の奥まで読めるのか」
タマジイは立ち上がり、書架から古い本を取り出した。表紙には『三界概論』と書かれている。
「これを君に託そう」
「三界概論?」
「この世界の真実について書かれた書物だ」
タマジイは本を開いて見せた。そこには、三つの円が重なり合う図が描かれている。
「この世界は三層構造になっている」
「第一層は『現代人間界』。君が元いた世界だ」
「第二層は『境界領域』。このニャンコタウンや、祢古町のような場所」
「そして第三層が『古代猫王国』。1000年前に封印された、猫族の真の王国」
ユイは息を呑んだ。
「封印された王国...」
「そうだ。そして最近、その封印が弱まっている」
タマジイの表情が真剣になった。
「君のような転生者が現れたのも、時空の扉が開いたのも、全ては封印の弱まりと関係がある」
「もし封印が完全に解ければ、三つの世界は強制的に繋がる」
「準備なしにそれが起これば...」
「1000年前の悲劇が繰り返される」
タマジイは本の別のページを開いた。そこには恐ろしい絵が描かれていた。
「そして、これが最も危険な存在」
「『魂喰いの環』と、その中心にいる『コレクター』」
絵には、巨大な口のような存在が、人々の魂を吸い込んでいる様子が描かれていた。
「コレクター...」
ユイは震えた。美久さんのブログを調べている時に見つけた、あの不気味な書き込みを思い出した。
「この存在は、1000年前から人々の感情を食べ続けている」
「特に、絶望と孤独を好む」
「そして今も、どこかで獲物を待っている」