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第13話 ボスとの出会いと真の理解

同日夕方 ニャンコタウン路地裏


騒ぎが収まった後、ユイは一人で町を散策していた。石畳の道、小さな家々、どこか懐かしい雰囲気がある。


しかし、路地裏で威圧的な影が立ちはだかった。


「おい、新入り」


傷だらけの大きな雄猫が立っていた。片目に古い傷があり、耳も欠けている。明らかに喧嘩慣れした野良猫の風格。体格は普通の猫の1.5倍はある。


「俺はボス。この町の秩序を守ってる」


ボスと名乗る猫が、ユイを見下ろすように立った。影がユイを覆い、威圧感が凄まじい。


「新入りには、この町のルールを教えてやる必要があるな」


「ボス、やめて」


シロコが慌てて止めようとするが、ボスは聞かない。


「まず第一のルール。この町では強い者が偉い」


「第二のルール。弱い者は強い者に従う」


「第三のルール。俺に逆らう奴は、町から出て行ってもらう」


ユイは震えた。人間の時も、こういう威圧的な人は苦手だった。猫になっても、それは変わらない。体が小刻みに震える。


しかし、その時ユイの翻訳能力が働いた。


ボスの心の声が聞こえてきたのだ。


『また新しい仲間が増えた...嬉しいな』


『でも、弱い子だったら心配だ』


『この町は安全だけど、外には危険もある』


『しっかり者になってもらわないと...』


『みんなを守るのが、俺の役目だから』


(え?この人、本当は心配してくれてるの?)


ユイは驚いた。威圧的な態度とは正反対の、優しい心の声。まるで、厳格な父親のような愛情が感じられる。


「あの、ボスさん」


ユイが勇気を出して声をかけた。


「私を心配してくれてるんですね。ありがとうございます」


ボスが驚いて固まった。目を見開き、口をぽかんと開ける。


「な...何を言ってる?俺は別に...」


「でも、心の中で『また新しい仲間が増えた、嬉しいな』って思ってました」


「『この町は安全だけど、外には危険もあるから、しっかり者になってもらわないと』って」


「『みんなを守るのが、俺の役目だから』って」


ボスの目が見開かれた。そして、周りの住民たちもざわめき始めた。


「まさか...心が読めるの?」


シロコが驚愕している。


「え?これって特別なことなんですか?」


ユイが困惑していると、トラが説明してくれた。


「ユイちゃん、君は『心語翻訳』ができるんだ。とても珍しい能力だよ」


「心語翻訳?」


「言葉の表面だけじゃなく、心の本音まで翻訳する能力。伝説でしか聞いたことがない」


住民たちが、一斉にユイを見つめた。その視線は、最初の好奇心から、畏敬の念に変わっていた。


ボスは照れくさそうに頭を掻いた。大きな前足で、ガシガシと頭を掻く仕草が、なんだか可愛らしい。


「ちっ...バレちまったか」


「でも、間違いじゃないぞ。この町には危険もある。気をつけて暮らせよ」


今度は素直に、優しい声で言ってくれた。

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