第12話 ニャンコタウンでの最初の試練
同日午後 ニャンコタウン中央広場
町に入ると、住民たちが興味深そうにユイを見つめた。様々な種類の猫たち。三毛猫、白猫、黒猫、ブチ猫。みんな二本足で立って歩いている猫もいれば、四つ足で歩く猫もいる。
「新入りかい?」
声をかけてきたのは、白い毛が美しい中年の雌猫だった。エプロンをして、どこか人間の主婦のような雰囲気。優しそうな目をしている。
「はい、昨日森で保護されました」
ユイが答えると、白猫が目を丸くした。
「あら、とても丁寧な話し方ね。どちらの出身?」
「えーっと...人間界から...」
「人間界!」
周りの猫たちがざわめいた。
「転生者なのね」
白猫が理解したように頷いた。
「私はシロコ。町の食堂をやってるの。何か困ったことがあったら、いつでも食堂に来てね」
シロコは優しく微笑んだ。
その時、町の広場で騒ぎが起きた。
「あれは俺の魚だ!」
「違う、私が先に見つけた!」
二匹の猫が、一匹の魚を巡って喧嘩をしている。爪を立て、牙を剥き、今にも取っ組み合いになりそうだった。
「また始まった...」
シロコがため息をつく。
「ミケとトムの喧嘩は日常茶飯事なのよ」
ユイは二匹の喧嘩を見ていて、ふと気づいた。彼らの心の声が聞こえてくる。
ミケの心の声:『本当はトムと仲良くしたい。でも、素直になれない』
トムの心の声:『ミケに嫌われたくない。でも、どう接していいか分からない』
「あの...」
ユイが前に出た。
「二人とも、本当は仲良くしたいんですよね?」
ミケとトムが驚いて振り返った。
「何を言ってるんだ?」
「私たちは敵同士よ!」
「でも、心の声が聞こえます」
ユイが静かに言った。
「ミケさんは『本当はトムと仲良くしたい』って思ってます」
「トムさんは『ミケに嫌われたくない』って思ってます」
二匹の顔が真っ赤になった。
「そ、そんなこと...」
「嘘だ!」
でも、図星だったのは明らかだった。
周りの住民たちが驚きの声を上げた。
「この子、心が読めるの?」
「翻訳能力者だ!」
「伝説の力じゃないか」