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星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
《After Story》

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七十一話 日下部光葵 両親との別れ

 光葵と影慈は星の代理戦争に勝利し、〝代行者〟となった。


 その後、光葵の両親に別れを告げにいく物語。


 ◇◇◇


「家に帰るのも本当に久しぶりだな」

 光葵は家の前で呟く。


(星の代理戦争に参加して大体三ヶ月半だもんね。ほんとに色々あったね……)

 影慈は感慨深そうに、言葉を紡ぐ。


(そうだな。でも、なんとか最後まで生き抜けてよかった。守りきれなかった人も多かった。それでも、綾島さん、比賀さんは生きていてくれた。それに、俺自身、影慈も生き残れたことが嬉しいよ)


(そうだね。その通りだよ。僕はみっちゃんと一緒に生き残れてよかった! これからも一緒だし!)

 影慈は嬉しそうに話す。


(ああ、そうだな! 俺はすぐ頭に血が上るし、知恵が足りない時も多い。これからも、マジでよろしくな! 影慈!)


(もちろん! これからもよろしくね! みっちゃん!)


 ◇◇◇


 光葵家にて。


「ただいま……」

 光葵は思わず、小さな声で玄関に入る。


 すると、バタバタと足音が聞こえてくる。


「光葵! 帰ってきたのね! もう! 連絡くらいしないさい!」

 母が怒りつつも、嬉しそうに声を上げる。


「お父さん! 光葵が帰ってきたわよ! ねえ、お父さん!」

 母が大声で父を呼ぶ。


「ちょ、母さん。そんな大声出さなくても……」


「何言ってるの、光葵。息子が帰ってくることが、どれ程嬉しいかも知らずに!」

 母は少し怒っている。


 光葵は罪悪感がだんだんと湧いてくる。

 今から両親に話すことが、〝最後のお別れ〟なのだから……。


 ◇◇◇


 父も揃ったことで、リビングで話をすることとなった。


「光葵、本当に久しぶりだな! 二か月半くらいだぞ。全く! まあ、約束したように毎日無事かの連絡はくれてたから、よかったけど、父さんも母さんもすごく心配だったんだぞ!」


 父は怒っているというより、息子と会えて嬉しいということが伝わる表情だ。


「ごめん、父さん。母さんも。本当にごめん。でも、俺のことを信じて送り出してくれて、ありがとう!」


 光葵は今までずっと思っていたが、言えていなかったことを言葉にする。


「本当に心配ばかりかける子なんだから……。でも、帰ってきてくれてお母さん嬉しい。若菜のこと、心の整理はついたの……?」


 母の表情から、悲しみを抑えようとしているのが見て取れる……。


「若菜のことは。その…………。」


 光葵が自分のせいで死んでしまったと伝えようとするのを影慈が止める。


(みっちゃん! それは違う! 絶対にみっちゃんは悪くない! それに、今日はご両親にお別れを言いにきたんでしょ? ここで言う話じゃない……)


 影慈が悲しげに光葵の考えを止めてくれる。


(悪い、影慈。俺はまだ、やっぱり自分を責めちまう……。でも、それを今言うのは違うよな。……ありがとな。ちゃんとお別れを言うよ)


「母さん……。俺達もまだ気持ちの整理がついてないんだ。光葵にそんなこと聞くのは酷だ。気にするな光葵! お前が帰ってきてくれるだけで、父さんは嬉しくて……嬉しくて……」


 父は話している途中で涙が止まらなくなっている。


「お父さん……。そうね……。私も同じ……。光葵帰ってきてくれて、ありがとう……」

 母も大粒の涙をこぼす。


「……父さん……母さん……。俺……俺……。ごめん。ごめんな……」

 両親に光葵は抱きつく。


「いいんだ。光葵。お前がいてくれれば。本当にそれだけでいい……。父さんはずっと味方だ。安心しろ光葵……」

 父は何度も光葵の頭を撫でる。


「お母さんもよ……。お母さんは光葵が大事。ずっとずっと味方よ……」

 母は身体を何度もさすってくれる。


「うっ……。父さん……母さん……。俺は……。……ありがとう父さん。……ありがとう母さん」


 ダメだ。涙が止まらない。俺はこんなに愛されてたんだな……。


 ◇◇◇


 十分程、家族三人で泣き続けていた。


「父さん、母さん。実は俺が帰ってきたのはあることを伝えるためなんだ……」

 光葵の心は潰れてしまいそうな程痛む……。


「伝えるため……? 何を伝えたいの?」

 母は純粋に尋ねた様子だ。


「俺は……人間じゃないんだ。いや、正確には人間じゃなくなった……。人間の一次元上の存在になったんだ」


「人間じゃなくなった……? 何の冗談だ? ここにいる光葵は俺達の息子じゃないか。何も変わってない。仮に人間じゃなくたって俺達はお前を愛し続けるぞ……?」


 父が本気でそう思っていることが伝わってくる。表情から、声から、視線から……。


「う……。クソっ。ダメだ。また泣いちまいそうだ……。俺は……俺は……。しっかりしろ俺!」

 光葵は手で頬を叩く。


「光葵! やめなさい!」

 母が本気で心配して止めようとする。


「母さん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。やっぱ、いざ伝えるとなると、気合いるわ……。……人間の一次元上の存在になった証拠を見せるよ。《氷魔法――コップ創出》」


 光葵の右手には氷でできた美しいコップが出現する。コップは机に置く。


「これは……なんだ? マジックか?」

 父は単純に驚嘆の声を出す。


「マジックじゃないよ。他にも色々使える。《火炎魔法》……。《生成魔法――ライター》」

 右手から小さく炎を出す。そして、左手でライターを作る。


「……光葵。本当に人間じゃなくなっちゃったの……?」

 母が悲しみと驚き半分といった表情で尋ねる。


「そう。詳しい内容は言えないんだけど、地球を守るための戦いに勝ったんだ。それで、俺は人間の一次元上の存在になった。今日、帰ってきたのは、父さんと母さんの『記憶』と『俺と若菜の痕跡』を消しにきたんだ……」


 自分でも分かる。俺は今とんでもなく暗い顔をしているんだろう……。


「光葵……! お前何言って……」父が焦って声を上げる。


「そうよ! なんで、記憶を消すなんて言うの⁉ 私達はそんなこと望まないわ!」

 いつも温厚な母が珍しく、声を荒げる。


「俺は最初から、あなた達の子どもじゃなかった。だから、悲しまないで……。俺は父さんと母さんの子どもでよかった……」


「ダメだ。……ダメだ! そんなこと、父さんは許さない! 誰が光葵にそんなことやらせたんだ! 俺が何とかしてやる! だから、そんなこと言うな!」


 父は本気で何とかしようと思っているのが伝わってくる。


「誰かがやらせたんじゃない。俺が選んだことなんだ。心から、魂から、こうしたいと思って選んだことなんだ……」


「そんな……。光葵。いやよ。私は。母さんはあなたのお母さん! 一生、ずっとお母さんなの! 勝手に記憶を消す、痕跡を消すなんて許しません!」


 母は本気で怒っている様子だ。


「そんなこと……言わないでくれよ……。父さん……母さん……。俺だって、嫌だよ。父さんと母さんに忘れられるなんて……。でも、俺も若菜もいなくなるなんて……。そんなの、そんなの悲し過ぎる。俺が、俺と若菜の記憶を消したら、ここ数カ月の不幸は消えてなくなる。これ以上、悲しむ必要もなくなるんだ……」


「……光葵。あまり親を舐めるなよ……。父さんも母さんも、光葵と若菜がいない世界なんて考えられない。仮に、光葵が人間じゃなくなったって、『俺達の前から消える』としたって、光葵と若菜のことを忘れるくらいなら、死んだ方がマシだ!」


 父が真剣に目を見つめて言葉を紡ぐ。


「そうよ! お父さんの言う通り! お母さんは光葵も若菜も大好き。あなた達のいない世界でなんて生きていけない。私達の近くにいられないとしても、記憶を……痕跡を消したりしないで! お父さんもお母さんもあなたのことを忘れたり絶対しないから!」


 母は涙を流しながら、切実に訴えかける。


「父さん……母さん……。……俺と若菜の記憶と痕跡を残すことは、辛いことだと思ってた。でも、二人にとっては記憶と痕跡を消される方が辛いの……?」


「当たり前だ! 光葵。お前は何があっても、父さんと母さんの子どもなんだから!」

 父が叫ぶように声にする。


「お母さんも同じよ! 光葵が記憶を消したって、忘れたりしないんだから!」

 母も声量を上げる。


「……俺は……。俺の記憶と若菜の記憶を残すことは、わがままだと思ってた……。でも、違うのか……。むしろ、俺と若菜の記憶を消すという考えがわがままだったのか……」


「そうだぞ、光葵。父さんと母さんは光葵と若菜と過ごした日々がとても大切だ。その日々を奪うなんてことは絶対しないでくれよ……」


「私も光葵と若菜と過ごした日々が大好き。二人共お腹にいる時から知ってるんだから。仲良しな二人が大好きなのよ……」


「……ありがとう。ありがとう……。俺と若菜のことを愛してくれて。こんな身勝手な俺のことを愛してくれて……」


 父と母が光葵を再度抱きしめる。


「光葵、若菜。お前達は最高の子どもだ。誰が何と言おうとそれは変わらないぞ」


「お母さんとお父さんの大切な光葵と若菜だもの。光葵も忘れないでね。お母さんとお父さんのこと……」


「忘れない……。絶対忘れないよ……。ありがとう。俺と若菜の親になってくれて……」


 ◇◇◇


 光葵は忘れることはない。代行者となったとしても、父と母に愛されていることを。そして、大好きな妹がいたことを……。



 光葵が親を思う気持ちがあるように、親が子を思う気持ちもあります。


 代行者となった光葵ですが、「親との縁」を切らずに「一次元上の存在」となれたことで、「人間として生きた時間をポジティブに実感し続ける」ことができます。


 この世界で生きることに、意味がないことなどないのだと思います。きっと……。


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