六十六話 最終決戦②
洋館の敷地内の大木の陰で光葵は《生成魔法×回復魔法――自動人体生成》を使いつつ、綾島にも回復魔法を使い回復させる。
綾島自身も回復魔法を使う。
「ごめん、日下部君」目に戦意は宿ったままだが、少し穏やかな声だ。
「いいよ。でも、清宮は何で俺達の行動が分かるんだ?」次の瞬間〝意識が影慈に偏る〟。
「あまり時間もないと思うから、手短に話すね。清宮は明らかに以前とは違う。魔眼と額に第三の目があった。ここからは推測だけど『未来視』と『思考伝達』が使えるんじゃないかな? 清宮の未来視で知れる未来を虎西にも共有している。二人共僕らが行動する前に回避、ピンポイントでの攻撃準備をしてる感じだった。まだ攻略方法は浮かんでないけど、少なくとも『虎西』を何とかしないと清宮に致命傷は負わせられない……」
「その推測だとあいつらの動きにも納得がいくね。じゃあまず虎西を殺さないと」綾島が呟く。
「そうだね……。あの防御を超えるには僕と綾島さんの一番攻撃力のある複合魔法を当てるしかない。多分防御力を超える出力だと『防御じゃなくて躱す』と思う。だから躱せないように隙を作る必要もある」影慈は淡々と情報を伝えていく。
「オーケー……。私の魔法で隙を作るよ……」綾島は戦闘モードに戻っていく……。
そこに二人が水龍に乗りながら話しかける。
「ここにいたのね。さあ、再開しましょう?」清宮が話しかける。
「見下ろすな……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》……!」綾島は〝地面と空中〟を反射し駆けるように超光速移動する。
「まだ速くなるのね……」清宮は四頭の水龍で綾島を攻撃する。そして〝予見〟したと思われる位置に《高圧穿孔》《強化水刃》を放つ。
「カウンターが分かってるなら……。《反射魔法×光魔法――反照》!」綾島は〝光る反射フィールド〟を右手の前に展開し反射して清宮に返す。
「《金帝魔法――構築、魔金属の盾》!」虎西が前に出て綾島の攻撃は防がれる。
綾島が隙を作ってくれている間に、光葵は清宮の〝死角〟に回り込む。「《闇魔法×風魔法×火炎魔法――黒風炎刃》……!」
しかし、清宮はそれすら予見していたようだ。いや、正確には魔眼の視野が非常に広く〝死角になり得ていない〟のかもしれない。
「《合成魔法》《水魔法×付与魔法――強化水盾》……」清宮は即座に黒風炎刃を相殺する……。
「十分だよ……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》……」綾島は静かに呟く。《光彩陸離》で水龍に乗る二人に接近する。「《光魔法――遍く浄化の光》……!」両手から全てを浄化し無に帰す聖なる光が放たれる。光は清宮と虎西を包み込む。
数秒後、水龍は完全に浄化され消え失せる。
しかし、「《金帝魔法――構築、魔金属の砦》……」虎西が攻撃を防いでいた。ただし、綾島の高出力魔法は魔金属の砦を半壊させる。
「虎西さん! 更に強力な攻撃がくるわ!」清宮が叫ぶ。
「清宮さんは離れてください……!」虎西が清宮を突き飛ばす。
「いくぞ、綾島さん! 《複合魔法》《灰燼砲×破邪の砲弾――相反する混沌の砲撃》……!」闇の〝黒〟と光の〝白黄色〟が斑に交じる砲撃が虎西に猛烈な衝撃を与える。
「ゴハッ……。やりますね……」虎西は甲冑が破損して、白髪の壮健な男が鋭い眼光を見せる。しかし、すぐに魔金属で甲冑が構築され顔は見えなくなる。
「虎西さん、回復するね。《付与魔法×回復魔法――高速回復》」清宮が虎西を高速で回復する。
光葵と綾島は高出力の魔法の連発ですぐに動けず、回復していく虎西の様子を見ることしかできなかった。くっ……このままじゃ体力もマナも削り切られる……。
「あなた達は強いわ……。でもここまでね……」清宮は穏やかに語りかける。
「俺はまだ諦めてない……!」光葵はマナを整え、次の攻撃の準備をする。
「そう……。でもそろそろ終わりにしましょうか」清宮が穏やかな殺気を発する。
次の瞬間、虎西の左肩が〝裂断〟され吹き飛ぶ。虎西の呻き声が響き渡る……。
「ちっ、一撃で仕留めるつもりだったんだがな。よう、日下部、綾島さん。助っ人登場だ」
比賀が軽く口角を上げる。
だが、見た目は痛ましい。服の隙間から全身に包帯を巻いているのが分かる。右眼には黒い眼帯をしており、どことなくカイザーに似ている……。
「比賀さん……⁉ 生きてたのか!」光葵は嬉しさと驚きが入り混じった声を上げる。
「比賀さん……。よかった……」綾島も静かだが同じような口調で声を出す。
「虎西さん、大丈夫⁉」清宮は虎西に問いかける。
「俺は大丈夫です」虎西は答えた後に、魔金属で〝義手〟を作る。
清宮は比賀の方を見据え「思っていたよりも随分早い回復だったのね……」と声を出す。
「ああ、あんたに岩山で頭撃たれた時は死ぬかと思ったよ。最期にカイザーがマナを少し渡してくれてて助かった。水の弾丸を何とか乱生魔法でずらせた。右眼は持っていかれたけどね」比賀は左眼で清宮を強く睨み付ける。
「でも、魔眼で捉えきれない位置からどうやってきたのかしら? 警戒はしてたのに」清宮が不思議そうに声を出す。
「簡単な話さ……。《乱生魔法――乱空移動》で強引に二百メートル程一気に移動した。あれだけ爆音がしてたら、場所も分かる。それに因果律ってのもあるのか『呼ばれた気』がした」
「そう……。それじゃあ、二対三で再戦ね……」清宮の声に焦りは感じられない。




