六十二話 どす黒い瞳
光葵と綾島はアジトに戻り、休息をとっていた。
そして、二日経ってもカイザーにも比賀にも連絡が取れない状態が続いた……。
「おかしい……。カイザーにも比賀さんにも連絡が取れない。何かあったのか……?」光葵は最悪の事態も考え声が低くなる。
「そうだよね……。あの二人はたしか少し離れた岩山で修行するって言ってた。見に行ってみた方がいいかも」綾島が心配そうに話す。
「そうだな。でも、まだ俺も綾島さんも回復しきってない。今敵と遭遇したら負ける可能性が高い……。あと一日回復だけに専念しよう。早く行きたい気持ちはあるけど……」
「日下部君の言う通りだと思うよ。今日しっかり回復して明日の朝に見に行こう」――。
◇◇◇
翌日、完全に回復してはいないが、光葵と綾島は岩山に来ていた。
「守護センサーが反応すれば二人かもしれない。一緒に探して回ろう」光葵はそう言い、半日かけて二人を探す。しかし、反応は無かった……。
「別の場所にいるのかも。でも、もしかしたら……」綾島は悲しく呟く。
「あの二人も強い。きっと生きてるはずだ! 俺達ができることを今はしよう。体力を回復させて、敵を倒せるだけ強くなろう……!」光葵の言葉に綾島は静かに頷く。
「そうだね……。みんなの仇は私が取る……」綾島からは強い覚悟を感じる。
◇◇◇
その日から八日間は回復ができ次第、光葵と綾島で修行した。
光葵は《理の反転》を使えるように何度も反復練習をする。結果、実戦で使える程度の溜め時間、マナ量での運用ができるようになった。
綾島は少し人が変わったような雰囲気になっていた。〝自分よりも復讐〟を優先しているような印象だ。時折、一人で修行がしたいと言い、少し離れた場所で修行することもあった。
――「今のままじゃまた負ける……。仲間に迷惑をかけてしまう。何より、みんなの仇が取れない……」綾島の脳裏にルナ姉、頂川、朱音の顔が浮かぶ。
「私は至王を殺すために修行してきたけど、違うね……。殺すべきは『自分』だ……。今イメージが湧いた魔法なら、『自分も至王も』殺せる……」綾島の瞳にどす黒い光が宿る……。




