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星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
星の代理戦争 後編

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五十四話 修行の成果と因縁の対決

 その日以降、一週間は修行の時間が主となった。ここ一週間、カイザーと比賀は二人で集中して修行したい技があるとのことで、別行動をしていた。


 ――七日目。今日も光葵、頂川、綾島、朱音でアジトから少し離れた山で修行していた。

「全員かなり強くなったんじゃないか? 動きのキレも上がってるし、魔法の出力も数週間前とは大違いだ」光葵はみんなに声を掛ける。


「おう! 綾島さんとの修行の後から『知覚力、感覚』が上がって今までとは見える世界が変わったみてぇだぜ。魔法の扱いも上手くなった気がするしな」

 頂川が快活な笑顔を見せる。


「だね。頂川君と修行できたのは本当によかった。私も見える世界が変わったし、魔法の出力調整、扱える魔法の種類も一気に増えたよ」綾島は穏やかに微笑み返す。


「いいね! みんな強くなってる! 私も前よりマナ出力の調整が上手くなったし、魔法の種類も増えた。戦力になれるように頑張るね! そういえば、光葵は『新しい種類』の魔法の練習してるんだよね! どんな感じなの?」朱音が明るい表情で尋ねる。


「《想像的生成》の方は実戦で使えるくらいになったんだ! 『攻守』と強い魔法が使えるようになったからよかったよ。あとは《理の反転》だな……。この魔法は扱いがかなり難しくてな……。実践で使える程ではないんだ……」光葵は後頭部に手を回す。


「《理の反転》は前に光葵に教えてもらったけど、理解するのも難しかったよ……。少しずつ感覚を掴んでいければいいと思う!」朱音が笑顔で言葉を返す。


「そうだな……。早く強くなりたいけど、焦りは禁物だよな。今日のところは修行はこれくらいにして、休んだらアジトに戻ろうか」


 全員賛成とのことで、持ってきていた弁当を食べてアジトに向かい戻っていく。



 みんなで話をしながら帰っている途中で守護センサーが反応する。全員の顔に緊張が走る。


「商店街の方だな。あそこはもう寂れてるから人はいないだろうな」頂川が声を出す。


「……行くってことでいいか?」光葵は短く全員に問いかける。


「そうだね……。今私達は四人いる。勝率は高いと思う」綾島が賛成し、他の者も同意する。


(影慈いこうか)――〝人格共存〟左右の瞳は琥珀色、陰のある黒へと変わる――。


 広いが寂れている商店街に着くと、そこには三人の敵がいた。美鈴、志之崎、至王だ。


「会いたかったよ、お兄ちゃん達。すぐ殺してあげる……」美鈴が狂気じみた瞳を向ける。


「美鈴、無茶だけはするなよ。俺もいる……。一緒に仇を取るぞ」志之崎は静かに話す。


「フハハ。どうやら、因縁があるようだな。どうする? 分断するか?」至王が問う。


「あの天パは確実に殺したい。俺の魔法で分断する」志之崎の声が殺意を帯びる。


「分かった。そこは任せる」至王は短く答える。


「《風魔刀――駆天風魔くてんふうま》……!」志之崎の詠唱と共に、縦五メートル程の巨大な風の斬撃が飛んでくる。


 凄まじい速さの斬撃で俺達は二組に分断される。光葵、頂川組と朱音、綾島組だ。


「まずはお兄ちゃん達からだね……」

 美鈴の《インビジブルゴーレム》が光葵と頂川を商店街の別の区画へと一気に押し出す。志之崎もそこに続く。


「ぐっ……。前よりも出力が上がってる。頂川! 複合魔法で弾くぞ!」


「おう! いくぜ! 《複合魔法》《闇魔法×雷魔法――黒雷こくらいの鉄拳》!」

 光葵達の同時に放つ一撃でインビジブルゴーレムを弾き飛ばす。そして、地面に着地する。


「あの見えない攻撃は本当に厄介だな。しかもパワーが上がってる」光葵は思う。末恐ろしい少女だ……。


「日下部……。修行した俺の技ならもしかしたら知覚できるかもしれないぜ。《覚醒のいかずち》!」身体中から荒々しく霆が迸る。

「神経レベルで雷を使い感覚を研ぎ澄ました……。見えるぜ、少女の使うデカいゴーレムがよ……」頂川は静かに呟く。


「金髪のお兄ちゃん、インビジさんが見えるの? すごいね」美鈴は驚いてはいるが冷静な声だ。


「綾島さんとの修行の成果だな。日下部、嬢ちゃんは俺が相手する。侍を頼む」


「オーケー。任せろ。《闇魔法――闇霧》……!」光葵は闇霧を圧縮し巨大な砲弾にして志之崎に放つ。

 志之崎は《反射魔法》を足と地面に使い素早く躱したようだ。


「美鈴の魔法が見えるなら、二対二のまま戦う……」志之崎は鋭い視線を送る。


「それでも構わない……。どちらにせよ、お前は俺が相手する。《合成魔法》《氷刃、炎刃》……!」光葵は氷刃、炎刃を織り交ぜながら攻撃を続ける。


「《風魔刀――鎌鼬かまいたち》!」志之崎は大鎌の如き風の斬撃にて相殺する。そのまま互いに魔法の応酬が続く……。


 ◇◇◇


 一方、頂川と美鈴も互角の戦いをしていた。


 頂川はインビジブルゴーレムが六メートル程あり、腕が六本、足は二本あることまではっきり知覚できていた。


「嬢ちゃん。やっぱすげぇな。速いしパワーが強ぇぜ……」頂川は軽く口角を上げる。


「そう? お兄ちゃん達のおかげだよ……?」美鈴は頂川の話を意に介さず攻撃を続ける。


「《雷魔法――疾風迅雷、雷牙》……!」頂川は速度上昇を行い、ゴーレムの攻撃を躱し、かつ雷牙でダメージを与える。

「……色々あったのは分かってる。だが、俺も負けられねぇ! 《合成魔法》《雷魔法×貫通魔法――拳打雷貫けんだらいかん》……!」雷貫を纏った拳がゴーレムの腕に激突し、一本の腕を吹き飛ばす。


「インビジさん……! すぐ治してあげるからね……」美鈴は集中してマナを練っているようだ。吹き飛んだゴーレムの腕が破片も含め、元の腕に戻っていく……。


「おいおい……。治すこともできるのかよ……」頂川の口から驚きの声が漏れる。


「金髪のお兄ちゃん。強いね。美鈴も本気でいくよ……」

 強いマナの動きに合わせて、薄い茶色のロングの髪が風に吹かれるように激しく揺れる。そして、ゴーレムは今までと比べ物にならない程に強化される。


「ハッハッハ! 離れてても分かるぜ。今までのゴーレムとは別物みてぇだな。身体の芯からゾクゾクするぜ……!」頂川は正直に感じたことを言葉にする。


「インビジさん、殺して……!」美鈴が叫ぶ。

 直後、先程の倍以上の速さでゴーレムが頂川に迫り、六本の腕でガトリングのように連続で拳を振るう。


「速ぇな……」頂川は間一髪で拳を躱し続ける。

 しかし、ゴーレムが地面ごと蹴り上げた〝大地〟が頂川を覆う。


「生き埋めにでもする気か……!」《疾風迅雷》を強化し、何とか避ける。

 刹那、思わぬ攻撃が襲い掛かる。地面からゴーレムの腕が出てきたのだ。


「腕の長さを変えることもできるのか……?」

 躱しきれず頂川は足を掴まれそのまま何度も地面に叩きつけられる……。


「ゴハッ……!」頂川の身体中から血が撒き散らされる。

「このままくたばれるか……! 《合成魔法》《雷魔法×貫通魔法――雷神鎚らいじんつい》……!」

 貫通魔法の威力を込め、雷で作った一メートル程のハンマーでゴーレムの腕を打ち砕く。雷鳴のような轟音が辺りに響き渡る……。


「やってくれんじゃねえか……!」頂川はギラついた目で美鈴とゴーレムを見据える。


「あれだけ叩きつけたのに動けるんだね」

 美鈴が話している間にもゴーレムの腕は修復されていく。


「ハッハッハ! 俺は頑丈だからな……。それに、ずっと修復することはできないだろ?」とはいえ、あまり長く戦うのは厳しいな。覚醒の霆もあまり長い時間は維持できない……。


「美鈴のマナが無くならない限りね……」美鈴の狂気に駆られた瞳は妖しく光る。


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