四十一話 頂川救出作戦②
一方その頃、影慈は美鈴と志之崎を《闇魔法――闇霧》を主に使うことで相手にしていた。
少女と自分の周辺に闇の霧を漂わせることで〝見えない何か〟の輪郭や場所が把握できる。闇魔法のおかげで過去にこの二人と戦った時よりも相当に戦いやすくなっていた。
「美鈴、奴は強い。普通に戦っていたら押し切られる。奴を上から覆うよう配置できるか?」
「了解! いくよ!」
「何か今までと違う攻撃をしようとしてるね……」影慈が呟くとほぼ同時に、志之崎が疾風の如き速さで突撃してくる。「《合成魔法》《氷刃》!」無数の氷の刃が志之崎に斬撃を浴びせる。
志之崎はそれらを《風魔刀》で複数の斬撃を放ちながら相殺する。そして、《反射魔法》を自分の足と地面に使用し、倍速で加速したようだ。その勢いのまま一回転し技を放つ。
「《風魔刀――旋風風魔》……」風魔法に自身の回転力を加えた〝竜巻〟が影慈に迫りくる。
「竜巻か……。この方向だと躱すと金髪君達のいる廃工場だ。壊すしかないね。《合成魔法》《火炎魔法×闇魔法――灰燼の浸食》……」
ゆらゆらと揺れる黒炎が右手から燃え上がる。それを竜巻に向けて爆音と共に放つ。黒炎は竜巻に吸い込まれ、一気に竜巻を黒一色に染める。竜巻は徐々に黒炎に浸食されていき、だんだんとサイズが小さくなっていく。
その間に、志之崎は影慈に刃が届く所まで来ていた。
「すごい魔法を使うんだな……。だがここからは近接戦闘といかせてもらう……!」眼光に刀のような鋭い光を奔らせる。
「僕は近接戦闘が苦手なんだ。でも、負けない」
右手には灰燼の浸食を燃やしたまま、志之崎の方を見据える。周囲が〝見えない何か〟で覆われつつあることに気づきながら――。




