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星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
星の代理戦争 後編

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四十話 頂川救出作戦①

 同時刻、商店街を光葵、朱音、ルナ姉は歩いていた。


「朱音よかったのか? 学校しばらく休学にしたんだろ?」光葵は朱音の方を見る。


「いいよ。みんなが危険な目に遭うのが分かってるなら戦いたいし」朱音は真剣な表情だ。


「朱音ちゃんは優しいわね。参加者じゃないのに一緒に戦ってくれるんだもの」ルナ姉が喜び半分、心配半分といった表情をする。


「そんな顔しないでくださいルナ姉。私が戦いたいって決めたことだし!」朱音は明るく答える。


「そう……。ありがとうね。朱音ちゃん」ルナ姉は少し微笑む。


「俺からも、改めてありがとな朱音」光葵は素直に感謝を口にする。


「もう、光葵まで……。戦いの怖さは分かってるつもりだし、覚悟はしてるよ」


 その時光葵のスマホに二件の通知が入る。内容を見て思わず立ち尽くす。


「どうしたの? 光葵?」朱音が異常を感じて問いかけたようだ。


「……頂川が悪魔サイドの奴に監禁されてるみたいだ……。俺に『一人』で来いとメッセージに書いてある」

 添付された写真には、椅子に縛り付けられており、両腕は折れ、右足から血を流す頂川の姿があった。


 まずい……動悸がする……! 思考がまとまらない。〝あの時〟と同じようなことには絶対になって欲しくない。若菜の死のトラウマが生々しく甦る。気が狂いそうだ…………。


(みっちゃん! 気持ちは痛い程分かる。ここは僕と主人格交代して! 作戦もあるから)


(……影慈……すまない)


 ――〝主人格交代〟瞳が琥珀色から陰のある黒へと変わる。


「光葵! 大丈夫? 顔真っ青だよ」朱音が心配そうに顔を覗く。


「一度座りましょ。急な話だし混乱するのも無理ないわ」ルナ姉が椅子を指さす。


「……ごめん。二人とも。僕は大丈夫……。それより、金髪君が危ない。三十分以内に来ないと殺すって書いてある。指定された場所は思ったより近い。多分二十分あれば着ける。それと、作戦があるんだけど聞いてくれる?」〝影慈〟は少しふらつきつつ言葉を紡ぐ。


 不意に口調が変わり話し始めたためか、二人は顔を見合わせ驚いているようだ。

「光葵、そんな喋り方だっけ? 『僕』とか言ってるし」朱音が驚きのあまり質問する。


「え……? あ……。作戦考えてたら口調変わっちゃったかな? 策士モード的な……」影慈は少し冷や汗をかきながら答える。


「う~ん、まあ世の中色んな人がいるし、日下部ちゃんが話しやすい話し方で大丈夫よ! それにあまり時間も無いでしょう?」ルナ姉が優しく微笑みつつも話を進めてくれる。


「ですね。作戦なんだけど、朱音ちゃんと『ルナ姉の分身』は守護センサーに反応しないことを活用する。僕がまず敵の言う通り一人で向かう。朱音ちゃんに隙を見て《炎帝魔法》で敵に攻撃してもらう。その隙を衝いて僕が金髪君と敵を分断する。ルナ姉の分身には金髪君の保護をお願いしたい。朱音ちゃんは僕と一緒に戦って欲しい。あくまで金髪君を助けるための作戦だから、勝ちにいく必要はない」一気に作戦を伝える。


「なるほどね。守護センサーに反応しないことを利用するのね」ルナ姉が感心した声を出す。


「ルナ姉、分身の『操作可能距離』って最大どのくらいですか?」


「前に試してみた時は、五百メートルは最大離れられたわ」


「じゃあ、十分守護センサーの範囲外から動けるね。作戦については二人共どう思う?」


「いいと思うよ! 隙を衝ければ頂川君を分断できる可能性はあると思うし」朱音が答える。


「私も賛成よ。それにこれ以上議論してる程時間も無いしね」ルナ姉が少し焦って返答する。


 ◇◇◇


 ――指定された廃工場に着く。

 そこには三人の敵、傷だらけの頂川が椅子に縛られていた。


「お前が日下部か?」志之崎が淡々と問いかける。


「そうだ。言われた通りに来たんだ。金髪の彼を解放して!」影慈は睨みながら声を出す。


「勘違いするな。お前が来たら解放するなどの約束はしてないだろう? 幸一郎、周りを確認してきてくれ」

 幸一郎はその言葉を聞き、外に出て周囲を確認しに行く。


「さて本題だ。この金髪を傷つけられたくなかったら、抵抗はするな。ルール上戦わずに降伏が許されていないからな。ある程度攻撃は受けてもらう。その後、降伏しろ」

 志之崎の目と声には何の慈悲も感じさせない。言われた通りにしなければ、頂川を殺し、お前も殺すというのがひしひしと伝わってくる。


「……そんな話、素直に受けると思うか?」影慈はやや低い声で返答する。


「金髪の左足も使い物にならなくして欲しいならその調子で話せ。嫌なら言う通りにしろ」


 その時、幸一郎が戻ってくる。

「シノさん、周辺には人が三人いた。念のためセンサーに反応するか五十メートル圏内に入ってみたけど反応は無かった。本当に一人で来てるみたいだよ」


「そうか。お前の覚悟、称賛に値する。悪いな、避けるなよ。最低限の痛みにしてやる」


 次の瞬間、影慈のスマホのバイブが鳴る。……今からが伸るか反るかの戦いだ。



 廃工場の窓際から密集する敵に向けて《炎帝魔法――焔の矢》が窓と壁を貫き放たれる。

「危ない、みんな!」美鈴が叫び《使役魔法――インビジブルゴーレム》で焔の矢を防ぐ。

 防ぎきれなかった焔が周りに爆散し、工場内の温度が一気に上がる。


 影慈は〝バイブによる知らせ〟と同時に頂川の周りに《合成魔法》《氷黒壁》を創出させた。


「お前、最初からこのつもりで……!」志之崎が怒りと焦りの混じった叫びを発する。


「僕はこれ以上仲間を失いたくない……。《風魔法――高速移動》……!」

 敵三人との距離を一気に詰めて、三人同時に《闇魔法》で廃工場の外まで押し出そうとする。しかし、幸一郎には〝ワープ〟で躱されたようだ。結果的に美鈴と志之崎を、闇魔法の大波で、廃工場の壁をぶち破り外にまで押し出す。


「くっ、一人逃したか……。でも、この二人は僕が相手する……!」――。


 ◇◇◇


「君の相手は私達だよ!」朱音がそう言い〝ルナ姉の分身〟と共に幸一郎の前に立ち塞がる。


「君達参加者だよね? なんで守護センサー反応しないの?」幸一郎は首をかしげる。


「悪いけど、答える気はないよ。ルナ姉いこう!」


「ええ、この仮面ちゃんを倒して頂ちゃんを助けましょう!」ルナ姉も気合を入れる。


「……それじゃ、今から幸一郎のハッピーマジックショー開演といこうか!」透き通る声が響く。


「まずは、頂川君から離れてもらう! 《炎帝魔法――焔の魔球》!」朱音は燃え盛る魔球を幸一郎へ放つ。


「すごいマナ出力だね《空間転移――転移返し》」詠唱を終えると、焔の魔球の前に大きなワープホールができる。焔の魔球はワープホールに吸い込まれた後、朱音達の後ろから出現する。


「朱音ちゃん、危ない!」ルナ姉が朱音に飛びつき回避する。


「……ありがとう、ルナ姉。仮面の人の固有魔法《空間転移》なんだね」朱音が静かに声を出す。


「多分、攻撃を転移させることもできるし、自分も転移できるんじゃないかしら」


「あら、躱されちゃいましたか……。ショーはまだ始まったばかりです。ぜひお楽しみください」

 軽くお辞儀をしつつ、幸一郎は「《水魔法――水製道具アクアツール、カッティングトランプ》……!」と言い、水のトランプを自分の右下に投げ込む。すぐにワープホールが出現し吸い込まれる。そして、朱音とルナ姉の周辺にワープホールが複数出現する。


 ワープホール間を何度も高速でカッティングトランプが移動し、朱音とルナ姉に斬撃のダメージを入れる。


「痛ったい……。いい加減止まって!《炎帝魔法――焔の渦》!」朱音はカッティングトランプを相殺する。


「マナ出力の高さには目を見張るよ……。でもそんなに連発して大丈夫? 僕の《転移手品(トリッキーワープ)》はまだまだ続くよ」ハッタリなのか本心なのか読めない口調で話す。


「朱音ちゃん。あまり大技は使わない方がいいかもしれないわ。仮面ちゃんの空間転移の消費マナがどの程度かは分からないけど、一つの技をトリッキーワープで再利用できるとなると、マナの残量負けする可能性がある」ルナ姉が冷静な声で分析する。


「そうだよね……。どうしよう。近接戦に持ち込んでもいいけど、ワープされたらすぐに頂川君の所まで戻っちゃうだろうし……」朱音は真剣な表情で考える。


「とりあえず、近接戦に持ち込んでみましょうか。どのみち遠中距離で戦っていても、ワープで攻撃を返されたら厄介だわ。二人で一気に距離を詰めてましょう」ルナ姉が提案する。


「オーケー! 私は焔で一気に移動するから、ルナ姉も続いて! 《炎帝魔法――加速移動》……!」加速移動しつつ、焔の矢を複数放ちながら、幸一郎との距離を詰めていく。


「近接戦ですか……」幸一郎は焔の矢を転移返しで二本朱音に向けて放つ。


 朱音は加速移動でそのまま焔の矢を避け、幸一郎に詰め寄る。その刹那、幸一郎は〝片目を隠した〟かと思うと、一瞬でルナ姉の背後にワープした。


「まずはあなたから。《水製道具――洋剣サーベル》」ルナ姉の背中を水の洋剣が貫く――。


 と思われた瞬間、ルナ姉は左右に二人〝分身〟した。水の洋剣を躱しながら、二人のルナ姉は雷魔法を纏った拳を幸一郎の顔面に打ち込む。


 幸一郎は咄嗟に「《水製道具――シールド》」にて盾を両手に作る。

 しかし、拳の勢いは殺しきれず、左右の顔面に拳がめり込む。仮面が割れる高音が工場内に響く……。


「あはは……。やるねぇ」額から血を流す、二十代程の優しげで眉目秀麗な青年が顔を出す。


「あら、イケメンねあなた……」思わずルナ姉が言葉を零す。


「そりゃどうも。あなたも十分イケメンですよ。戦い方も美しい」幸一郎は、お世辞ではない口調だ。


「さてと」そう呟くと、幸一郎は頂川、朱音のいる方を振り返り、片目を隠す。瞬間、朱音の真後ろにワープする。「金髪の彼から離れてね~」

 朱音が《炎帝魔法》を放とうとしている中、朱音を包む程の大きさのワープホールを発生させ、〝ルナ姉二人〟の中央にワープさせられる。発動途中だった、炎帝魔法は止めきれずにその場で暴発する。爆音が鳴り響く……。


「ごめん。ルナ姉……。大丈夫?」朱音が心配から、大きめの声を上げる。


「大丈夫よ! 私の《水魔法》である程度相殺したし。それにイケメンちゃんの魔法の特徴も何となく分かったし」ルナ姉二人は微笑む。


 朱音は「特徴って?」と素朴な顔で尋ねる。


「手短に言うわね。おそらく『ワープ先は目に映る範囲に限られる』、『自分自身がワープする時は片目を隠す必要がある』。つまり、方向転換を伴うワープをするには『顔を動かす』必要があり、隙が生まれる。まあ、強力な魔法であるのは変わらないけどね」


「なるほど。頂川君から離すことにこだわらず、隙を作って倒しちゃう方がいいかも……?」


「そうね。倒す気でいく方が戦いやすいと思うわ。私がイケメンちゃんのワープ先を限定する。そこを朱音ちゃんの一撃で倒して」――。


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