三十一話 炎帝
「なっ! お前も参加者だったのか……⁉」伊欲の驚いた声が聞こえる。
「それ以上、光葵を傷つけないで!」そこには涙を流した朱音がいた――焔を纏いながら。
「朱音……お前も……?」だが守護センサーは反応していない。どういうことだ?
「私も分からない……。でも、目の前で戦いが起こって、光葵が守ってくれてるのを見てると身体の奥から『朱雀様』の声が聞こえた。力を貸してやろうって」
「朱雀……? 危ない朱音!」伊欲が突っ込んできている。
「よく分からないが、嬢ちゃんも危険人物みてぇだな。悪いが魔石の残数も気がかりでよ……。手早く済ませるぜ……!」スリングによる投擲、魔石放射が放たれる。
「何度も言わせないで……」朱音は右手を横に振る。「《炎帝魔法――焔の壁》」
伊欲の攻撃諸共に焔が焼き払う。伊欲は焔に巻き込まれ数十メートル吹っ飛ぶ。
「はぁはぁ……。大丈夫、光葵? 助けに来るの遅くなってごめんね」朱音は息を切らす。
「……はは、朱音助かった。だが、あいつはまだ生きてる。もっと話したいところだが、もう少し力貸してくれ」
「オーケー!」朱音が短く返答する。
「おいおい……。守護センサーで知覚できない参加者なんて聞いてねぇぞ。流石にこれ以上はキツイぜ。逃走させてもらう……! 《合成魔法》《圧縮空気砲×魔石魔法――魔空砲》……!」
大きな風切り音と共に魔石が含まれる圧縮された空気の塊が飛んでくる。
「朱音……俺も補助するから一緒に焔で盾作れるか?」
「やったことないけど、イメージは湧いてくる……。多分できるよ!」朱音は強い瞳を光葵に向ける。
「ぶっつけ本番だがいくぞ」
「《複合魔法》《火炎魔法×プロテクト×炎帝魔法――業火の盾》……!」
業火の盾が魔空砲を防ぐ。魔空砲を焼き尽くす轟々とした音だけが響く。
守護センサーが伊欲は逃走したと知らせる。
「ありがとな、朱音。それと…………」話している途中で光葵は気を失う――。




