十二話 仲間
翌日。
昨日の戦闘での疲れを癒すために昼過ぎまで眠っていた。
今日は日曜日だからこういう動きができるけど、学校と両立となると今後は難しくなってくるかもな……。
ふと、スマホに目を遣ると通知が来ていた。
頂川からだ。
「散歩してる時に天使サイドの人に会えた。チームを組まないか? と聞いて了承をもらってる。今、カフェで話してるんだが来れそうか?」という内容だ。
すぐに電話を掛ける。
「もしもし、日下部だ。すまん、疲れで今まで寝ちまってた。今も一緒にいるのか?」
「疲れてるとこすまねぇな。今も一緒にいるぜ。来れるなら合流してぇけど、どうする?」
「オーケー。準備して行く」そう答え、カフェに向かう。
カフェに到着し、キョロキョロと探していると、頂川ともう一人女性がいるのを発見する。
その女性は少し灰色がかった茶髪で頭にやや大きめのカチューシャをしている。年齢は二十歳くらいと思われる。
「ごめん、待たせた」
光葵は軽く頭を下げる。
「大丈夫だぜ。そんなに長く待ってた訳じゃないしな」
頂川が笑顔で答える。
「そうそう、この人がメッセージで言ってた天使サイドの環さんだ」
「初めまして。環繁葉です。よろしくね!」
明るい笑顔で挨拶される。
「こちらこそよろしくお願いします。日下部光葵です」
「日下部君も高校二年生なんだよね? どんな子が来るのか心配してたけど、真面目そうな子でよかった」
環は顔を綻ばせる。
「いえいえ、俺も優しそうな人でよかったです。環さんは大学生ですか?」
「大学一年生になったところよ。サークルとかも入ってないから時間は取りやすいと思う」
「そうですか。それはよかった。じゃあ、早速ですけど……」
不意に頂川が声を掛けてくる。
「日下部、何かケーキでも頼もうぜ。なんつうか『和気あいあい』と話したいぜ」
「そうだな!」
光葵は内心反省する。淡々とした印象だったのかもしれない。
しかし頂川がそういうことに気を遣うのは意外だな……。
影慈にも相談して、チーズケーキとコーヒーを頼む。
「環さんはまだ戦ったことはないそうだ。それにどちらかというと、戦闘向きな固有魔法じゃないみたいだぜ」
頂川がショートケーキを食べつつ話す。
「そうなの。私の固有魔法は《付与魔法》。他者と自分の攻撃力や防御力なんかを上げることができる。基礎魔法は《土魔法》が使えるよ」
明るい声で説明がある。
「そうなんですね。俺は固有魔法が《回復魔法》でその他にも《身体強化、火炎、風、氷魔法》が使えます」
「すごい! たくさん使えるんですね」
環は少し身を乗り出して驚いた様子だ。
「いや、でも全て使いこなせる訳じゃないというか……使えない時もあるんですよね……」
自分でも歯切れの悪い返答をしていると思う。
だが、一つの身体に二つの心、魂が入っていることは説明しても納得はすぐ得られないだろう……。
「いやいや、だとしてもすごいよ!」
環から朗らかな声が返ってくる。
「ありがとうございます。あと、これからの動きなんですが、代理戦争に参加した以上戦いは避けられないです。三人で悪魔サイドの参加者を見つけて戦っていこうと思っています」
「そうなのね……分かった! いつまでも戦わないでいる訳にもいかないもんね」
「だな! 環さんも修行するか? 俺ら人のあまりいない所で修行してたりもするんだ」
「へ~! 修行か! 私も強くならなきゃいけないし、ぜひ参加したい!」
「分かりました。じゃあ、早速今日からしませんか? お互いどんな魔法かも知りたいし」
光葵は笑顔で提案する。
「分かった! 今日は予定もないし、修行しよう!」
環から明るい返答がある。
全員の意見が一致し、店を出る。
◇◇◇
いつも修行している空き地に行く。
各々魔法の特訓を行う。
分かったことは環の《付与魔法》は他者と自分の能力を上げることができること。〝重ね掛け〟をすることで能力を更に上げることもできる。また、能力ダウンの付与もできる。
「二人ともすごいね! 戦うとなるとついていけそうにないよ」
環が後頭部に手を回す。
「俺らは既に何回か戦闘してるからな。環さんは気にしないでいいよ!」
頂川が笑いかける。
「そうですね。環さんはどちらかというと『支援ポジション』だと思うので、戦闘は基本俺らに任せてもらって大丈夫です」
光葵は真面目な口調で伝える。
「そう言ってもらえると助かるけど……。でも任せっきりというのも……」
「いえいえ、それぞれ適性がありますから。逆に俺らの能力上げてもらえるの助かります!」
光葵は真っ直ぐ環を見る。
「うん、分かった! 力になれるように頑張るね!」
環は両手でガッツポーズを作る。
仲間が増えると心強いな。
もし、頂川にも環さんにも出会えず一人で戦い続けないといけなかったら……そう思うと、不意に世界の全てが敵になったような不安感が湧いてきた。
仲間が見つけられず一人で戦っている人もいるのだろうか。
そんなことに思いを馳せた――。