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恋せぬ神々…福、きたらず?! ~神さまだって恋したいんです!  作者: 麒麟
第2章 ☆彡 南に極める星あれば~
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第2章 第9話 ☆南野、知らぬ間に毒吐かれる☆彡

原案・テーマ:Arisa

storyteller:Hikari

きらりは、雲一つない空を見上げていた。

時間がゆっくりと過ぎていくのを感じながら、自分の行動に反省をしていた。

感情的になったところで何も変わらない。

言い返しても、こちらの消耗が増すばかりだ。

相手の思う壺になるだけなら、むしろ相手を感情的にさせればいい。

あの喫茶店のマスター?が、笑いながら言っていた言葉が頭をよぎる。

あのときに掛かってきた電話も横柄で鬱陶しく感じた。

…やっちゃったかな…

ため息をこぼしながら、スマホの画面を見ると、通話履歴に残っているその文字にイラついてしまう。

そもそも、詐欺事件を追いかけているのなら…被害者…あれ…

『芦屋南署 刑事課 知能犯係 高田』と名乗ったその男の名前をネットで検索してみた。

そもそも、この警察署どこにあるの?

つくづく小ばかにしてくれる。

聞き間違いの可能性もあるが…この警察署に似た名前の警察署が存在している。

暇つぶしついでに、髙田で検索してみる。

聞き覚えのある地元の建設会社の名前の代表がそうだった。髙田仁。代表取締役。

株式会社セントラルコンスターション。なかなか評判が悪い小さな建築屋のようだ。

評判といっても口コミサイトに書かれる範囲のもの。真実かどうかはわからないが、『水漏れについていったら「知らん!」と電話を切られた』とか、『クロスが浮いていると言ったら、やってきてゴシゴシと押さえて汚していった』とかいう類のものが書き連ねられている。

相手を知らなければ、そうなんだ程度なのだが、きらりはやっぱりと思ってしまう。

面識がないのに、あの電話の態度を見ているとそう思えてしまう。

(あれ…この番号…こいつ馬鹿? 詐欺師の片棒担いで…)

きらりは明らかに落胆のため息をついた。

もう少し知恵の回る奴に詐欺をしてもらいたい、と。

…刑事じゃない、じゃん……何がしたいのか…って詐欺か…

きらりは再び空を見上げた。

悔しさが込みあげてくる。

小娘相手ならだますことも黙らせることもできると思っている。

恫喝すれば、簡単に物事を自分の思い通りにできるつもりでいる。

その事実がむかついた。

とっくに気づいていたはずなのに、こうして目にすると……

心の底に沈んだ怒りが、再び沸き上がってきそうになる。

詐欺? 捜査? 何の冗談か。

おそらくは、あのぬらりひょんの兄か、親族か……

あるいは『自分のために』『誰かのために』自作自演の圧力をかけてきたのだろう。

警察のフリまでして。

平然と人を騙す奴はどこまでいっても人を騙すことができる。平気な奴は、平気で噓を言う。

そういうことなのだろう。

この男が建設業として、多くの高齢者をだましているのだろう。

中には契約書もなく工事をしてお金を取られている人がいるかもしれない。

そう思うとホント怒りしか込み上がって来ない。

「……くそったれが」

ベンチの背にもたれ、きらりは天を仰いだ。

感情的になるなと言い聞かせながら、

どうにもこうにも、やりきれなかった。

呼吸を整えようと深く息を吸う。

通話を切ってからも、頭の中では髙田の声がまだこだましているようだった。

「録音してあります」だなんて。まぁしたんだけど…

正直なところ、自分でも思い切ったとは思う。

だが、あそこまで怒鳴られたら、黙ってる理由もなかった。

感情的になったと自覚している。

けれど、あの高圧的な言い方に黙っていられるほど、自分は器用じゃない。

やっぱりムカついている。

叫んだらすっきりするだろうか…。

憐みのような視線を残して何人もか通り過ぎていく。

老若男女問わずに向けてくる視線にもイライラしてしまう。

これで患者できたら、採血のときにミスるかもしれない、と怖いことを考えてしまう。


「街中で大声出してどうしたの?」

きらりの視界の中に一人の女性が入った。足を止め覗き込むように。

いや行き過ぎて振り返り無理やり視界に入ってきた。

「す、すみません」

「びっくりして心臓が止まるかと思ったわ」

美音はそう言って微笑んだ。

「……すみません」

「何度も謝らなくても…これも何かの縁だし、毒吐いてみる?」

美音はベンチに座ったまま首をもたげているきららの視線を誘導するように喫茶店を示した。

どこにでもあるチェーン店のカフェ珈琲番だ。

「結構、毒ですよ。あてられるかも」

「まぁ、そのあとは、後で考えましょう。とりあえず座りたいし」

美音がそういうと、きらりは少し端により横を開けてみた。

美音はクスリと笑みをこぼして、珈琲番へと向かって歩き始めた。

何となく、きらりもその後ろを慌ててついていった。

「でも、よかったんですか?」

「ん? 突然、叫ぶような子を見たら声をかけるでしょう。普通は」

「普通は声をかけずに見て見ぬふりするものですよ」

「世知辛い世の中になっているよね」

「…ホントですよね」

そう言いながら、美音はきらりをそっと奥のテーブルへと導き、自分もその向かいに腰を下ろした。

メニューを手渡すと、彼女は迷いなく「珈琲ゼリー」を注文する。

ここに来たのはそれを食べるためだった。

この店の珈琲ゼリーが絶品だ、と島がしたり顔で語っていたので来てみた。

それだけなのに…まさか、神懸かりな子に出会うことになるなんて。

偶然か、それとも。

美音は一人、胸の奥で静かに笑っていた。

(彼女がまとっているのは…寿老人の…確か南野…まぁいいか)


きらりは届いたミックスジュースをストローでひと口吸った。

口に広がる甘さを確認してから、美音をそっと見上げる。

不思議な人だ。そこにいるのにいないような気がする。

綺麗な人だとも思う。

「モデルです」と言われれば、素直に信じてしまいそうな整った顔立ち。

高身長で、すらりとしたスタイル。しぐさのひとつひとつが流麗でいて目を引く。

所作の美しさに引き込まれそうになる。

それもあってか、どこか現実味がない。

夢みたいな感覚。

そんな存在が、目の前で珈琲ゼリーをすくっているのが、少しだけおかしくて。

きらりは思わず、くすっと笑った。

きらりは、ミックスジュースをもう一口すすると、ふっとため息をついた。

視線を落としたまま、ぽつりとこぼす。

「……ほんと、最低」

美音はなにも言わない。ただ頷くように、珈琲ゼリーをすくう手を止めた。

「人の話なんか聞いちゃいないくせに、正義ヅラして命令だけしてくる。

こっちがどんな思いでそれをやってるかなんて、想像もしないくせに。

勝手に“正しい”を押しつけて、それに従わなかったら“逆らった”って言う。

それで怒鳴り散らして――脅して――自分の正義が通らないと癇癪起こす」


美音は視線だけできらりを見る。

怒っているというより、怒ることすら疲れている。そんな顔。

「……でも、ああいうのに限って、“自分は間違ってない”って、最後まで思ってるんですよね。

人の心を道具みたいに扱って、踏みにじって、何が“捜査”だ。

ただの八つ当たりじゃない……何が、警察だよ」

言い終えて、きらりは自分の言葉の重さに気づいたように、ストローの先を見つめた。

少しだけ震えていた。怒りというより、悔しさのほうが大きかったのかもしれない。

静かに、スプーンがカップの中で音を立てる。

美音はふっと笑ってから、言った。

「……いい毒でした。澄んでいて、刺さる」

その言葉に、きらりはようやく顔を上げた。

美音がそう言ったとき、きらりはつい、笑ってしまった。

あきれたような、自嘲のような、どこか壊れた笑いだった。

「……あとね、もう一人いるんです。こっちの神経を逆なでする天才」

「天才?」

「うちの病棟に入院してるおじいちゃんなんですけど、モニター止めて心肺停止のフリして待ってるとか……Bluetoothスピーカーまで仕込んで、“ピーッ”とか鳴らすんですよ。人が泣く寸前まで本気で心配してるのに、『どうだった? 演技力』って」

「ふふ……大胆ですね」

「笑いごとじゃないんです。それだけじゃなくて、ナースコールに出たら突然プロポーズされるし、配膳ワゴンにはカップ焼きそば山積みだし。昨日なんて、点滴のチューブで自作のUFO吊るして『迎えに来たぞ』って言ってました」

「え、宇宙人……?」

「たぶん、彼は前世でアホ神かなんかだったと思います。……いや、もしかしたら今世も継続中なのかも」

言葉にしていくうちに、怒りが笑いに変わってくる。

毒が抜けるというより、毒そのものが少しだけ形を変えた感じ。

美音はゆっくりと珈琲ゼリーを口に運んでから、「そういう人こそ、妙に人の心に残ったりしますよね」

と、どこか意味深な顔でつぶやいた。

基本的に 水曜日更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


※誤字脱字の報告・?の連絡ありがとうございます。

 慌て者につきご容赦いただけるとゆっくりですが成長していきます。

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