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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第四章

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ついに正体がバレてしまった

 その日、家に帰ってお兄に相談をした。

 お兄は笑いながら言う。


「だから、そんなこと気にしなくってもいいんじゃね? 」


 挙げ句の果てに、


「女々しい奴だなぁ」


なんて大笑いまでされた。


 お兄に聞いたことが間違いだったと思ったが……そんなお兄、実はすでに爵位持ちらしい。魔物討伐での功績を讃えられ、男爵の地位を持っている。


 (お兄のくせに……)


 顔を歪める私に、お兄は言う。


「それなら、明日ダミアンに言ってみるよ。

 エルザを魔術師団に入れたいダミアンのことだから、秒ですっ飛んでいくだろう」


 そして、彼は大声で笑っていた。


 (他人事だと思って……)


 だが、アリスさんやお兄と話しているうちに、今の私に残された道は魔術師団しかないと思い始める。あんなに嫌だった魔術師団だが、今は唯一の希望だ。スタンと並べるような地位を身に付けられるよう、私は頑張らねばならない、




◆◆◆◆◆




 次の日の早朝、私は一人で仕込みをしていた。

 店頭に並べる推しケーキや焼き菓子はもちろん、オムライスやビーフシチューの仕込みもある。……とはいえ、いつものように魔法陣を描き、全自動で料理を作る。


 朝が弱いアリスさんは、基本的に朝寝坊だ。今や私も店舗の鍵を預かっており、一人でせっせと仕事をしている。




 そんななか……



「エルザ!」


私を呼ぶ声が聞こえ、外を見る。すると、そこにはいつものブルーグレーの騎士服を着たスタンが立っていた。早朝なだけあって、ファンに追いかけられたりはしていないようだ。


 私は大慌てで店にスタンを招き入れ、再び鍵をかける。そして改めて彼を見た。



 ブルーグレーの騎士服に、白銀の髪。透き通るような肌に、整った顔立ち。彼のその青色の瞳は不安そうに輝き、子犬のように私を見ている。


「す、スタン!? 勤務中なのにこんなところに来たら……」


 その瞬間、スタンにぎゅっと抱きしめられる。その大きい体で力いっぱい。

 そして、スタンは私を抱きしめたまま、耳元で消えそうな声で告げた。


「エルザが……正規の魔術師団員になるって……」


 私は慌てて答える。


「お、お兄に相談したけど、まだ入るとは決まってないよ? 」


 そして、付け足した。


「正規の魔術師団員には、厳しい採用試験があるみたいだし」


「そんなの、顔パスでしょ? 」


 スタンの声は、かすかに震えている。


「僕は……エルザがもう危険な目に遭うのは嫌だった。

 でも、僕がエルザを勝手に弱いと決めつけているだけで、エルザは本当はすっごく強かった」


 きっと、スタンは不安なのだろう。私だって不安だ。だが、私がスタンと並べるようになるためには、これしかないと思う。


「僕、エルザを応援するよ。

 魔術師団で、頑張ってね!」


 スタンはぱっと明るい顔で笑う。その顔を見て、真っ赤になったのは言うまでもない。


 スタンが、私を正規の魔術師団にしたくないことは知っている。もちろん、私の身の安全を気にしてくれているからだ。だが、その気持ちを押し殺してまで私を応援してくれている。スタンのためにも魔術師団で頑張り、必ず爵位を手に入れようと誓った。




「危険な時は、絶対に僕が助けに行くからね? 」


「うん!」


「ずっとずっと、一緒だからね」


「うん!」


 笑顔で笑い合い、おでこをこつんと合わせる。すると、スタンが我慢できないとでも言うように、切なげに告げた。


「エルザ、キスしてもいい? 」


 こくりと頷くと、スタンは愛しげに私を見る。そして、遠慮がちに唇を重ねる。軽いキスは、どんどん深いものへと変わっていく。


「スタン……もうだめ……」


「駄目じゃない」


 彼は甘くそう吐くと、また唇を重ねる。こうして私は、頭が真っ白になるほどスタンの甘い口付けを堪能した。





 キッチンからは、魔法陣が勝手に調理をしている音が聞こえてくる。甘い香りが店内に漂っている。そんななか、不意にガチャリと扉が開く音がした。スタンは私から唇を離し、奥の扉を見つめた。


 そして……


「エルザ!? 」


アリスさんの、悲鳴のような声が聞こえた。



 迂闊だった。いくら人がいないといっても、アリスさんがここに来る可能性は高かった。アリスさんはスタニスラスのファンであり、私と彼との関係を知られたくなかった……


「エルザ……何してるの!? 」


 アリスさんは震える声で再び私を呼び、頬に手を立ててその場にしゃがみ込む。


「な……なんで……スタニスラス様がいるの!? 」


 

 沈黙が訪れる。私は、アリスさんに何と声をかければいいのだろう。

 ずっと前から、いつかこんな日が来ることは想像していた。だが、私は現実を見ず、この日をずっと避けてきた。


「ご……ごめんなさい、アリスさん……」


 愚かな私は謝ることしか出来ない。だが、アリスさんは半ばパニックを起こした顔で私を見る。


「エルザ!? あんた、スタンさんと付き合っていたんじゃないの!?

 どうしてスタニスラス様なんかと……」




 そんななか、店の扉が激しくノックされる。慌てて扉を開けると、そこには赤茶色の髪を輝かせたダミアンが立っていたのだ。



いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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