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第9話 ミサさん




 魔力爆破の事件から、数日。

 魔法の師匠が見つかるまで、私は今日もクレベスから剣の指導を受けていた。



「疲れたぁーー!」

「少し早いが、休憩とするか」

「やった!」


 いつも通り、2人道場で鍛錬をする私とクレベスに、今日は珍しくお客さんが来ていた。


「いやぁ、14歳でこれとは……末恐ろしいねぇ。ラベリちゃん冒険者とか興味ない?」

「え? 冒険者?」


 冒険者ギルドの受付嬢をしていると言う、ミサさんだ。

 クレベスとの関係も長いらしいし、とても優しく明るい性格の持ち主で、その明るい性格とは裏腹に、見た目はとてもお初夜かなスーパー美人ときたもんだ。

 全てのスペックにおいて私の上位互換で、恋のライバルになったら勝てる気がしない。



「まだ、ラベリには早いぞ……」

「はいはい、そんな怖い顔しなくても分かってますよーーいつかね。い つ か」

「さっさと荷物をまとめて帰るんだな」

「ご、こめんごめん!」


 何故かいつも口調の優しいクレベスも、ミサさんには異常に当たりが強い。

 

 でも、怒ったふりして顔を背けて笑うクレベスと、謝りながらも悪気のなさそうに笑うミサさん。

 私が居なかったら、凄い百合展開になっていたであろう2人の会話を聞いているだけで、こちらも幸せな気持ちになると同時にこんな関係も羨ましく思う。



「ちゃんと、2人がご所望の人──いや、ご所望の冒険者を見つけてきたんだから、許して、ね?」

「ほんとに!?」



 ミサさんによると、今日から挨拶だけでもしにくるらしい。

 なんかこの感じ、家でゲームしてて『先生が挨拶に来るよ』っていきなり親から言われた時を思い出すなぁ……

 先生の事を親を通じて言われると、めちゃくちゃ心臓に悪いから辞めて欲しかった。


「もう見つけてきたのか。流石、仕事だけは出来るな」

「仕事"だけ"!?」


 また意地悪なこと言ってるけど、ギルドから帰ってくる時は大体ミサさんのこと褒めてるし、優秀な人なんだろうなぁ……って昔から思ってたけど、こんな早く見つけてきたなんて本当に優秀すぎるよ!



「条件は重くしたはずだが……」

「う〜ん。クレベスさんの条件は、あってないようなモノだったね。逆に、ラベリちゃんの『性格の優しいお年寄り』ってのが1番難しかったかなぁ〜」



 そうあくびをしながら軽く言っているが、私もクレベスも、ミサさんの目の下にクマが出来ているのが見えていた。

 おそらくミサさんも、心配している事が分かったのか『まぁ、普通の受付嬢じゃ無理だろうね。私だったら余裕よ、余裕!』なんて心配させないように、軽口を叩いて明るく振る舞う。


「ミサさんって、カッコいいね」

「えっ、そう!? そっか、そうだよねぇ!! 私ってやっぱ何でも出来る仕事人って感じ」


 心配だけど、ここは変に言わないでミサさんの優しさに甘えて、いっぱい褒めるのが1番な気がした。

 クレベスとはまた違った、カッコいい人だと思う。


「ミサ……」

「なになに!? クレベスも私がカッコ──」

「荷物をまとめろ」

「なんで!?」







───────




「じゃあ、私はそろそろ帰ろうかな」

「もう行くのか?」


 

 それから、話したり、鍛錬したり、ミサさんがイジられてるうちに、日は夕暮れまで落ちていた。

 まだ強キャラおじいちゃんは来てないが、ミサさんにも家族が居るのでそろそろ帰ってしまうとのこと……


「私にも家庭があるの! クレベスさんも気持ち分かるでしょ?」

「あぁ、よく分かっているよ」




 ミサさんは荷物を纏めると玄関で『お邪魔しましたー』と律儀に別れの挨拶をして、家へ帰っていった。




「やっぱり、ミサさんって凄い人だね」


「・・・我よりも、か?」

「え?」


 えええぇぇぇぇ!?なになになになに、なんか急にクレベスが私に嫉妬してる!?

 

 ミサさんがいなくなってすぐに、こんな……

 いや、めちゃくちゃ可愛いんですけど!?

 外が夕暮れで紅くなっているのもあるけど、言ってから『我は何を』みたいな反応で顔を赤くしてるのが、かわいすぎりゅ……って、ちょっと顔に出ちゃわないように。


「いや、その。今のは、言葉の綾というやつで……」

「クレベス……」

「あっ……」



 やばいやばいやばいやばい! 可愛すぎて、思わず手を取っちゃったよ。

 あんなに剣を振っているのに、こんなに綺麗な手で、ちょっと舐めたい。


 てか、さっきのやっぱり、不意に出た言葉っぽいし……

 よく考えろ私、これ告白チャンスじゃないか? 

 こんなまたとないチャンス、もうこないし──でも私は14歳……


 いや、恋に年齢は関係ないよね。それに、精神年齢は成人してるし良いよね、うん良いや!


「ら、ラベリ……」

「この前も言ったけどね。私は、クレベスが1番好きだよ」

「あ、あぁ……」

「それはね、家族としてだけじゃなくて──」



「遅くなったのじゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 完璧な告白タイミングだった最中、本当に伝えたい最後の言葉を言う前に、玄関の扉が壊れるほどの勢いで開かれる。

 

「はぁ、はぁ……お2人が依頼人なのじゃ?」


 私は完全告白ムードだったところを、一瞬で壊されて放心状態になってしまう。



「其方は……」


 クレベスは、私が取っていた手を一瞬にして振り払い、少し警戒するように目の前の女の子(・・・)に尋ねる

 

「申し遅れました、のじゃ! 僕は、クレベス様からの依頼で参りました、のじゃ。S級冒険者の『ソルト』なのじゃ!」


「え? 冒険者さん?」


 ど、どういうことですかミサさん!?

 どう見たって男でも老人でもないんですが!? なんなら私より年下なんじゃ……



「この見た目のことなら、安心してください、なのじゃ。僕は、エルフ族で年齢も500歳を超えているのじゃ」


 エルフ族って、小説とかに出てくる長寿で魔法が得意、みたいな種族の奴!?

 語尾がのじゃで、一人称が僕で、種族はエルフで、見た目はロリで………いや、確かに条件には合ってるっぽいけど、ちょっと属性が多すぎるよ!


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