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第4話 剣士の才能





そんな身も蓋もない話をしていると、練習場の近くにある『センバツ村』に着いた。


 私的には、あまり通りたくない場所だ。

 実は、この村に住む人から、私は嫌われてる。

 私としては、クレベスがいるだけで幸せなので、大丈夫だけど。普通に生活してたら、鬱になりそうなぐらいだ。あの毒親レベルに、私を除け者扱いで、よく陰口もされてるっぽい。

 

 『なら他の道を通れば?』と、思う者もいるだろうが、ここ以外を通ろうとすると、魔物が出現する魔素が、多分に含まれる森を通らないと練習場に行けないんだよね……。



「ねぇ……ほら、あそこ……」


「なんで、『枯れない花』はあんな奴を……」



 この異世界には、よくある冒険者という職業がある。その冒険者のなかで、『S、A、B、C、D、E』の6つの階級にわかれ、E〜Sの順番に位が高くなる。 

 クレベスは、その6つの階級のトップであるS級の冒険者だ。自分から、依頼をこなすだけではなく、国からの大規模な依頼も受ける言わば、国の宝だ。ただ、クレベスは、決して人とパーティを組んだり、誰かと群れることはしない。まさに一匹狼だった。

 


「ほんと、『咲かない花』のくせに……!」


 そう言った若い女性をクレベスが、睨みつける。そして、クレベスが出る殺気に耐えられなかったのか、家のなかにそそくさと、逃げていった。



「我のせいで、すまないな……」

「母さんのせいなんかじゃないよ!私は全然気にしてないから、大丈夫!」


 

 

 たった1人でS級に上り詰めた孤高の冒険者であるクレベスは、いつの日か『枯れない花』という二つ名で呼ばれるようになった。

 

 まるで花のように舞い、何年経っても色褪せない綺麗な顔と剣筋から付けられた呼び名だ。

 クレベスに合っているし、この名前で呼ぶと、クレベスの恥ずかしがる顔が見れるので、私も好きな呼び名だ。

 そんな『枯れない花』が、弟子を取ったとなれば、嫌でも注目されてしまう。

 

 羨ましいと言われ、嫉妬の目もありながら、あの『枯れない花』の弟子である私を……外野は、やれ剣聖だの、やれ勇者だの期待していた。

 

 この異世界では、14歳になると、教会に行き才能を持つ者なのか、何の才能を持っているのかが、分かると言う。

 しかし……私は、その期待に応えられなかった。私は、剣の才能ではなく…魔法の才能の方が、あったからだ。


 剣の才能がないと分かると、周りは手のひらを返し、私を非難した。

 


 そんな私を、クレベスの二つ名『枯れない花』からもじり、いつまでも才能が咲かない(・・・・・・・)ことから、いつしか『咲かない花』と呼ばれるようになった。






 いつの間にか、センバツ村を通って練習場に着いていた。




「さて、最初は剣の方から始めるか?」

「はい!」


 練習場に着くや否や、早速稽古スタートだ。

 

 クレベスは、私に魔法の才能しか無いと分かっていても、剣の修行をしてくれる。

 


「もう少し角度をつけろ!そんな振りで、魔物が切れると思うか?」



 クレベスの修行は超ハードだ。いつもの親バカなクレベスとは、とても同一人物とは思えない。

 稽古の間は、クレベスに敬語を使うとか、そういう細かいルールもあるほど、厳しい。

 何がとは言わないが、クレベスの言葉が逆に力になる程に、私がMで本当に良かったと思う。


「我が納得するまで、剣を振り続けろ!」

「……」

「返事は!!」

「は、はい!」




〜2時間後〜




「腕がっ……」

「ふん……まぁ、良いだろう」



 キツすぎる……。クレベスは、いつも刀のような剣を使うから、練習用の剣も木刀なんだけど……15歳の娘が、2時間も剣を振るなんて、腕がちぎれるよ。



「やはり、我の思っていた通りだ」

「何、が……です……か?」

「はぁ……声が枯れてるから、先に水を飲んでこい」

「は、はい…」




「ただいま戻りました!」

「そこに座れ」


 クレベスが、熱いお茶が、2つ置いてある机を指差す。


「魔法の修行は良いんですか?」

「しばらくは、一緒に修行出来るからな、今日はここまでで、いいだろう」

「それと、今は敬語を使わなくていいぞ」

「分かったよ!母さん」


 そう言って、微笑むクレベスに甘えて、いつも通りの話し方に戻り、椅子に座る。



「さて、ラベリ。これは、我の意見だが、魔法使いとして冒険者になるのも良いと思うんだ」

「え?でも、魔法使いは……」




『魔法の才能?剣の才能でなければ、何の意味もないだろう!』



 そんな事を外野は、言っていた。

 だが、それも無理はない。

 この異世界では、剣士や戦士など主流で、魔法使いは後方支援しか出来ないからだ。

 もちろん冒険者パーティの中に魔法使いもよく居るが、大体が回復魔法や支援魔法の特化した者のみ。それも、ポーションや回復薬を買うのが、面倒だからという理由でしかない。


 炎とか水とか、カッコいい攻撃魔法もあるにはある。だが、魔物と1人でやり合う程の威力なんて、S級冒険者レベルだけだ。




「確かに。世間では、魔法使いよりも剣士を欲している」

「じゃあ、なんで?」

「なに、魔法使いだけを極めろと、言いたいんじゃない」

「どういうこと?」

 

 クレベスの言葉の意図を、読み取れない。


魔法剣士(・・・・)を目指すというのは、どうだ?」

「魔法……剣士?」



 私も前世の漫画で聞いたことが、あるかもしれない。確か、名前の通り、魔法を操り剣を振る冒険者……


「って、待って待って?!私は、剣の才能ないんだよ?!それなら、魔法を極める方がまだ良いんじゃ……」

「ラベリは、少し勘違いをしているな」

「勘違い?」


 不敵に笑うクレベスに、疑問符が浮かぶ。


「ラベリは、剣の才能が無いわけじゃないんだよ。魔法の才能がありすぎたんだ」

「つ、つまり……私には、剣の才能もあったけど、魔法の才能が高すぎた。みたいな?」

「そう言う事だ。教会で分かるのは、その者の持つ最も優れた才能(・・・・・・・)。才能が2つあれば、もう一つが埋もれるのは当たり前だろう?」


 クレベスはこんな時に、ふざけて言ったりしないし……つまり、本当ってこと?


「ラベリの才能なら、回復や支援。遠方攻撃から、近接攻撃まで可能なはずだ。」


 何その、ゲームのインフレ加速キャラみたいな奴……私ってそんなぶっ壊れキャラなの?


「そこでだ、ラベリ。お前は、将来どうなりたい?」

「将来……」


 私の将来なんて、あの時からずっと、変わってない。


「魔法剣士というのも、あくまで我の意見だからな、決めるのはラベリ次第だ」

「私の将来は、もう決まってるよ!」

「私は、クレベスを……」

「我を?」

「あっ……えっと……」




 って、私何言ってんの?!?!?!

 私の気持ちを全部吐き出しちゃうところだったよ……流石に、まだ言うのは早いもんね!

 それこそ、魔法剣士として有名になって、いつかクレベスを迎えに行ったりとか?

 デへ、デヘヘ……あっ、よだれ出ちゃう。


「なるほど……………」


 あれ?クレベスがなんか喋ってたけど、クレベスとの感動的な再会(もうそう)に夢中で、適当に返事して、聞いてなかった……



「じゃあ、魔法剣士になるって、ことでいいのか?」

「え?あっ……うん!私は魔法剣士を目指すよ!」

「そうか……。じゃあ、明日からは、魔法剣士としての稽古に切り替えるぞ!」

「えっと……優しくしてね?」



 こうして?、私はこれから、魔法剣士になることを決めました!

 私は、いつか、クレベスくらい強くなって見せる!と心に誓った。

 

 


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