第3話 14年の月日と、恋愛感情
私が、クレベスと出会ってから、約14年の時が経った。
「いつも、家事を任せてすまんなラベリ」
「全然大丈夫だよ! それより母さんは、働きすぎ!」
私も、もうすぐ15歳になるが、今は家で、家事をしながら、クレベスと剣の修行もしている。
今日の朝ご飯は、白米!味噌汁!魚の煮物!これぞ日本食というラインナップだ。
この世界は、異世界らしく剣や魔法がある世界だが、思ったよりも前世の世界の物も沢山あるみたい。
「ラベリのご飯は、食べるだけで、元気が出るからな! 一口食べただけで、1週間は働けるぞ!」
「もう、そんなこと言って……そんなに褒めても、何も出ませんよーだ」
嘘です。もう、そんなこと言われたら、色々な体液が色々な場所から出ちゃうよ……あっ、ちょっと出てる。
クレベスも、最初の頃は私の対応に、色々戸惑ってたけど、最近はすぐに、こんなこと言うようになってしまった。これを俗に親バカって言うんだろうね。
あと、クレベスのことで気になったのが、14年前の初めて会った時から、見た目が全く老けてないのが、とても不思議だ……なんなら、ちょっと若返った可能性もある。
ただ、母親だからって、レディーに年齢を聞くのは、禁句だからね。私は変態だけど、そう言うところは、ちゃんとしてるんだ。
「ふふっ、ラベリがそこまで言うなら、しばらくは仕事を休むよ」
「ほんとに!?」
「ああ、実は最近……ギルドから色々言われたんだよ」
〜〜冒険者ギルド〜〜
『あの、クレベスさん?』
『ん?どうしたミサ』
『そのですね。ギルドマスターからの通達なんですけど……』
『また、S級魔物が出たのか?』
『いえ、その逆でして……』
『逆というのは?』
『えっと……クレベスさんが、依頼を片っ端からやるせいで、他の冒険者様の依頼が無くなっていると……クレームが入りまして』
『………』
「……ということらしい。我がこれ以上仕事をすれば、他の冒険者の仕事が、無くなってしまう。だから、『しばらくは休め』と命じられた」
「じゃあ、早く稽古の準備しないと!母さんも急いでね!」
「ああ、もちろんだ。すぐに支度する」
最近は、仕事ばっかで、なかなか稽古をする時間もなく、1人で剣の修行をしていたので、突然訪れた朗報にウキウキしながら、食器を洗いに向かう。
(一緒に修行をしたのなんて、もう2週間も前だもん。私が練習した成果を出せば、クレベスだって褒めてくれるはず!)
私は今でも、クレベスに恋心を抱いている。クレベスが、私に恋愛感情を持ってくれるかは置いといて、『好きな人に褒められたい』なんて、当たり前の話だろう?
ささっと、家事を終わらせて、クレベスと家を出る。
クレベスの家もとても大きいが、流石に練習場が隣接してるわけではないので、歩いて向かう。
(もちろんクレベスと、手を繋いでね!)
数え切れないほど、剣を振った証である硬い手に振れるだけで、興奮してしまう自分を抑える。
(クレベスの手は私だけのもの。クレベスの手は私のだけのもの。クレベスの手は私だけのもの。)
「そんなに強く握らんでも、我はどこにも行かんぞ?」
「え?あっ……ご、ごめんね」
なんだか……最近は、自分の心のなかにいるナニカ……ドス黒い物のせいで、理性がおかしくなりそうになる。何故かは分からないが、まぁ、ここ異世界だもん。
こんな気持ちになるのも、異世界特有の呪いの一種とかでしょ……
もし、付き合えた時を考えると、こんな変態な私を知った時のクレベスは──
『まさか、お前がそんな、ド変態な淫乱女だったなんてな……もう、絶交だ』
絶交なんてしたら…………あっ、でも、淫乱女って言われるのは、ちょっとアリかも──って、嫌々!そういう気持ちが、嫌われる原因なんだよ私!
(でも、こんな私を見たら、クレベスはきっと嫌いになっちゃうよね……)
私がクレベスを好きなのは、あの時から一緒だ。そして、クレベスが私のことを大切に思ってくれているのも分かる。
ただ、それは恋愛感情じゃなく、どっちかと言えば、家族愛に近いと思う。
(クレベスは、私のこと、どう思ってるんだろ?)