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第1話 異世界転生ってこんな過酷だっけ?

私の名前は、白石南(しらいしみなみ)

私は、元々は普通の人間だった。特にこれといって、得意なことがあるわけじゃないけど、結構幸せに生きてたと思う。

 ただ、大学2年の時。小さい頃からの持病が、突如悪化して、手術も失敗して、そのまま呆気なく死んじゃったってわけ……

 

 十二分に幸せだったけど、悔いが無いって言われると嘘になってしまう。

将来のために、勉強ばっかしてたし、女子ながら、好きになる子も女の子だけだったため、特に恋愛も出来なかった。可愛い女の子と、恋の一つぐらいはしたかったなぁ……なんて──




「どうしてっ……! どうしてあなたは、悪魔の子なんかに……」



 思ってたら、なんか転生してました……それと、なんか毒親を引いたみたいで、絶賛森に捨てられてます!


「あなたが……あなたが生まれなければ、私は幸せになれたのに!」


 うるさいって……そんな耳元で叫ぶと、泣いちゃうって、私は平気だけど赤ちゃんの体が、耐えきれないよ……


 何か、私のことを『悪魔の子』なんだと、よく言っていたので、変な宗教でおかしくなったのだと思う。

 どんな毒親だろうと、せめて15歳ぐらいまでは、お世話になりたかったんですよ。

それで──こっちはまだ生後半年で、生まれて一年も経ってませんけど!? 捨てられても、あーうーか、泣くぐらいしか反論する方法ないし、外の世界の怖さを何も知らずに、自由の身にされてどうしろと!?

 

 そんなことを呑気に喋ってると、体に冷たい何かが、当たった。気づかぬ間に太陽は隠れ、先ほどまで晴天だった青空も、曇り空に変わっている。

 

 この状況で、空から落ちてくるのなんて、鳥のフンだろう。鳥のフンで、あってほしい。

 しかし、自分の体に、冷たい何かが一つ、また一つと落ちてきた。

 鳥のフンと言ったのは、もし違った時のもう一つの択が、考えたくもない事態だからだ。

 

でも、鳥のフンが、こんな頻度で落ちてくるわけないよね………てことは──もう一つの択()しかないよな。


 最初は、疎雨だった空も、次第に豪雨へと変わり始めた。

 

(あっ、私死んだわ)






☆☆☆



 さて、この状況を赤ちゃん一人がどう切り抜けるのか、結論を先に言おう。無理だ。

 せめて、木の下とかに捨ててくれれば……いや、普通に娘を捨てんなよ! 人のこと『悪魔の子』とか、私何もしてないよ? 育児放棄すんなら、そもそも産むなよ!


 不幸中の幸いと言うべきか、私に前世の記憶があったから、この状況を打破できる可能性が、ミリでもあるのは良かった。

 兎にも角にも体力は消耗するが、泣いて泣いて、誰か助けを呼ぶしかない。



 しかし、赤ちゃんの泣き声も、この豪雨のなかでは、簡単にかき消されてしまう。

 

(頭が……目眩が酷い……)


 突如とてつもない眠気に誘われる。

 体が怠いし、頭痛もするのは、おそらく風邪を引いたのだろう。当たり前のことだ。赤ちゃんなんて、5分も普通の雨に打たれれば危険なのに、もう10分は豪雨に打たれている。



(せっかく、転生できたのにな……今度は、恋どころか、一年も生きれないなんて……)


 

 もう、体力も消耗しきって、泣くことすら出来ない。

 限界だ……そう心で、呟いた時。森のなかから何かが、こちらに走ってくる足音が聞こえた。

 

(もしかして、私を助けに……?)


 足音はどんどんと近づき、私の目の前で、止まった。



「まさか、本当に赤子が居るとはな、我の予感は、当たっていたようだ」


 視線の奥に立つ。顔も知らない誰かの声は、豪雨のなかでもはっきりと聞こえ、私の耳に届いた。

 とても澄んだ声で、とても綺麗な顔で──

 

(もしかして、こっから助かる保険があるんですか?)

 そんな事を呑気に言っていると、体力が完全に尽きたのか、助けが来て安堵したからか、そこで、私の意思は途切れた。

 

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