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ケーキ屋が繋ぐ縁

ニュイ

作者: 西埜水彩

 目が覚めたら、このごろなじみのある天井。


 不本意ながらも慣れてしまったベッドから身を起こすと、そばにある机の上にある時計を見た。7:00だ。明るいから、今は朝だろう。珍しく、朝早くに起きることができたみたいだ。


「暇だな」


 再び寝転がる。


 今しなきゃいけないこと、したいことも特にはなかった。いつの間にか持っていた『琥珀糖』という同人誌は何度も読んだから、読み飽きた。たびたびお見舞いに来るさーかさんも、今はいない。


 かつてあったのは痛みと苦しみだけだった。そういえば春日(はるひ)さんはどうしているんだろう? 春日さんの妹が来たのは知っているけど、春日さんが来たことはない。周りの人は春日さんがもう二度と来なければいいなんて言っていたけど、僕はそうはいかない。


 春日さんは僕を支配していた。それだから春日さんがいなくなってよかった、だなんて周りにいる人はよく言う。


 暴力、性暴力。それが僕にとっての愛だった。そしてそれだけが春日さんと僕を繋いでいた。


 今その春日さんの支配から離れて、自由と僕はなった。でもその自由は僕にとっての退屈だった。


 暇で暇でどうしようもない。これじゃあ楽になったというよりも、暇地獄だ。







 2019年4月、平成最後の月。僕は退院することになった。


 そこで僕は奈良にある寮で暮らしている。とはいえ一日中のほとんど寝ていて、起きている時間は少ない。夢の国での生活を、僕はまだ続けている。


 だから出かけるのは少ない。その少ないお出かけの1日が今日かもしれない。


「いらっしゃいませ」


 いかにも夜のケーキ屋さんってところ。そこに僕は1人で入る。


「すみません。カフェラテ1つ下さい」


「ケーキが無料でつきます。どれにしますか?」


「それではこのチョコケーキをお願いします」


 スムーズに注文と会計を終わらせて、席に着く。


 誰もいない店内。店内を流れるBGM以外は何も音が無い。


「カフェラテとチョコケーキです」


 注文した物が届き、お礼を言って食べ始める。


 BGMと食事。それだけで時間を潰す。


 それが自然にできるように僕はなっていて、そのことに自分でもびっくりした。今まではそうじゃなかったから。


 ささいな刺激しかない、平穏な日常。それをいつまでも続けて頑張って生きよう。


 これまでのように傷を増やすような生き方じゃなくて、普通に生きるのだ。


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