瞬
「これからのラウラお嬢様は何をし、何が必要ですか?」
執事長の問いに頭はフル回転だ。
「社交ダンス、魔法習得、社会国語数学理科外国語だと思います。」
「そうですね、良く考えましたね、さて、君は何が出来ますか?」
「魔法講師だけです。」
「それ以外はどうするのですか?」
「僕の仕事は素早く各教科を覚え予習復習しお嬢様に不自由させない事です。」
「やる気はあるのですね、良いでしょう、所で字が読めないのですね?」
「はい!一生懸命覚えますので字を教えて頂ける機会をお願いします。」
「学院で字を覚える人もいますが、君の仕事に差し支え、お嬢様が不自由する可能性があります。貴族では早い人は6歳頃から字を学び、本を沢山読み教養を養います。ラウラお嬢様は字が読めて、本も読めます。これは反対する人が多いのですが、私は君はラウラお嬢様に字を教えて頂けるか聞いてみてはどうかと思います。誰かしら教えますので安心してください。」
執事長は俺をからかってるのか?ラウラお嬢様は字を教える前に拳が飛んでくると思うぞ、それをどうにかして教われって事か?初日からストレスの多い仕事だな、睡眠は沢山取ろう、あ..字を覚える予習復習もしないと...ラウラお嬢様に認められ信頼を得なければ免職される。執事長は俺の事大嫌いなんじゃないか?さっさと辞めろって事か、神様!俺をお助けくださ...神センス!!俺は助けられてる!神センスで乗り切ってみせる。
「分かりました、ラウラお嬢様に聞いてみます。」
「社交ダンスをラウラお嬢様と一緒に覚えてください、コーチが来ます。秋の9月に社交ダンスパーティーでラウラお嬢様のお披露目があります。入学までの2ヶ月は社交ダンスの練習とお世話、ボディーガードが君の仕事です。ではラウラお嬢様のお部屋へ案内します。」
執事長の後に続く、俺は不安しか無かった。神センス無しじゃ俺の成功率は良くて5%だろう。神センス!乗り越えてみせてくれ。
コンコン
「ラウラお嬢様、瞬君をお連れしました、失礼します。」
執事長は去って行った。
「ラウラお嬢様おはようございます。」
「玉子焼きじゃない、おはよう。」
「ラウラお嬢様僕は瞬と言います。」
「玉子焼き作れるじゃない、私あの玉子焼き好きよ。」
俺とラウラお嬢様の距離感は2km位あるな、その距離でさえ繋がってるのは厚焼き玉子のお陰、はぁ...
「社交ダンスのコーチが来るのは午後1時半よ、それまで適当にしてて良いよ、あっお昼に玉子焼き出してね。」
俺は考える、今日が大事、最初が大事、今日どうするかで後々決まる、そもそも1週間の仮お付なのだ。
厚焼き玉子を作る、午前中俺は何も出来なかった、ラウラお嬢様はずっと本を読んでいた。ラウラお嬢様がお花を摘みに行ってる間に何の本か見た、お花の本だ。
「やっぱ貴方の玉子焼きは最高ね!毎日作りなさい。」
「はい、分かりました。」
外は雨が降り始めてきた。俺は要領が良いとか言われてるけど周りが都合良く解釈しただけじゃないか?何にも出来ず、厚焼き玉子を作る人、名前は玉子焼き。
俺は1つの可能性だけに全てを掛けキース様屋敷を飛び出した、
「おい、どこ行くんだ、雨降ってるしこれからもっと降るぞ、風邪引くぞ。」ガスターが言う。
「ちょっと野暮用です、夜には帰ります、今日帰って来なかったら火魔法は諦めてください。」
「それどうゆう意味だ、社交ダンスの練習はどうするんだ、瞬!!」
無視して俺は走った(どうにか今日中に)カーダの街の東門に30分走って着いた。
「身分証明書」
「はい」
「よし」
推薦冒険者カードがここで役に立った、マイケルさんどこまで僕の役に立つんですか。
東に走った、雨は強い、風も吹き始めた。1時間半走ってカーダの森に着いた、記憶だけを頼りに森の中を進んでく、
「確かこの辺に...あった!1つは確保だ。」
もう1つは良く分からない、手探りで探した。
気付けば薄暗く17時頃だろう、疲れたし喉も乾いた、
「あと1つなんだ。」
諦めず手探りで探した。
「見付けた!でもこれじゃ70点なんだ、諦めない」
森の中を手探りで探し、19時過ぎ、森の中だから雨に濡れにくい。
「これだ、100点」
瞬は一瞬笑顔になった、
「後は無事に戻るだけ」
戻るだけと言ってもカーダの街の門は20時で閉まる。
多分間に合わない、でも諦めない、全力を尽くす。
「神様、神センス最後にお願いします。」
この世界に生まれて本気で神頼みしたのはこれが初めてだ、そして急いだ、日付が変わる前に...!
22時、カーダの街の東門到着、閉まってる。
「仕方ない今回だけ。」
瞬は闇魔法で透明になり、風魔法を纏い空を飛んだ、10m位の壁を超えた、初めてだから着地で足を捻った。すぐに聖魔法で治療する、しかし何故か足が痛い、
「休みの正解は聖魔法習得だったのか!?」
悠長な事は言ってられない、時間が無いんだ、斜めに刺さる雨は矢の集中砲火を喰らってる気分だ。
聖魔法掛けっぱなしで屋敷に急ぐ、ずぶ濡れで足が痛い、
23時過ぎキース屋敷に到着、
「お前誰だ?...瞬か!ずぶ濡れじゃないか、何してたんだ、執事長に彼はもう来ないさって言われたぞ。」
「ごめん今話す余裕は無い...ラウラはいるか?」
「ラウラお嬢様だぞ!ラウラお嬢様はそろそろ休まれる頃だ、明日にしろよ。」
無視して屋敷に入りラウラお嬢様の部屋に着いた。
コンコン
「ラウラお嬢様。」
「だーれー、本一段落したから寝る所なんだけど。」
「失礼します。」
「玉子焼き!ずぶ濡れじゃない、社交ダンスサボって何してたのよ、コーネリウスはもう彼は来ないって言ってたわよ。」
「その本の20ページと60ページ。」
「何よ?とりあえず風呂入りなよ、なんの用事か知らないけど明日にして、お休み。」
「待て!ラウラ」
「何で呼び捨てなの?首にするわよ」
「その本の20ページと60ページ」
パラパラパラ
「四つ葉のクローバーとライラックがどうしたのよ!」
「持ってきた、俺を瞬って呼んでくれないか」
四つ葉のクローバーとライラックをラウラに渡す。
「ウソ...何処に咲いてるか分からない花よ、どこで取ってきたの?」
「どこだって良いじゃないか」
「玉子焼き!字が読めないでしょ!?花言葉も群生地も何も分からずなんで四つ葉のクローバーとライラックなのよ」
「そのページだけ折ってあった、好きなんだろ」
「玉子焼き!花じゃない!今日は雨だし天気の良い日に2人で行けば良かったじゃない。」
「今日じゃなきゃ駄目なんだ」
「なんでよ?」
「今日、瞬って呼ばれたいから」
「バカなんじゃない!!」
ラウラお嬢様は膝から崩れ落ちて泣いた。
「ごめん、ラウラを泣かせるつもりは無いんだ、瞬って呼んで欲しいだけなんだ」
「この花の花言葉知ってる?」
「分からないがラウラが好きなんだ、良い花なんだろ」
「四つ葉のクローバーは、私の物になって」
「うん」
「ライラック...これは先が5つに分かれてる...奇跡の日にしか見れないラッキーライラック、花言葉は初恋、飲み込むと幸せが訪れる...」
「良い花だね、飲み込むのは抵抗があるかもだからちょっとだけ水に混ぜて飲んでね、夜遅く済まなかった、お休み」
「瞬!!」
四つ葉のクローバーを昔好きな子にプレゼントした事あります。